Oi-SCALE『阻む壁』チラシ。主演:鈴木勝大。

Oi-SCALE新作『阻む壁』鈴木勝大を主演に迎えシアタートップスにて上演。

Oi-SCALE『阻む壁』チラシ。主演:鈴木勝大。Oi-SCALE『阻む壁』チラシ。主演:鈴木勝大。

舞台『阻む壁』が10月31日(木)から新宿シアタートップスにて上演される。

Oi-SCALEは「抗えない血と実存の証明」を主題に日本文化のマイノリティとマジョリティの狭間にある澱みに焦点をあて、傷を負う者を描く演劇集団。
お笑いとパンクロックカルチャーに傾倒してきた林灰二の手がける脚本は時間軸を交錯させたトリッキーな構成で、間接照明を多用したライティングデザインと立体的サウンドによるアート性の高い空間演出が特徴的。

Oi-SCALEの2024年本公演は、林灰二書き下ろしによる新作長編作品。「ある日、道をふさぐ正体不明の壁が出来ていた」という現実離れした不条理な設定の物語だが、林灰二が本作に込めるのは、誰もが人生の中で感じる自己実現の欲求と社会との関係について。
東京都心で仕事をしつつ、郊外で家を持つ選択をした主人公オカモト。通勤時間が往復3時間以上かかることを受け入れる代わりに、予算内でマイホームを購入し、誰にも邪魔されない理想の生活を築くことを決意した矢先、駅と家を結ぶ唯一の道を壁に阻まれる。
壁はまるでオカモトの人生を否定するかのようにそこにある。しかし、その道を通らない者達にとって壁の意味は様々に変わるのだった。

スーパー戦隊シリーズ『特命戦隊ゴーバスターズ』(2012)にて桜田ヒロム / レッドバスター役でテレビドラマ初主演後、ドラマ、映画、舞台と幅広く精力的に活躍し、近年はた組の加藤拓也作品に常連出演する鈴木勝大が、Oi-SCALE初参加で穏やかに生きることを望むひたむきな主人公オカモトを演じる。

理不尽な災難に直面し孤独が募るばかりの不道徳なドラマは、震災やコロナ禍を経験した現在、皆が抱える漠然とした不安を浮き彫りにし、弱者の救済と人間関係に無関心な社会への痛烈な皮肉を含みながら道と壁の意味を問う。
上演時間は75分を予定。

STORY

東京都港区虎ノ門にある会社に勤続10年のオカモトは、都外のニュータウンに念願のマイホームを購入したばかりだった。庭付き一戸建て35年ローン。通勤時間92分。


ニュータウンは丘の上の林を切り開いて作られた。曲りくねった坂道が唯一駅と繋がる徒歩ルートだが、下り道でも20分はかかる。晴れた日は富士山を綺麗に眺められるが、利便性は良くない。それでも静かに暮らしたいと願うオカモトは、予算を最優先にして希望よりも2分だけ通勤時間は長くなった。

6時08分、毎朝決まった時間に家を出て坂道を下る。
坂道の途中で野良猫に餌をあげてから、すいてる電車に乗って、30分前にはオフィスの1階のコーヒーショップでネットニュースを読む。こうして昨日と同じ今日を過ごす。オカモトは目立たないことを己に言い聞かせ、仕事に真面目に取り組んだ。出世を望まないオカモトは、職場では都合よく信頼を得ていた。

いつか生涯の伴侶と出会い、ペットを飼うのが夢だった。車を買えばそう不便はなくなるはずだと考えていたが、その為にはさらにお金を貯める必要があるし免許も取らなければならない。何も整わない夢の準備の一つ目がオカモトにとっては家を買うことだった。

ある晴れた朝、坂道の途中で靴紐が解けた。靴紐を結び直していると何故か心とかけ離れた涙が瞳から溢れた。鼻を啜って立ち上がると、急に辺りが暗くなった。顔を上げ、いく手を見ると、道が高い壁で阻(はば)まれていた。



「カ ル マ が 追 い か け て き た。見 つ か っ て し ま っ た・・・」



平穏な日々を突如奪った不条理な災難を前にオカモトは立ち尽くす。
役所は対応に手間取った。
マスコミは騒ぎ立て、ネットでさまざまな憶測が飛び交った。
道を利用しない丘の上の住人は意外にも無関心だった。
学者は壁について調べたいと言い、
ロッククライマーは壁に登りたいと言い、
画家は壁に絵を描きたいと言い、
少年はグローブとボールを持ってきて壁とキャッチボールをした。
その壁はオカモトの人生展望の全てを阻害する障害だった。


 

林灰二(脚本・演出)
嫌なことがあった日は罰が当たったと想うようにしている。それでも本当に納得のいかない悲しいことがあった日は、それが自分でよかったと受け入れる。他の誰かを救ってくれた神様にお礼を言う。良いことをした日は見返りを求めずに、未来の為に徳を積んだのだと想う。今はまだその時じゃない。僕は後回しでいい。弱い者から順でいい。貧しい者の味方でいたい。金がない事よりも辛いことはない。僕は後回しでいい。病んだ者から順でいい。全ての出会いに感謝をする。全ての困難は僕をまた強くしてくれた。痛みに耐える心こそが僕の武器だ。嫌な奴にだって必ず親がいる。生まれながらにして悪人なんて居るわけが無い。全ての出会いに感謝を持つ。そして本当の幸福についてを考えている。って綺麗事をっ、奥歯噛みしめてっ、辛い毎日に耐え忍びっ、吐き出たため息で、政治でも宗教でもなくて劇団をやって芸術を創作してんのっ。
地球は誰のものよ!土地を所有できるって社会がそもそも腹立つんだよな。
阻む壁は怒りに満ちた作品です。僕には到底文句を言う資格はないダメな奴だから。でも主人公のオカモトは実直に生きてきた人間だから、どうか「邪魔すんなよっ」って叫んでもらいたい。

 
『阻む壁』チラシ表面

『阻む壁』チラシ裏面

本作は10月31日から東京・新宿シアタートップスで上演される。
詳細は公式サイトで。
https://www.oiscale.com

(文:Oi-SCALE 監修:エントレ編集部)

公演情報

舞台『阻む壁』

【作・演出】林灰二
【出演】鈴木勝大、澤井裕太、井野おりこ、横尾宏美、川崎桜、佐分祐佳子、宇奈月やつ子、林灰二
宇都宮功一、田辺学、名取えりか、鈴木貴大、白井肉丸、うさみみずほ、石井舞、柴山美保、玉木葉輔、賀来春希、用田チカ、伊藤琢史、岡村梨加、安齋直哉

 

2024年10月31日(木)〜11月5日(火)/東京・新宿シアタートップス

 
公式サイト
https://www.oiscale.com

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