今作は、『トップ・ガールズ』や『クラウド・ナイン』などの話題作で有名な現代イギリス演劇を代表する劇作家の一人、キャリル・チャーチルの二作品です。
『A Number―数』は堤真一さんと瀬戸康史さんが二人芝居に挑まれています。
人間のクローンを作ることが可能な近未来を舞台に、秘密を抱えて葛藤する父を堤さんが、クローンを含む三人の息子たちを瀬戸さんが演じます。
初日前会見で堤さんは「クローンを通して、“人間とは”“自分とは何だろう”と考えることができる作品です。人や年齢によって見え方が違うので、固定観念を持たず、難しそうなテーマですが肩肘張らずに見て欲しいです!」と仰っていました。
瀬戸さんは「親子の色々な愛の形を感じ、苦悩を含め、自分を好きになれる、自分に優しくなれる作品になっているかもしれないです。言葉の裏の気持ち、何を言おうとしているのか、伝えようとしているのか“感じる”ということが今回の作品では大事だと思っています!」と仰っていました。
こちらはクローンが題材ということで、お二人とも遺伝子工学について学んだりもしながら作品作りをされたそうです。
堤さんの自然な演技、瀬戸さんの演じ分けが流石でした。不思議な世界に入り込むような感覚で、世にも奇妙な物語を見ているような独特の雰囲気でした。
『A Number―数』は愛する人を失い苦しむ“某氏”を大東駿介さん、“未来”と“現在”を浅野和之さんが、Wキャストの“幼き未来”と共に演じ、日本初演の戯曲に挑まれていました。
幻想的な照明、音楽、空間と、大東さんの芝居に一気に引き込まれました。大東さんの恋人を失った男性の演技は
喪失感、焦燥感と絶望…が表現され、こちらまで苦しくなりました。
今回の役作りでは、心理学の先生からも学び、悲しみの段階を知り、深めたそうで、心情を丁寧に汲み取り役作りされた様子が伝わってきました。
最初は静かな淡々とした舞台かな?と思っていたら、浅野さんの想像の斜め上過ぎるエキセントリックな登場とその姿に驚きました!(この写真とは、また違うお姿です)
これはネタバレになってしまうので「是非生で見て下さい!」としか言えないのですが…とにかく今まで見たことがない浅野さんの姿がアンバランスでありながらハマってもいて、とにかく躍動感があって生き生きとしていて、不思議な魅力がありました!
浅野さんが囲み取材で「20分の舞台なので寝ないで下さい」と仰ってましたが、寝る暇なんかどこにもありません(笑)
文学的で簡単に理解し難い言葉達と、
目の前で繰り広げられる不思議な世界観を理解しようと必死に頭を働かせて考えますが、追いつかず、「なんじゃこりゃー⁈」て口が開いたまま閉じませんでした。
消えた?と思ったらここから現れた⁉︎
ととにかく舞台構成も面白く一瞬も目が離せませんでした。
大東さんの役者としての吸引力、浅野さんの演者としての振り幅の広さに注目です!
20分間があっという間で、呆気に取られる程面白く、
続きを観たくなるような気になる作品でした。
どちらも違った魅力があり、静かな中にも、役者陣の熱意を感じました。劇場ならではの生の演出もとても面白かったです!
(文:あかね渉)
舞台『A Number—数』、『What If If Only—もしも もしせめて』
【作】キャリル・チャーチル
【翻訳】広田敦郎
【演出】ジョナサン・マンビィ
【美術・衣裳】ポール・ウィルス
【出演】
『A Number―数』
堤真一、瀬戸康史
『What If If Only―もしも もしせめて』
大東駿介、浅野和之、
ポピエルマレック健太朗・涌澤昊⽣(Wキャスト)
公演日程:2024年9月10日(火)~2024年9月29日(日)
会場:世田谷パブリックシアター
公式サイト
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/24_churchill/