これぞ落語家の生き様!言葉の美しさにも酔いしれる舞台「円生と志ん生」観劇レビュー
こまつ座「円生と志ん生」左から 大森博史 ラサール石井 撮影:谷古宇正彦これぞ落語家の生き様!言葉の美しさにも酔いしれる舞台「円生と志ん生」観劇レビュー
新宿サザンシアターTAKASHIMAYAにて、こまつ座『円生と志ん生』のゲネプロを拝見しました。戦時下に慰問で旧満州の大連に渡った、二人の落語家のお話。
円生役は、大森博史さん。志ん生役は、ラサール石井さん。
ずぼらで酒好き、愛嬌のあるザ・芸人の志ん生と、真面目で几帳面、女にモテる円生の二人は、性格も真逆ならば落語のやり方も正反対。このお二人に、ラサールさんと大森さんがとにかくハマり役で……。(是非、スピンオフで二人の落語会を開催して欲しい!と思いました笑)
こまつ座「円生と志ん生」左から 池谷のぶえ 太田緑ロランス ラサール石井 大森博史 大空ゆうひ 前田亜季 撮影:谷古宇正彦
第二次大戦、日本の敗戦が決まった後も、大連から帰国できぬままの二人は、国に禁止されていた落語をやっていたという罪で、文化戦犯に問われるなどして、どんどん過酷な状況に追われていく。そんな中、のらりくらり過ごす志ん生と、しっかりものの円生が、お互い持ちつ持たれつ生き延びて行く様は、差し迫る悲惨さを全く感じさせない。
二人が居場所を転々としていく先々で出会う20名の女達(池谷のぶえさん、大空ゆうひさん、太田緑ロランスさん、前田亜季さんが、それぞれ演じる。このお四方も素晴らしくチャーミング!!)との軽妙なやりとりがとても面白く、ゲネプロにも関わらず、客席からは笑い声が耐えなかった。きっと実際にお客さんが入ったら、もっと盛り上がるんだろうなぁ。
こまつ座「円生と志ん生」左から ラサール石井 池谷のぶえ 大森博史 撮影:谷古宇正彦
身を置いていた場所を追われ、ゴミ山で生活する円生と志ん生が、ごみ山を前にして、新たな〝火焔太鼓〟ができるのでは?と想像を膨らませる。わたしはこのシーンが一番好きだった。ごみ山にあるガラクタを一つ一つ手に取り、「野口英世のよだれかけ!」「樋口一葉の風呂敷!」など、思いついたネタを次々に挙げていく二人。その姿に、どんなことがあっても芸のヒントを探してやろう、という落語家としての生き様を思い、それがたまらなく人間くさくて、格好よかった。
こまつ座「円生と志ん生」左から 太田緑ロランス 前田亜季 ラサール石井 池谷のぶえ 大森博史 大空ゆうひ 撮影:谷古宇正彦
そして、この作品、劇中歌がめちゃくちゃ素敵。日本語の語感が、とても美しく響いて、初めて聞くのにその場で一緒に口ずさみたくなるような、スッと耳に入ってイメージが広がるメロディーだった。
ちなみに火焔太鼓のシーン最後に歌われる歌が特にお気に入りだったので、観劇後歌いながら帰り、次の日また歌おうとしたのにメロディーを忘れてしまいました……。「いってしまった」と繰り返される歌だったので、何度歌おうとしても、五木ひろしさんの「よこはまたそがれ」になってしまって、仕方なく、昨日から「よこはまたそがれ」を歌っています……。もう一回観劇してメロディーをばっちり覚えたいです……。
こまつ座「円生と志ん生」左から 大森博史 ラサール石井 撮影:谷古宇正彦
〝どんな悲しいも素敵な悲しいに変えるのが落語だ〟という台詞が劇中にあったけど、この作品が、まさにまるごと落語のようだった。生きるエネルギーをいただきました。
是非、いろんな人に観て欲しいです。あと、わたしは今月落語を観に行こうと思います。
(文:藤原佳奈)
こまつ座「円生と志ん生」
【作】井上ひさし
【演出】鵜山仁
【出演】大森博史 ラサール石井 大空ゆうひ 前田亜季 太田緑ロランス 池谷のぶえ
2017年9月8日(金)~9月24日(日)紀伊国屋サザンシアター
2017年9月30日(土)、10月1日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2017年10月8日(土)日立システムズホール仙台 シアターホール
2017年10月14日(土)川西市フレンドリープラザ劇場
公式サイト
こまつ座「円生と志ん生」