
劇団四季ミュージカル『マンマ・ミーア!』観劇レビュー ―知っているあの曲が、物語を先導していく―

撮影:阿部章仁
物語を知らない人でも、音楽を聴けば「あ!この曲知ってる!」となる、劇団四季ミュージカル『マンマ・ミーア!』がKAAT神奈川芸術劇場にて4月5日(日)開幕しました。首都圏での上演は、2020年以来約6年ぶりとなります。
ミュージカル『マンマ・ミーア!』は1999年4月6日、「ABBAデビュー25周年」で盛り上がるロンドンのプリンス・エドワード劇場にて開幕しました。
『マンマ・ミーア!』と言えば、スウェーデンのポップグループ“ABBA”のヒットナンバー22曲で構成された作品で、「ダンシング・クイーン」「マネー、マネー、マネー」「チキチータ」など耳馴染みのいいABBAの楽曲に想いを得た、母娘の絆、そして友情の物語。登場人物それぞれが悩み苦しみながらも前向きに生き、幸せの形を見つけ、それをお互いに認め合う姿。そんな彼女たちの等身大のドラマに、多くの人々が共感し、賛同を得るのではないでしょうか。『マンマ・ミーア!』は、観る人すべてを幸せにする、今を生きる人への人生賛歌なのです。
劇団四季での初演は2002年12月、今までに全10都市で3,357公演を数える本作品の観劇レビューをお届けします。
レビューの前にドナ・シェリダン役:江畑 晶慧さんのメッセージをご紹介
この作品は、世界的ポップグループ「ABBA」のヒットナンバーで綴られた、母ドナと娘ソフィの絆を描いた心温まる物語です。昨年、海外クリエイターの指導のものと、カンパニー皆で作品のアップデート作業に取り組みました。さらに深化した本作を通して、お客様に飛び切りの幸福感とエネルギーをお届けできるよう、1回1回の舞台を誠心誠意努めてまいります。

撮影:阿部章仁
はじめに:初めての『マンマ・ミーア!』体験
『マンマ・ミーア!』は、もちろん作品名は知っていましたし、曲を聴くとすぐに口ずさめるほど馴染み深いものばかりです。しかし物語は、映画を含めて未体験。今回が、初めての観劇となりました。
開演を待っていると、幕が上がる前に、1曲、音楽が流れます。休憩後も同様です。外にある現実の世界から、ミュージカルの世界へと切り替えるための時間のような感じがして、気持ちが自然とほぐれ、ワクワク感が高まっていきます。こんな小さな仕掛けにも、観客を物語へと引き込む心遣いが感じられました。
シンプルな舞台が生み出す、南国の空気
これまでの劇団四季の観劇で印象に残っていたのは、大掛かりな舞台装置の数々でした。ところが『マンマ・ミーア!』の舞台は、非常にシンプルです。建物を表現した2つの装置とテーブルなどが並ぶだけのセットです。
しかしこのシンプルな装置が回転することで場面を鮮やかに転換し、その白さがエーゲ海の陽光を思わせ、気づけば私たちを海辺へと誘っています。「引き算の美学」とでも言うべき舞台デザインが、想像力を豊かに刺激してくれました。
大胆すぎる娘の行動が、すべてを動かす
物語は、エーゲ海の小島でホテルを営むドナの娘ソフィの結婚式目前のお話。
父親が誰かわからないソフィは、母の昔の日記をこっそりと読み、なんとドナのかつての恋人3人を、独断で結婚式に招待してしまいます。そして驚くことに、3人全員が島にやってくるのです。
「ソフィ、大丈夫か!?」とツッコみたくなる大胆すぎる行動ですが、この無謀な決断こそが物語の核心です。一時的な混乱を招きながらも、ソフィ自身の本当の気持ちを引き出し、蓋をしていたドナの心も動かします。そして、周囲の人々の背中をも押し、やがてそれぞれを幸せへと導いていきます。

脇を彩るキャラクターたちの輝き
物語は決して明るい話ばかりではありません。それぞれの人生には、伝えられなかった想いや複雑な事情が折り重なっています。しかしそのシリアスな側面を、コミカルなタッチで包みながら、登場人物の心の変化をしっかりと伝えているところがこの作品の巧みさです。
特に印象的なのが、ドナの友人であるターニャとロージーの存在。いつも明るく、想いを真っすぐに表現する彼女たちの姿は、どこか憎めなく、物語全体の空気を温めています。この2人こそ、作品のもう一つのキーだと感じました。
そして、見逃してはいけないのは、ドナを含めた3名の歌唱シーン!!カッコいいのでぜひぜひ、注目して欲しいです!
心に沁みた一曲:「勝者が全てを」
馴染みのある曲たちはどれもワクワクさせてくれて、知っているメロディーが物語をやさしくリードしてくれる感覚がありました。そんな中、今回の観劇で特に心に残ったのが「勝者が全てを」です。ドナの心情を力強く歌い上げる旋律と、江畑さんの伸びやかな歌声が、静かに、しかし確かに心に沁みていきました。気づけば、今一番好きな曲になっていました。
観劇を終えて:「観る人すべてを幸せにする」は、本当だった
観劇後にまず浮かんだのは、「”観る人すべてを幸せにする”は本当だった」という、しみじみとした実感でした。
耳馴染みのある楽曲がこれほど揃ったミュージカルは珍しく、知っているメロディーが物語をやさしくリードしてくれるような感覚がありました。そして何より、舞台から発せられるパワーと、フィナーレで客席全体が一体となる瞬間の高揚感が、観劇体験をかけがえないものにしてくれます。
それぞれの人生に眠る、伝えられなかった想い。その想いが、音楽とともにそっと動き出す。そんな力を持った作品です。
(文:松坂柚希)
劇団四季 ミュージカル『マンマ・ミーア!』
□オリジナル・クリエイティブ・チーム
プロダクション・デザイナー:マーク・トンプソン
照明デザイナー:ハワード・ハリソン
音響デザイナー:アンドリュー・ブルース、ボビー・エイトキン
音楽スーパーバイザー、追補及び編曲:マーティン・コッシュ
振付:アンソニー・ヴァン・ラースト
演出:フィリダ・ロイド
◻︎企画・製作
四季株式会社
◻︎公演日程
【横浜公演】
公演日程:2026年4月5日(日)~8月6日(木)
会場:KAAT神奈川芸術劇場
【広島公演】
公演日程:2026年10月14日(日)~11月23日(月・祝)
会場:上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
□公式サイト
劇団四季マンマ・ミーア公式サイト

