大人気小説原作・小西遼生主演!ミュージカル『鉄鼠の檻』観劇レビュー!
【撮影:岩田えり】大人気小説『鉄鼠の檻』、小西遼生主演でミュージカル化!
シリーズ累計1,000万部を超える、京極夏彦の大人気長編推理小説「百鬼夜行シリーズ」の『鉄鼠の檻』が、『魍魎の匣』に引き続きミュージカル化!小西遼生さんを中心としたキャストで、2024年6月14日(金)より、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演されています。
本作の舞台は、昭和28年の箱根。古物商の今川雅澄は、明慧寺の僧侶・小坂了稔から買取の依頼を受けて、箱根山中の「仙石楼」に宿泊。了稔からの連絡がなくしびれを切らしていた今川は、雪の中で座禅を組んだまま死んでいる了稔の遺体と対面します。周りに足跡はなく、不可解な現場に騒然とする人々。
時を同じくして箱根を訪れていた古本屋「京極堂」こと中禅寺秋彦と、その友人で作家の関口巽、探偵の榎木津礼二郎も、この事件に巻き込まれていきます。一行は、僧侶が次々と殺される「箱根山連続僧侶殺害事件」の真相を探ることに…
事件の真相は?そして『鉄鼠の檻』の意味とは?
主演を務めるのは、舞台『キングダム』やミュージカル『王様と私』などの話題作への出演が記憶に新しい小西遼生さん。ミュージカル『魍魎の匣』から続投で主演を務めます。
演出を担当したのは、『FACTORY GIRLS ~私が描く物語~』で第27回読売演劇大賞優秀作品賞を受賞した、板垣恭一さん。作曲・音楽監督は、演劇『ハイキュー!!』や舞台『鬼滅の刃』などの漫画原作の舞台で楽曲制作を行っている、和田俊輔さんです。
本記事では、ゲネプロの様子(※榎木津礼二郎役:北村諒さん)をご紹介します。
主要キャストについて
まずはメインキャストの小西遼生さんをはじめとする、キャストに皆さんの印象についてお伝えします。
小西遼生さん
小西遼生さん演じる中禅寺秋彦は登場しただけで、場を締めるオーラが抜群。和装を美しく着こなすうえに、発する言葉には落ち着きがあります。
【撮影:岩田えり】
歌声には迫力と繊細さがあり、場面に応じて声量や空気を変える小西さん。あっという間に小西さんのお芝居に引き込まれます。本作は状況説明のための歌が多いのですが、中禅寺秋彦は「相手の本音を引き出すため」に歌うことが多く、その度に小西さんの歌唱力に圧倒されました。
北村諒さん
北村諒さん演じる、探偵・榎木津礼二郎は、根っからの「陽」のオーラが眩しいキャラクター。
【撮影:岩田えり】
頭が切れてちょっぴりキザなところを、北村さんが豪快にそして華やかに演じています。ところどころ、笑いを誘うユーモアや可愛らしさのあるキャラクターが好印象です。そして、金髪のロン毛、白いスーツのなんと似合うことでしょう…!登場シーンもかなりインパクトがあるので、ぜひ注目してみてください!
神澤直也さん
神澤直也さん演じる関口 巽は、小説家らしい真面目でおとなしい印象を残しつつ、優しさが見えるお芝居が印象的です。
【撮影:岩田えり】
小西さん同様ミュージカル『魍魎の匣』からの続投ということで、“関口 巽を演じている”というより、もはや関口 巽が彼自身に見えるほど。彼はストーリーテラーとしての役割も担っていますが、世界観を維持したまま語っているため、物語がぶつ切れにならずに楽しむことができました。
上田堪大さん演じる和田慈行の厳格な雰囲気や、外界と接することを避けるような雰囲気には、孤独すらも感じさせます。高本 学さん演じる山下徳一郎は、プライドが高くときに暴走しつつも、捜査を通して自己成長を遂げる警察官を丁寧に演じていました。小波津亜廉さん演じる、杉山哲童の存在感にも注目。言葉を話さない人物ならではの、空気感や目線で心を伝えるお芝居が印象的でした。
そして、畠中 洋さん演じる仁秀の只者ではないオーラには目を見張ります。お年寄りらしいおぼつかない足取りと「はいはい」という相槌が、逆に不気味な印象を与え「どういう人なんだ」とつい目で追ってしまう存在。
【撮影:岩田えり】
公式サイトに載っているスチールからもオーラと強すぎる眼差しを感じ、思わず目を逸らしてしまいたくなるほどですが、そのまなざしの強さが本作に深みを与えていると感じました。
印象的な言葉
印象的だったのは「束縛なくして自由はない。檻がなければ檻から出られない。出たければ、まず出るための檻を作らなければならない」という言葉。
本作のテーマは、人々の心に巣食う「鼠」の存在なのではないかと思います。僧侶それぞれの中に「別の鼠」がいて、それゆえに封鎖された空間「明慧寺」のなかで、事件が起きてしまう…「禅」に関する知識が増えるとともに、深いメッセージを2時間半の短い作品の中で受け取ることができます。
【撮影:岩田えり】
ラストシーンにかけて、キャストの熱量も上がり、舞台照明や小道具も華やかになり、私自身もグッと世界観に引き込まれていくのを感じました。
舞台演出について
印象的だったのは、映像を駆使した舞台セット。大仰な舞台セットはほとんどなく、屋根にのぼる場面や火が燃えるシーンなども、映像を使って表現していました。
【撮影:岩田えり】
また歌やセリフと一緒に、文字が出てくる演出も!役名や専門用語がたくさん出てきますが、聞き馴染みのない言葉も理解できて、誰もが楽しめるように工夫された演出でした。
なお、本作は登場人物が多く、場面も次々と転換していくので、原作を知らない方は登場人物の名前を覚えていくことをおすすめします!冒頭から名前と顔が一致すれば、より話を楽しめるのではないでしょうか?
【撮影:岩田えり】
本作は6月24日(月)まで紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演されます。
詳細は公式サイトで。
https://www.tessonoori-musical.com/
(文:山本萌絵)
ミュージカル『鉄鼠の檻』
【上演台本・作詞・演出】板垣恭一
【作曲・音楽監督】和田 俊輔
【出演】小西遼生 北村 諒/横田龍儀(Wキャスト) 神澤直也
上田堪大 高本 学 小波津亜廉 大川 永 宮田佳奈 伊﨑右典
畠中 洋 ほか
2024年6月28日(金)~29日(土)/大阪・サンケイホールブリーゼ