舞台『松陰狂詩曲』

狂ったのは誰か?ブルーシャトルプロデュース最新公演「松陰狂詩曲」観劇レビュー

舞台『松陰狂詩曲』ブルーシャトルプロデュース「松陰狂詩曲」舞台オープニング 撮影:堀川高志

狂ったのは誰か?ブルーシャトルプロデュース最新公演「松陰狂詩曲」観劇レビュー

約2年ぶり、ブルーシャトルプロデュース最新作・舞台『松陰狂詩曲』が11月28日(木)から東京:あうるすぽっとで、12月12日(木)から大阪:ナレッジシアターで上演されました。

今回スポットが当たるのが、吉田松陰とその吉田松陰が開講した塾の学生たち。
江戸から明治へ変わる時代の間に生きた人々の感情を大塚雅史さんの演出によって美しく丁寧に作り上げられました。

ブルーシャトルプロデュースとは

ブルーシャトルがプロデュースする演劇公演の総称です。

ブルーシャトル所属タレントや劇団ひまわり、砂岡事務所に所属するタレントたちを中心に、2012年より活動が開始されました。

戦時中の話をモチーフにした「ゼロ」作品を皮切りに、歴史の中に生きた人達の物語を中心として演劇上演を続けています。

美しすぎる演出

今回、公演全体を通して演出が本当に美しいのですが、特にオープニングの布を巧みに使用した演出が見どころです。
照明の当て方や布の動きによって、まるで波が立ち上がるような効果が生み出されており、とても美しい演出になっていました。

舞台『松陰狂詩曲』
ブルーシャトルプロデュース「松陰狂詩曲」 撮影:堀川高志

演出全体は、前半の明るい日常から後半の時代の流れに翻弄される様がまるで一つの大きな波をイメージさせる構成になっています。

この前半と後半の緩急が物語の緊張感を際立たせていました。

そして、ブルーシャトルプロデュース独特のモノと言ったら名乗り。
オープニングのラストに必ず役者さんが自分の役名と名前を名乗るのですが、これを聞くと舞台が始まるんだと胸が高鳴ります。

また、難易度の高い演出も役者たちは終始自然にこなしており、その技量の高さが際立ちます。

細かい動きや立ち位置が計算され尽くしており、この公演に対する役者全員の情熱が感じる事ができました。

舞台『松陰狂詩曲』
ブルーシャトルプロデュース「松陰狂詩曲」 撮影:堀川高志

各出演者について

今回主演の一人「吉田松陰」を演じるのは「松田岳」さんです。
前半の塾生に慕われるコミカルな一面と、後半で波乱の展開に飲み込まれていく人間の様を本当に丁寧に演じられていました。
特に、後半に向かっての演技の変化が物語とリンクしており全てのキャラクターが大きな波に飲まれて行く際に本当に際立ってました。

舞台『松陰狂詩曲』松田岳
ブルーシャトルプロデュース「松陰狂詩曲」松田岳 撮影:堀川高志

吉田松陰と並んで主演を務めるのが「吉田稔麿」役の「新正俊」さんです。
彼が演じているのは吉田松陰が開講した塾の学生の一人です。
吉田松陰に見初められ、後半からは大きな時代の波に抗うために奔走します。
喧嘩っ早いが明るく、人脈が広い。
彼の演じる吉田稔麿にはそんな印象を受けました。
そこから、塾に通うようになり成長し吉田松陰の背中を追いかけ時代の大きな波に立ち向かって行きます。
演劇の流れを通し、2時間ほどの演劇の中でこれほどキャラクターの成長を
しっかりと演じきられていることに驚きました。

舞台『松陰狂詩曲』
ブルーシャトルプロデュース「松陰狂詩曲」新正俊 撮影:堀川高志

「山縣有朋」を演じる「池之上頼嗣」さん。
彼は演技はもちろんなのですが、注目したいのが彼のオールマイティーさです。
複雑な演出の際はかなりの頻度で彼のいるイメージがあります。
ブルーシャトルプロデュースの繊細な演出の多くは彼が担っているといってもいいのではないでしょうか。
また、演技も素晴らしくまさに縁の下の力持ちという存在です。

舞台『松陰狂詩曲』
ブルーシャトルプロデュース「松陰狂詩曲」 撮影:堀川高志

「松浦松洞」を演じる「西村成忠」さん。
今回、私が観劇して一番注目した役者さんです。
彼が演じる松浦松洞は絵を描く事が好きで劇中では吉田稔麿に誘われて塾に入ります。
基本的には吉田松陰にも生意気な口を聞くほどのキャラクターではありますが、だんだんと塾の生徒とも打ち解けて行きます。

私が特に注目したのが、松浦松洞のラスト10分間。
このシーン、吉田松陰と松浦松洞の二人での何気ない日常のシーンなんです。
松浦松洞が吉田松陰と過ごす何気ないシーンは、二人の何気ない会話の中に深い余韻を残す場面でした。その直前までの緊張感あるシーンと対照的で、観客の心に強く訴えかける構成になっています。これから見られる方はぜひ注目してみてください。

舞台『松陰狂詩曲』
ブルーシャトルプロデュース「松陰狂詩曲」 撮影:堀川高志

全体的な注目ポイント

全体を通して、この舞台はずっと海の上にいるような感覚がありました。
穏やかな時、荒れている時。
そんな時の各キャラクター達の心情が丁寧に演出され、演者の方もそれに応えるように演じられていました。

また、モノを使った演出が本当に素敵でした。
今回は布と襖を使った演出が多かったのですが、そんな使い方するんだと驚くような演出が豊富にあり、楽しませてくれます。
この演出こそ、ブルースシャトルプロデュースならではの特徴といえます。

舞台の細部までこだわり抜かれたブルーシャトルプロデュースならではの美しさを、ぜひ体感してみてください。

 

 
STORY

1864年6月5日。
吉田稔麿は、京都・池田屋にいた。
「僕を狂わせたのは、先生なのでしょうか」
吉田稔麿、桂小五郎、高杉晋作、久坂玄瑞、入江九一、伊藤博文、山縣有朋、松浦松洞らは、彼らが師・吉田松陰の志を追い求めて幕末の日本を疾走した。それは、松陰と弟子たちが織りなす儚く眩い生と死のラプソディ。
BSPの真骨頂であるダンスとアクションをふんだんに織り交ぜたエンターテイメント性溢れる作品として、日本の転換期を熱く描く渾身の16作目!

 
詳細は公式サイトで。
http://www.blue-shuttle.com/bsp16/

(文:河内友美)

公演情報

ブルーシャトルプロデュース
舞台『松陰狂詩曲』

【作・演出】大塚雅史

【出演】松田 岳、新 正俊、田中尚輝、鐘ヶ江洸、田渕法明、石田直也
池之上頼嗣、西村成忠、飯田寅義、森田大鼓、松田大輝、小川丈瑠
池田怜央、日比野愛柚、嵐 千尋、小南光司

2024年11月28日(木)~12月4日(水)/東京・あうるすぽっと
2024年12月12日(木)~12月17日(火)/大阪・ナレッジシアター

 
公式サイト
http://www.blue-shuttle.com/bsp16/

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