ミュージカル『スクルージ』

クリスマスを嫌う男が起こす最高な奇跡 ミュージカル『スクルージ~クリスマス・キャロル~』観劇レビュー

ミュージカル『スクルージ』
ミュージカル『スクルージ』

クリスマスを嫌う男が起こす最高な奇跡 ミュージカル『スクルージ~クリスマス・キャロル~』観劇レビュー

クリスマス目前、日本の街にもイルミネーションやクリスマスの装飾が施され、非日常の雰囲気に浮足立つ季節。不朽の名作「クリスマス・キャロル」原作のミュージカルがこのクリスマスシーズンに帰ってきました!

ミュージカル『スクルージ』
左より)スクルージ役-市村正親、未来のクリスマスの精霊役-阿部裕、ボブ・クラチット役-武田真治

本作の舞台は19世紀半ばロンドン。
雪の被った住宅を、足早に家路へと急ぐコートをまとった人々。中には欲しい人形を買ってもらう子供、スープを売るのに忙しい男、満足な食事は手に入らないけれどつつましくとも幸せにクリスマス・イヴを祝う家族ー。誰もが浮足立ち誰にとっても特別な日。その中で唯一クリスマスを嫌う男、スクルージ。(市村正親) 金貸しを営むスクルージは借金の取り立てに勤しみ、献金を拒み、人々に嫌われているケチなおじさん。この作品は、(ボブ・クラチット役の武田真治さんの言葉をお借りすると)そんなスクルージの「環境と経験でねじ曲がってしまった心を、3人のクリスマスの精霊によって清められる物語」です。クリスマスの朝、スクルージの新しい人生の幕開けに注目です!

3年ぶりとなる市村正親のスクルージ

1994年の初演以降、再演を重ね今回3年ぶり7度目の出演。見れば見るほどスクルージにしか見えない市村さん。はじめはクリスマスを嫌うただケチで嫌なおじさんに見えますが、少し可愛らしい部分もあり。曲がった腰で背伸びをしてコートを”よいしょ”とかける姿や、中盤には謎の液体を飲んで小躍りする姿も。舞台後半、自分の未来に愕然とする場面ではひざまずいて精霊にすがり、その姿は威張ったドケチおじさんはどこにいったのかと思うほど弱々しく。舞台上に存在する、ただ一人の老人の喜怒哀楽がとても自然で、なんとも人間らしく魅力的でした。

ミュージカル『スクルージ』
左より)過去のクリスマスの精霊役-愛原実花、スクルージ役-市村正親

しかめっ面で「馬鹿馬鹿しい」としか言わなかったおじさんが、今までとは違う人生をはじめると決心して、晴々とした顔つきで「♪好きさ人生」と歌うようになるまで。それはクリスマスの精霊によってもたらされた奇跡のような出来事。劇中では”幸せは願えば叶う”という台詞が何度か登場します。大人になると期待することをやめたり、諦めてしまったりしますが、”幸せ”は自分が望みさえすれば届く場所にあり、大切なものは身近にあるのかもしれません。

ミュージカル『スクルージ』
左より)現在のクリスマスの精霊役-今井清隆、スクルージ役-市村正親

劇中では武田真治さん、相葉裕樹さん、実咲凜音さんらが演じる登場人物をはじめとし、スクルージの過去・現在・未来に関わる様々な人間が人生を見つめ直すきっかけを与えてくれます。中でも、スクルージの心を最も動かすことになるのがティム坊や(奥田奏太・三田一颯のWキャスト)。家族団らんのシーンは心が温まる場面の一つで、またティムが一人で歌唱を披露する場面もあり、重要な役割を担っています。

ミュージカル『スクルージ』
左より)スクルージ役-市村正親、ジェイコブ・マーレイ役-安崎求

クリスマスはみんなのもの

劇中に出てきた台詞ですが”クリスマスはみんなのもの”。過ごし方はそれぞれ、祝ったりパーティをしなくたっていい。どのように過ごしたとしても、身近なものを大切に思ったり、”幸せ”を感じるきっかけになったらそれだけで素敵じゃないか!と思える物語でした。毎年クリスマスは特に何もしない私ですが、今年は友人と(美味しいごはんとお酒で)クリスマスという一日を楽しんでみようかなと、少し待ち遠しい気分になりました。

ミュージカル『スクルージ』
左より)イザベル役 実咲凜音、若き日のスクルージ役 相葉裕樹、過去のクリスマスの精霊役 愛原実花、スクルージ役 市村正親

心温まる物語を大切な家族や友人と。ぜひ劇場に足を運んでみてください!

(文:真来こはる)

公演情報

ミュージカル『スクルージ~クリスマス・キャロル~』

原作:チャールズ・ディケンズ
脚本・作曲・作詞:レスリー・ブリカッス
演出:井上尊晶

<キャスト>
スクルージ:市村正親
ボブ・クラチット:武田真治
ハリー/若き日のスクルージ:相葉裕樹
ヘレン/イザベル:実咲凜音
ジェイコブ・マーレイ:安崎 求
クラチット夫人/過去のクリスマスの精霊:愛原実花
フェジウィッグ夫人:今 陽子
現在のクリスマスの精霊:今井清隆

フェジウィッグ/未来のクリスマスの精霊:阿部 裕
トム・ジェンキンス:神田恭兵
高橋ひろし
中西勝之
さけもとあきら
高木裕和
松岡雅祥
井口大地

家塚敦子
伽藍 琳
三木麻衣子
七瀬りりこ
横岡沙季
森田万貴
脇領真央

マーサー・クラチット(Wキャスト):設楽乃愛 長谷川愛鈴
ベリンダ・クラチット(Wキャスト):佐々木咲華 若井愛夏
ピーター・クラチット(Wキャスト):越永健太郎 重松俊吾
キャシー・クラチット(Wキャスト):下井明日香 戸張 柚
タイニー・ティム(Wキャスト):奥田奏太 三田一颯
少年スクルージ(Wキャスト):西山遥都 長谷川悠大
街の子ども(Wキャスト):荒井天吾 入内島悠平

<スウィング>
西垣秀隆
尾上菜摘

2022年12月7日(水)~25日(日)/東京・日生劇場

主催:ホリプロ
企画制作:ホリプロ
上演協力:劇団ひまわり

公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/scrooge2022/

チケットを探す

関連記事一覧