受け継がれる物語 2グループの成長の過程 舞台『少年たち あの空を見上げて』観劇レビュー
1969年の初演以来、上演が重ねられてきた『少年たち』シリーズ。本作『少年たち あの空を見上げて』では昨年と同様HiHi Jets&美 少年が主演を務め、さらには内博貴も出演。少年たちが大人と社会への反抗を爆発させ、監獄の中での成長と葛藤が描かれている。大人に何も聞き入れてもらえずやりきれない思いを募らせた少年たちが、その末に立てた脱獄計画の行方はー。
現在は東京公演を終え、名古屋・御園座の公演中。代々受け継がれている本作品、2022年『少年たち』の様子をレポートします。
※以下、公演内容を含みます。ご注意ください。
幕開けはショーの様な躍動感溢れるオープニング。少年たちが犯した犯罪がフラッシュバックし、赤と青のライティングで舞台が染まります。冒頭からロックテイストの楽曲に合わせたダイナミックなダンスパフォーマンスが印象的でした。
舞台は少年刑務所で、個々に事情を抱えた少年たちが赤と青の2つの房に収監され生活。一人一人にスポットをあてる演出もあり、特に少年たちが2人ずつ登場し罪と向き合う場面では、それぞれの関係性が見えてきます。
高橋優斗さんと岩崎大昇さんは幼馴染であったのにある事情でぶつかり合い、すれ違う。(嫌な看守長によって歩み寄る機会を与えられないのもまたもどかしいところです) 共通点がある井上瑞稀さんと佐藤龍我さんはそれぞれの弟を想い歌います。優しく甘く歌う声が印象的で、声の相性も良く、同じ境遇の2人が少し近づく一場面に。橋本涼さんと那須雄登さんはそれぞれ落ち着いた低い声と音圧のある迫力が魅力。2人が犯罪を犯した経緯が語られます。作間龍斗さんと浮所飛貴さんは中央に照明がポツリと照らされた暗いステージに登場し、罪の認識が対照的な2人が対峙する姿が浮き彫りに。猪狩蒼弥さんと藤井直樹さんは怒りをRAPで表現し、猪狩さんはこなれ感のある歌い回し、藤井さんは体全体を使うダンスで迫力のあるバトルを繰り広げます。金指一世さんはキーマンとなる人物で、内博貴さんは少年たちを煽り感情を逆なでする、これでもかというほど嫌な看守長を演じています。他にも、見どころの一つであるバスケボールの対決シーンや、刑務所内の入浴シーンでの伝統の”桶ダンス”、アドリブにも注目。
壮大な音楽とそこに生きる等身大の少年たち。そのコントラストが、時に少年たちを大きく見せたりちっぽけに見せたり。耳に残るオリジナル楽曲も効果的に少年たちのリアルを表しています。ピアノの演奏と夕焼けと囚人服。終盤ではオレンジのライトに照らされた成長過程の少年たちを見守りながら、なんともいえないセンチメンタルな気持ちになりました。
本編とは打って変わって華やかなショータイムも見どころ。アイドルらしいフレッシュさに満ちたキラキラな”ジャニーズワールド”を肌で感じる時間となっています。
根底は胸を打つストーリーでありながらも、耳に残る楽曲や躍動感のあるダンスで”総合エンターテインメント”として人々を魅了する作品。同年代には共感でき、上の世代の方には青春時代や尖っていた過去がどこか懐かしく感じる場面もあるのではないでしょうか。
御園座公演中には10月30日に橋本さん、10月31日に井上さんが誕生日を迎えました。舞台公演中にまた年を重ねていく彼ら。歴代の先輩たちがそうであったように、彼らにとってもまた思い出深い作品となるのでは。活動の中でも、舞台は特に精神的にも身体的にもかなり消耗するのではと想像しますが、連日板の上に立つ彼らが輝いて見えました。長丁場での公演を経て、またさらに羽ばたいていく2グループの今後を見守っていきたいです。
公演の詳細はこちら。
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202209_enbujo/
(文:真来こはる)
『少年たち あの空を見上げて』
Eternal Producer:ジャニー喜多川
演出:滝沢秀明
出演:
HiHi Jets
髙橋優斗 井上瑞稀 橋本涼 猪狩蒼弥 作間龍斗
美 少年
岩﨑大昇 佐藤龍我 那須雄登 浮所飛貴 藤井直樹 金指一世
内博貴
2022年9月11日(日)~10月13日(木)/東京・新橋演舞場
2022年10月28日(金)〜11月6日(日)/愛知・御園座
公式サイト
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202209_enbujo/
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