濃密で重厚・・・と思いきや なんともカジュアル! 舞台「クレシダ」観劇レビュー
舞台「クレシダ」舞台写真 撮影:岡千里濃密で重厚・・・と思いきや なんともカジュアル! 舞台「クレシダ」観劇レビュー青年座
/On7(オンナナ)の尾身美詞です!シアタートラムで4日に初日を迎えた「クレシダ」の観劇レポートをお届けします!
濃密で重厚・・・と思いきやカジュアル!
平幹二朗さん主演、森新太郎さん演出「クレシダ」…と想像しただけで、濃密で重厚そうな作品だろうな。と思いながら劇場に向かったのですが…
見てみてびっくり!なんともカジュアルで笑える舞台なのでしょうか!!
そんな「クレシダ」の魅力をお伝えさせていただきます。
当時のグローブ座の香りが漂う
本邦初演(!!)のこの作品は、1630年頃のロンドン、グローブ座が舞台です。昔…演劇の舞台は男性しか立てない神聖なもの、そして女役は声変わりをしていない10代前半の男子のみが演じることが許された、という歴史がありました。
(日本でいう歌舞伎と同じですね。)
当時、女役を育てるために、若くて美しい男子は誘拐されたり、孤児などの貧しい男子が買い取られ、訓練され女役に仕立てあげられたりもしたそうです。
そして女役に育った彼らは他劇場に高値で売買されたり、声変わりをして女役を演じることが出来なくなった若者たちの行く末はとても残酷なものだったそうです。
平幹二朗さん演じるシャンクは、かつて女役の名優で、晩年は女役の指導者として少年たちと暮らしていました。
そこに孤児のスティーブン(浅利陽介)が芝居をしたいと入所を希望しやってくるのですが…喋り方も行動も何もかもがおかしいスティーブン。箸にも棒にもかからない!と、シャンクは入所を断わります。
そんなスティーブンの成長物語を通し、実際の17世紀の演劇と俳優の実情、それに伴う悲しい運命を知ることが出来ます。俳優は7人ですが、当時のグローブ座の香りが漂ってきます。
シャンク(平幹二朗)の熱血演技指導!
本編の見所は二幕で行われる、「トロイラストとクレシダ」の熱血演技指導のシーン!
かつて初代クレシダを演じたシャンクがクレシダを演じることになったスティーブンへ、厳しく熱い台詞の指導を行います。
その平幹二朗さんの圧巻の台詞回しと迫力!!圧倒されました!
まさに新しい世代へご自身の持っているもの全てを注ぎ込み…これでもか!と指導を繰り広げます。
これまで、殆どのシェイクスピア作品を演じてこられた平さんの台詞をあのトラムで聞くことが出来るなんて…
一瞬にして壮大なシェイクスピアの世界に誘われました。
またこの作品は新旧の世代交代という物語もはらんでいます。
現在女役で主演を張り続けている看板俳優のハニー(橋本淳)は、二十歳を過ぎ年齢的に女役の限界を言い渡され、苦悩しますが、その姿はとても切なく…「若くして売れた俳優は残酷だ」というスティーブンの言葉が刺さります。
かつての女役の名優シャンク、
現在の女役のハニー、
新世代の女役スティーブン…
型の芝居からリアリズムへの、演劇手法の移り変わり…
時代は流れ、新しいものが取り入れられていきますが、その衰退はとても悲しく、色々なことを感じさせます。
そしてそれは、いつの時代も…現代の演劇界でも同じこと。
17世紀のグローブ座から、未来の…現在の演劇界へ、タイムカプセルみたいに想いが届けられたような感覚になりました。
演劇好きにはたまらない!
17世紀の演劇史に加え、バックステージものなのでシェイクスピアの作品や台詞がふんだんに盛り込まれたり、演劇好きには堪らない別の楽しみも満載です。劇中にシェイクスピアの悪口を言っているシーンがありとても面白かったです。
そして、芝居が終わり舞台から戻って来た女役の皆さんの煌びやかな衣裳を脱ぎ捨てていく姿も必見です。笑
森新太郎さんは、この作品はコメディだ!と遊び心満載で稽古されてきたようで、平さん含めキャスト陣のユーモア溢れる作品でした。
故きを温ねて新しきを知る。
本邦初演のこの作品!!昔のグローブ座をぜひシアタートラムで味わってみてください!
(文:尾身美詞)
シーエイティプロデュース 舞台「クレシダ」
【作】ニコラス・ライト
【翻訳】芦沢みどり
【演出】森新太郎
【出演】
平幹二朗
浅利陽介
碓井将大 藤木修 橋本淳
花王おさむ/髙橋洋
東京公演:2016年9月4日(日)~9月25日(日)
水戸公演:2016年10月1日(土)~10月2日(日)
大阪公演:2016年10月8日(土)~10月9日(日)