太宰治といえば自分が愛読している『人間失格』の作者、にも関わらずこの事実を知らなかったことに衝撃を受け、また題材が『ハムレット』という点においても演劇に人生を捧げた自分にとってその無知に恥ずかしさを覚えたわけで…
さすがPARCOプロデュース!いつも斬新な企画や目の付け所が演劇ファンの心をくすぐる!演出も、古典作品を現代的にかつ親しみやすく立ち上げる手腕に定評のある五戸真理枝さん(読売演劇大賞最優秀演出家賞受賞)を起用し、はたしてどんな『ハムレット』が観られるのかワクワクしながら劇場に向かいました。
『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』撮影:宮川舞子
全編が太宰治!
冒頭はキャストが登場し太宰治のはしがきを読み上げる。その内容が実に太宰らしい【自己弁解】の羅列、その感性にクスクスとさせられるのは自分が太宰が好きだから?そんなことを考えながら展開を追っていったけど、いやぁ~これはどの登場人物も太宰節が炸裂していてイライラする(笑)安心してください、とても前向きな感想ですよ!
誤解を招かないようにお伝えしておくと、自分は太宰治が大好きで、本で読んでいる時はその【太宰節】の文字に浸れるし心地良くなるんです。でも、生の舞台で生きた言葉が飛んでくるとその【節】が面倒臭い!(笑)今回のハムレット、自分は凄いんだと自信過剰になったと思えば小さい人間だと言うし、褒めてもらいたいのに褒めるとその言葉は嘘だという、そんなことの繰り返しです。ハムレットだけでなく、そういった登場人物ばかり!シェイクスピアの『ハムレット』もそういったところがあるけど、今回はフライヤーにも書かれてるように【共感度100%の日本人的なハムレット】ってありますからね、共感しすぎてイライラして笑えます!
『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』撮影:宮川舞子
クセを併せ持つ実力俳優陣!
こちらもフライヤーの言葉を引用していますが、【個性】という言葉ではなく【クセ】という言葉を前向きにチョイスしているのもいいし、クセって言葉がピッタリ!
木村達成さんが演じるハムレットは、王族というよりは、一人の青年として苦悩している姿があり、自分の知るハムレット像とは違って面白かった!前述したようにイライラさせられるけど、木村さんの持つ上品さや華やかさがそれらを緩和させ笑いに繋がっているように感じる。
島崎遥香さん演じるオフヰリヤは原作よりも難しい役になっている気がしたけど、フレッシュに演じる姿に好印象!ガーツルードを演じる松下由樹さんは初めて舞台で拝見したけど、自分がテレビで観ている可愛らしい印象と違ってとても重厚な存在感でカッコよかった!
『新ハムレット~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~』撮影:宮川舞子
ハムレットの世界観を日本的にということで、随所に工夫があった。言葉ではデンマークと言ってるけど日本国旗(風?)の美術があったり、洋服を着ているけど着物の羽織のようにも見せるデザインだったり、王冠が日本兜だったり。登場人物みんな拗らせてたけど、最終的に言葉のやり取りを【議論】て言葉でまとめてたのがおかしかった。これも現代的な解釈だなと感じました!
(文:かみざともりひと)
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ
新ハムレット ~太宰治、シェイクスピアを乗っとる!?~
【作】太宰治(新潮文庫刊『新ハムレット』より)
【上演台本・演出】五戸真理枝
【出演】
木村達成 島崎遥香 加藤諒 駒井健介/池田成志 松下由樹 平田満
2023年6月6日(火) ~ 2023年6月25日(日) /東京・PARCO劇場
2023年7月6日(木) /福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
2023年7月9日(日) /大阪・森ノ宮ピロティホール