2019.4.18  567

小池徹平×三浦春馬 ミュージカル「キンキーブーツ」観劇レビュー


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三浦春馬
三浦春馬とエンジェルス
 

小池徹平×三浦春馬 ミュージカル「キンキーブーツ」観劇レビュー

 

4月15日、東急シアターオーブにてブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」の公開ゲネプロが行われた。

「キンキーブーツ」は、イギリスの田舎町にある老舗の靴工場の後継ぎ息子チャーリーがドラァグクイーンのローラと出会い、経営難に陥った靴工場を立て直していく過程を描いた物語。
日本では2016年に小池徹平・三浦春馬主演で初演。今回は3年ぶりに同主演での再演となる。

 
この作品の話をする上で、まず最初にあがるのは三浦春馬演じるドラァグクイーン・ローラについてだろう。

ローラは、好きなもの=自分ということをよく知っている。
好きだからやるし、できる。好きってそういうこと!これが自分!と、愛と情熱を惜しげも無くふりまく。

三浦春馬
三浦春馬

表舞台で歌い踊るローラは誰もが憧れる魅力的なドラァグクイーンだ。
魅力は引力であり、重力。だがその中心にいる者は、憧れられることの孤独も知っている。

小池徹平、三浦春馬
小池徹平、三浦春馬

物語が進んでいくにつれて、ローラの内側の部分が描かれていく。
ローラが出会い育てた「好き」は子供のまま大きくなったように純粋。
よくメイクやファッションは武器であり鎧だ、と言うが、ローラはまさにドラァグクイーンという美しく強い姿で、心許なくて壊れそうな「好き」を守っている。
舞台上の時間が進んでいくにつれ、それを知ってしまう観客は、ローラの優しい微笑みも、目を見開いた迫力ある表情も、ローラのすべてが儚く見えて切なくなる。
だからみんなローラを好きになるのだ。

三浦春馬
三浦春馬

でも実は、この物語はローラが与えるばかりの物語ではない。
見た目の美しさや迫力で目がいってしまうのはローラだが、
おそらく本人も気づかないうちにローラを認めて勇気と可能性を与え、
ローラを含む全ての登場人物の物語を進めていくのは、小池徹平演じるチャーリーなのだ。

小池徹平
小池徹平

好きなものだけを追いかけて自分を作り上げたローラと、いつも状況に流されながら自分を作ろうとしていくチャーリー。
どうすれば良いのかわかって行動するのがローラ。どうするべきかわからないけれど行動するのがチャーリー。
正反対なようにも見えるが、このふたりは似ている。
どちらも「本当の自分ってなんだろう。」という考えを心の中の大切なひと部屋にしまっているように見える。

小池徹平、三浦春馬
小池徹平

もしかしたらその問いは、このふたりだけではなく、観客であるわたしたちも、常に抱えているものなのかもしれない。

生まれたままの自分が本当の自分だと思うこともあれば、
生きていくうちに自分で見つけた自分が本当の自分と思うこともある。

新しい自分に出会った時、もしも今までの自分にさよならすることになったとしても悪いことじゃない。
自分や周りを責めないで、受け入れることで世界は広がる。ふたりはそう教えてくれた気がする。

この作品のテーマのひとつに、「互いを受け入れ、自分が変われば世界も変わる」というメッセージがあるとゲネプロ前の会見で聞いた。
それはまさにこのことなのだろうと感じた。

小池徹平、三浦春馬 ほか
小池徹平、三浦春馬 ほか

「好き」という情熱を認めてくれたチャーリーに対して、ローラは喜ぶ。
そして自分も応えたいと、挑戦するローラ。
その姿はとてもいじらしく、かわいい。

でもその行為は、いわば素肌をむき出しにするようなもの。
大切に磨かれた肌は美しいが、些細な刺激で傷ついてしまう。心も同じだ。
それでもローラはチャーリーへ伝えたいことがあったからそうした。
チャーリーなら受け入れてくれると信じたのだろう。

だが、それを笑うひとがいることも、ローラはもちろん知っていた。
その対処を、ローラは半ば諦め気味で、ドライにこなしてしまおうとする。
でもそこで終わらせなかったのはチャーリーだ。(おそらくいつものようにチャーリーは気づいていないが、そこがチャーリーの魅力なのだ。)

大人ぶって無かったことにしてしまえばこれ以上不快なことは起きない。
だが、そこで終わりにしないことで、新しい何かが芽生えることだってある。
少なくともこの物語において、時間を止めなかったからこそ出会えた景色は、ひとりで見ていた頃では想像できなかった景色だった。

そんなひとりひとりの美しい景色が、舞台の上に色鮮やかに描かれていく。

三浦春馬、勝矢
三浦春馬、勝矢

あれこれ書いてきたが、正直なところ、観覧後の筆者の感想は
「かっこよすぎて・・・泣けた!!!」それだけだった。
出演者全員が笑顔なのに涙が出てくるなんて、初めての体験だった。
それくらいすべてがどストレートで、シンプルで、とにかくめちゃくちゃにかっこいいのだ。

この物語の中に、そのまま教訓となるような難しいセリフはない。
そうではなくて、例えるなら、ひとつひとつのセリフや仕草、照明、衣装、音楽などの要素が一輪ずつの花で、
それらが集まって大きな花束になり、その花束に込められた花言葉のような優しい考えを提案されている感覚。

三浦春馬
三浦春馬

それができるのは、すべての演者とスタッフの技術や人間力によるもので、そう感じさせないほどの練習量があるからだろう。
まず冷静に考えてあの高さのヒールを履きながら涼しい顔で踊るなど、大抵の努力ではできない。
(個人的には、あの高さで美しく歩くことすら不可能だと感じている。)
また、踊りの振り自体は単純なものが多いため、各キャラクターそれぞれの性格に合わせた仕草や角度を研究しつくされている印象を受けた。
同じ踊りでもキャラクターによってオリジナリティを感じられるのでぜひひとりひとりをじっくり見てみてほしい。

ミュージカル「キンキーブーツ」
ミュージカル「キンキーブーツ」

主演ふたりはもちろん、ふたりを支えるすべてのキャストが表情豊かで魅力的。

小池徹平、ひのあらた
小池徹平、ひのあらた

ソニン
ソニン

三浦春馬、勝矢
三浦春馬、勝矢

好きなものってしあわせ。
一生懸命「大好き!」をしている姿はかわいくて、素敵だということ、
そして、信じることの強さを、キンキーブーツは教えてくれる。
その直射日光のようなあついメッセージの色はきっと、キンキーブーツのような鮮やかな赤!

キンキーブーツは、観るものそれぞれが守ってきた、大切な心のひと部屋のドアを優しく開いてくれる。
「あなたの人生の主役はあなた!こわくない!」と言われている気持ちになる、強くて優しい作品だった。

小池徹平、三浦春馬
小池徹平、三浦春馬

三浦春馬
三浦春馬

 
family!

キンキーブーツ family!
family!

 
東京公演の当日券情報はこちら。

 
(撮影・文:志田彩香)

 
このレビューを書いたのは

志田彩香
しだ あやか|千葉県生まれ。報道写真家の祖父の影響で、写真を始める。
武蔵野美術大学卒業後、アシスタントを経て、2016年 フリーランス。https://www.instagram.com/shidaayaka_/

 


 
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公演情報

ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」

脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
音楽・作詞:シンディ・ローパー
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版演出協力/上演台本:岸谷五朗
訳詞:森 雪之丞

【出演】
チャーリー・プライス・・・小池徹平
ローラ / サイモン・・・三浦春馬
ローレン・・・ソニン
ニコラ・・・玉置成実
ドン・・・勝矢
ジョージ・・・ひのあらた

飯野めぐみ、白木美貴子、施鐘泰(JONTE)、穴沢裕介、森 雄基、風間由次郎、森川次朗、遠山裕介、浅川文也、佐久間雄生、藤浦功一、佐々木誠、高原紳輔、中村百花、丹羽麻由美、舩山智香子、清水隆伍、加藤潤一

【公演日程】
2019年4月16日(火)~5月12日(日)/東京・東急シアターオーブ
2019年5月19日(日)~5月28日(火)/大阪・オリックス劇場

公式サイト
ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」

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