すでに2020年のベストじゃないですか? 戸塚祥太・福田悠太らが出演の舞台『阿呆浪士』観劇レビュー
舞台『阿呆浪士』 撮影:御堂義乗すでに2020年のベストじゃないですか? 舞台『阿呆浪士』観劇レビュー
お正月(年のはじめ)の作品は製作会社も気合いを入れて「これだっ!」ってのを上演しているのを、みなさんは知っていますか!?…すいません、憶測です。でも年の初めは縁起良くいきたいと思うのはみな一緒。実際年に何本も作品を観ている自分が年間ベスト3を選ぶときには、大抵この時期のものが入ってきます。何が言いたいかというと、この『阿呆浪士』もすでに2020年のベストじゃないですか?自分メチャクチャ楽しくて、ヤラれちゃったんですけど!ってことです!!(笑)
物語の主人公の八は女に酒にだらしなく、でも憎めない愛らしい役。そんな役をジャニーズの戸塚祥太さんが演じるのってどうなの??と始まる前からクエスチョンが飛んでたんだけど、舞台を縦横無尽に走り回りジェスチャー交じりにコミカルにお芝居する姿を観て納得!
下品な部分もある役だけど、とても人間らしい姿を素直に演じてて嫌味がない!演じてるというより戸塚さんが素直に役を受け入れてる姿に好感持っちゃうし、なにより戸塚さん自身の屈託のないスマイルは、どんなちゃらんぽらんな男であっても全部許せちゃう!思わず「かわええやん…」と、普段出ない関西弁が漏れるほど(笑)
八とは真逆の性格で真面目で一本気のある男、田中貞四郎を演じる福田悠太さん。八と関わったことで大きく人生が変わってくるんだけど、侍として女を知ることがなかった貞四郎の、一見カッコいいけど実は残念な男の有り様が共感できて笑える!
おふたりの舞台を観るのは初めてだったけど、ジャニーズというより“役者”を感じるほど、体当たりで挑んでた!
そしてもうひとり話の主軸となる大石内蔵助を演じるは、自分も大好きな小倉久寛さん!大石内蔵助と聞くと、みなさんが各々想像する人物像があると思うけど、設定も含めて意外な感じでした。詳細は伏せるけど、小倉さんの力の抜けたお芝居は年々磨きがかかり同時に人間味が増すし、それでいてマスコットキャラのような存在は唯一無二!
タイトルの【阿呆】だけを見ると、マヌケな人物たちのコメディ作品かと想像したけど、そうじゃなかった。どの役もみんな自分の道を真っ直ぐに進んでく阿呆たちばかり。ただその阿呆っぷりは決してバカにするようなものじゃなく、“情”の深さを知る作品。
特に印象的だったのは、蔵助と貞四郎と黒兵衛(佐藤誓さん)がお殿様の話をしながら昔話をするシーンは、彼らの背負ってきた過去を想像させられて胸が締め付けられた。人間、最後は想い出に生かされるのかもしれないなぁ、と。
レビューを書きながらも幾つもの場面を思い出ししんみりしちゃうんだけど、やっぱりこの作品を生んだ脚本の鈴木聡さんが凄い!自分も普段は舞台演出しているけど、舞台を観ていて「脚本がすごい…」と唸ることはそうそうない。自然な流れだし、いつの間にか作品が自分に寄り添ってきてた!
そして演出も面白かったぁ!ラサール石井さん演出作品を観るのは実はけっこう久々だったんだけど、エンタメ感が増したし、細かいところで観客に伝わる仕掛けを幾つも施されていてとっても勉強になった!
今回の作品は客席からペンライトや団扇を使うシーンがあります!団扇は持ってなくても忘れても、ロビーにて貸し出ししててとっても親切!舞台上のキャストも観ているみんなと一体感を持ってこのエンタメ作品に挑みたいはず!ぜひ一緒にエンタメしてみてください!!
詳細は公式サイトで。
(文:かみざともりひと)
舞台『阿呆浪士』
【脚本】鈴木聡
【演出】ラサール石井
【出演】戸塚祥太(A.B.C-Z) /福田悠太(ふぉ~ゆ~) /南沢奈央 伊藤純奈(乃木坂 46) 宮崎秋人 堺小春 八幡みゆき 新良エツ子 /佐藤誓 おかやまはじめ 松村武 /西海健二郎 おおたけこういち 辻大樹 堀田勝 MAEDA 立川ユカ子 安川里奈 木下桜 /玉川奈々福/竹内都子/小倉久寛
※1/12(日)の東京公演及び、大阪公演については、玉川奈々福に代わり真山隼人(浪曲)・沢村さくら(曲師)が代演。
2020年1月8日(水)~1月24日(金)/東京・新国立劇場 中劇場
2020年1月31日(金)~2月2日(日)/大阪・森ノ宮ピロティホール
公式サイト
舞台『阿呆浪士』