
【インタビュー】Office8次元プロデュース 鳴らして楽しむミュージカル『セロ弾きのゴーシュ』大友至恩(ゴーシュ役)×淺場万矢(演出) 対談
大友至恩、淺場万矢
東京舞台芸術祭 池袋演劇祭特別公演Office8次元プロデュース 鳴らして楽しむミュージカル『セロ弾きのゴーシュ』が9月5日に池袋のTheater Mixa(シアターミクサ)で開幕。
子供たちは無邪気に、大人たちは童心に返って物語に没入できる“参加型ミュージカル”公演。
今回から新たに主演・ゴーシュ役を演じる大友至恩、Office8次元主催で演出も手がける淺場万矢にインタビューし、作品の魅力や上演にかける思いを語ってもらった。(敬称略)
舞台を夢見る子供達を増やしたい
――大友さんは初参加となりますが、オファーを受けたさいのお気持ちはいかがでしたか。
大友 まずは「なんだこれは!?」と思いました。「鳴らして楽しむって何だろう」と。そこから過去の公演の映像を見させていただいて、ここまでお客さん含めてみんなが一体になって作品をつくる経験は今までしたことがなかったですし、これからも出会うことは滅多にないだろうと思って、絶対に受けたいお話だなと思いました。
参加型のミュージカルということで、自分で楽器をつくったり演奏することで音楽の楽しさを知ることも出来ると思うし、もしかしたら、「舞台に立ってみたいな」と思う子もいるかもしれない。そう思ってくれる子をひとりでも増やせたらいいなという思いもありました。
――題材となっている宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』には、どのような印象をお持ちでしたか。
大友 人によっては学校の教科書に載っていたりすると思うんですけど、僕が習ったのは『注文の多い料理店』だったので、実はそんなにしっかり触れたことがなかった作品ではありました。でも今回関わってみて感じるのは、やっぱり宮沢賢治さんの作品は全部、世界観が独特ですよね。古いけど新しいみたいな雰囲気が面白いなと思います。『セロ弾きのゴーシュ』に関しては、ゴーシュが動物と関わっていく過程で自分とも向き合いながら成長していく物語なので、動物と、そしてお客さんと一緒に、僕もゴーシュとして成長できればいいなと思っています。
――これまで上演された公演を見て、どのような感想を持たれましたか。
大友 焦りましたね(笑)。とにかく、歌とセロ(チェロ)の迫力が凄くて!
淺場 あははは(笑)。
大友 今頑張ってセロの練習をしているんですけど、なかなか上手くいかないんですよ…。弓を動かすだけでも大変なのに、実際に演奏してくださっているヌビアさんとシンクロさせないといけないので、だいぶ焦っています(苦笑)。初めて映像で見たときから、「こんなこと僕に出来るのかな」と思っていましたけど、やっぱり相当頑張らないとたどり着けない技術だなと実感しています。
大友至恩
――ちなみに、今まで何か楽器に触れた経験はありますか?
大友 ギターを1回やろうとしたことがあったんですけど、あまり上手く出来ずに終わってしまったので、ほぼ初めましての状態ですね。特にセロは、弓も弦も、持ち方がわからないところから始まって、あらゆるところが筋肉痛です(笑)。まだ変なところに力が入っているからだろうと思いつつ、すごい良い筋トレにはなっていると思います。
――セロのシーンは爆発力が強い場面ですが、意識したいなと思っていることはありますか。
大友 セリフで伝えるのではなく、“音で伝える”というお話を稽古場でしていただいているのですが、その“音で伝える”という意識こそとてもゴーシュらしいなと思いますし、一番の見せ所なのではないかなと思っていますね。
淺場 演出面で言うと、普通のミュージカルであれば セロを演奏するシーンにも歌を入れたくなってしまうところなんですけど、ゴーシュはやっぱりセロに向き合っている人なので、最終的に歌で解決するのではなく、ちゃんとセロを弾いてほしいなという思いがあったんです。そこは脚本の葛木(英)さんとも合致したところでした。なので、あえて俳優としていつもやっている歌・演技・ダンスを一番に活かすのではなく、セロとどこまで向き合って上達してくれるのか。お客さんにはそれが真摯に映ると思うので、演出として特にこだわっているところではあります。難しいことだと思うんですけれど、以前ゴーシュを演じてくださった(竹内)黎さんもすごく上手にセロを弾いてくださいましたし、至恩さんも何回か練習しただけで本当に上手で。
大友 いやいやいや!
淺場 本番がとても楽しみです。
大友至恩らしい“ゴーシュ”を目指して
――カンパニーの雰囲気は、いかがですか。
大友 最初は、すでに空気感が出来上がっている中に入ることに対してとても緊張していたんですけど、初回の読み合わせでご一緒したみけねこ役の関根(翔太)さんが優しすぎて、面白すぎて!(笑)。とにかく笑いが多くて、「これは楽しい現場になるぞ」と思いました。
淺場 初回からみんなに囲まれて読み合わせだと緊張するだろうから、人との距離の詰め方が上手な関根くんとなら楽しく出来るだろうなと思い、まずは2人で読み合わせをしてもらったんです。それで心を開いていく感じは、物語の中のゴーシュとみけねこの関係にも近い感じがしますね。
――大友さんは、お稽古場でご覧になって好きな場面や動物はいますか。
大友 僕は、みけねこが好きです! 単純に関根さんが面白いというのもありますけど、曲が好きなんですよね。ジャズっぽい曲調が好きで、楽しいです。
ゴーシュとしては、怒りとか困惑とかいろいろな感情が入り交じっている中で一番最初に出会う動物なので、本当に謎な存在だと思うんですけど、でも、その後にいろいろな動物と出会うことで少しずつ感情が柔らかくなったり愛情が芽生え始めている感じもするので、やっぱり最初のみけねこは欠かせない存在だなと思いますね。
淺場 みけねこの場面の歌、全部1人で歌えてたよね(笑)。今回は最初に至恩さんお1人で歌のお稽古をさせてもらったんですけど、自分でみけねこのターンを歌ってからゴーシュのターンに入っていて、相当楽しそうでした(笑)。
大友 楽しかったですね。
淺場 一人芝居で出来るんじゃないかって思うくらい完璧でした。
大友 (笑)。
――このカンパニーでは2人目となるゴーシュを演じるにあたって、こだわりたいことなどはありますか。
大友 「僕にしか出来ないことをやりたいな」とはずっと思っていますね。竹内黎さんのゴーシュを拝見させていただいて衝撃を受けたので、少し真似をしている部分もあるんですけど、全部真似をするだけじゃ面白みがないし、今回僕が演じる意味がなくなってしまうじゃないですか。なので、以前までの公演へのリスペクトは持ちつつ、また別のニュアンスで出来たらいいなと思っているんですけど…黎さんの歌、本当に凄かったですよね。音源をいただいて聞いたりしていたのですが、すべての感情が歌にのって、聞くだけでパッと世界が広がるような感じだったので、とにかく焦りました(笑)。僕も頑張ります。
大友至恩
――淺場さんに伺いたいのですが、今回、ゴーシュ役を大友さんにオファーされたのは、どのような思いからだったのでしょうか。
淺場 ゴーシュという人物には、子供達を含めてお客さんの視線をひきつけたり、怒りとか葛藤とかすべての感情を劇場全体を使って伝えていくということが必要だと思います。前回までゴーシュを演じてくださっていた黎さんは音楽の力がとても強い方でしたが、至恩さんはお芝居の力が強く、たくさんの可能性を秘めた方だなと思っています。普段第一線で活躍されているフィールドが違うからこそ、きっと新しいゴーシュが生まれるだろうなと思ってオファーさせていただきました。
お稽古場で見て感じているのは、至恩さんのゴーシュは、葛藤している姿がとても等身大に感じられるんですよね。だからこそ、観に来てくれる子供たちには、音楽に向かうことの難しさとか楽しさをより身近に感じてもらえると思いますし、大人達には、人生に当たり前に存在する葛藤との向き合い方が深く心に響く作品になっているのではないかなと思います。歌い方も初演の黎さんとはまた違う魅力が爆発しているなと思うので、1回観た方も、初めて観る方も、物語全体はもちろん、ゴーシュの生き様をしっかりと観ていただきたいですし、この作品が明日を生きる糧になったらうれしいなと思います。
人生の糧になる経験を届ける舞台に
――観に来てくださるお客様に、どのようなものを受け取ってほしいと思いますか。
大友 「良かった」とか「しびれた」とか「感動した」とか、何かの感情を観ている方から引き出す作品にしたいです。大人達には、それぞれの解釈でかみ砕いてこの作品を楽しんでいただきたいなと思いますし、子供達にとっては、この公演で経験するいろいろなことがこれからの人生の糧になってくれたらいいなと思います。
――先ほど、「舞台に立ってみたいなと思う子もいるかもしれない」とおっしゃっていましたが、舞台に立つことを夢見る子供達に向けて、アドバイスやメッセージをお願いしたいです。
大友 僕も何かを言える立場では全然ないのですが…。でも、作品をいっぱい観るとかは大事かなと思います。そして、「この人の芝居が好きだ!」という発見が出来ると自分の中で何かが変わってくるのかなと。特定の“推し”をつくると良いかもしれないです。
淺場 至恩さんの“推し”気になる!!
大友 渋いお芝居をされる方で好きなのは、茅野イサムさん。逆に繊細なお芝居をされる方で好きなのは、小越勇輝さん。パッと浮かぶのはこのおふたりで、あとは近藤頌利さんとか、にっちゃん(阿久津仁愛)とか、『HUNTER×HUNTER』THE STAGEで共演したみなさんは凄い方ばかりで尊敬しています。やっぱり人によってお芝居の仕方が違うので、「この人!」と思った方が出ているいろいろな作品を観て、どういう演じ分けをしているのかを観察して、良いところを盗んでいくのが良いかなと思います。本当に僕が言えることではないんですけど、これは僕自身がこれからも頑張っていきたいと思っていることでもあります。
大友至恩
――最後にぜひ、鳴らして楽しむミュージカル『セロ弾きのゴーシュ』を気になっている、または観にいらっしゃるお客様にPRをお願いします!
淺場 2024年の7月に初演で早くも3回目の上演ということで、これまで多くの方からご好評をいただいている作品ではあるのですが、とはいえまだ出会っていない方はたくさんいらっしゃるので、まずは足を運んでみてほしいなと思います。今回も小学生以下は無料な上に0歳児から入れるというのは結構特殊だと思いますし、入退場自由なこともアナウンスさせていただいております。みなさんのご無理のない状態で、気軽な気持ちでお越しいただければなと。Office8次元の「8次元」とは「記憶の次元」であるというのはたびたびお伝えしているんですけど、今回もみなさんの記憶に深く残るような作品に確実になると思いますので、ぜひ劇場に起こしいただければと思います!
大友 つくる、聞く、鳴らす、観る。こんなにもいろいろな体験が出来る舞台は、滅多にないと思います。お子さんがいる、今これを読んでいらっしゃる、そこのお母様! そして、もしかしたら読んでいるかもしれない小学生の方、中学生の方、高校生の方、大人の方! どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません。
淺場 素晴らしい!宮沢賢治で締めた!
大友 つい『注文の多い料理店』が出てしまった!(笑)。ぜひ観に来ていただけたらうれしいです。
公演の詳細は公式サイトで!
https://www.8jigen.com/goshe2025/
文:越前葵
Office8次元プロデュース
鳴らして楽しむミュージカル『セロ弾きのゴーシュ』
【原作】宮沢賢治『セロ弾きのゴーシュ』
【作詞・脚本】葛木英
【演出】淺場万矢
【作曲】吉田 能(あやめ十八番)/ヌビア
【出演】
ゴーシュ︓大友至恩(劇団東俳 T プロジェクト)
みけねこ︓関根翔太(演劇集団キャラメルボックス)
かっこう︓安川摩吏紗
こだぬき︓吉井翔子(Office8次元)
ねずみ︓桃菜
楽団長︓廣川三憲(ナイロン 100℃)
子ネズミ︓本村ゆうか
楽団員(50 音順)︓淺場万⽮ 大日方絢子 千布幸奈 利根川凜
橋本薫子 丸山穂葉 溝部梨花 本村ゆうか 山本耀
【演奏】
チェロ︓ヌビア
ピアノ︓塩原奈緒
パーカッション︓佐藤直子
【日程】
2025年9月5日(金)〜9月7日(日)/池袋 Theater Mixa(シアターミクサ)
公式サイト
https://www.8jigen.com/goshe2025/
チケットお申し込みはこちら!
https://www.confetti-web.com/@/goshe2025