舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介、白石加代子

”ねずみ男”な佐々木蔵之介が新鮮! あふれる妖怪愛を随所に感じる舞台「ゲゲゲの先生へ」観劇レビュー

舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介、松雪泰子、白石加代子
舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介、松雪泰子、白石加代子 撮影:田中亜紀

”ねずみ男”な佐々木蔵之介が新鮮! あふれる妖怪愛を随所に感じる舞台「ゲゲゲの先生へ」観劇レビュー

【ゲゲゲ】というワードだけで【鬼太郎=水木しげる】て、なりませんか?少なくても自分は文字を見て瞬時にソレを想像し、ポスターの白石加代子さんが目に入るや否や『妖怪?ずるい!こりゃ観たい!!』と思ったわけです(笑)
幅広い世代に影響を与えた水木先生の作品は自分も大好きで、いろんな作品を読みました。さてさて、この舞台はいったいどのような作品になったのでしょう。

舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介、松雪泰子
舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介、松雪泰子 撮影:田中亜紀

ねずみ男をモチーフにした半妖の主人公・根津を、エネルギー溢れる佐々木蔵之介さんが演じると聞いた時は正直、違和感ありました。けど、なんてことない【ねずみ男】でした(笑)。

終始力を抜いた演技をし(この蔵之介さんも新鮮ですよ)、“ふくみ”のある不思議なオーラが奇妙な男を造形。人をバカにしているような、でも寂しさもあり、スーっと人の懐に入って、でも人と距離をつめず、総じて憎めない…書けば書くほどねずみ男!

特に今回憎めないのは、根津の人生を目撃しちゃうから。冒頭から嘘か本当かわからない父親の声が、否応なく観客の善意を否定する、そんな印象を与える。根津という人物に興味を持たせるにはとても効果的な台詞でした。

舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介 撮影:田中亜紀
舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介 撮影:田中亜紀

脚本・演出の前川知大さんの水木しげるワールドへの愛を随所に感じられました。演者のみなさんも登場人物というよりキャラクターだし(このニュアンスわかってもらえるかなぁ…)、毒づいた言葉もユーモアも観ていてニタニタしっぱなし。

近年の演劇は(特に漫画原作ものは)マッピング映像やド派手な照明を使った演出が多くなってる中、アナログな手法に特化していました。音も打楽器を生で演奏したり、影絵を使ったり、“別世界への入口”もフラフープみたいな輪っかを使ったり、そのレトロな雰囲気も水木ワールドにピッタリ!さらに言うなら、とーっても静かなお芝居で、決して物語のテンポも早くない。これは水木先生のアニメじゃなく、漫画を見ればわかります。

舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介ほか 撮影:田中亜紀
舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介ほか 撮影:田中亜紀

聞こえは悪いかもしれないけど、台詞のないコマが続き淡々としているシーンでも、突如として物語が動き出し、急に読み手を裏切る(さっきまで準主役のキャラだと思ってたら死んじゃったり)ことが当たり前で、それが社会に生きる人間への教訓にも繋がったり。
水木しげるワールド初心者は、そういった展開の異質感等も踏まえて本作を観たら楽しめるはず!

舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介、白石加代子
舞台「ゲゲゲの先生へ」佐々木蔵之介、白石加代子 撮影:田中亜紀

自分は少年の頃に水木先生の作品に出逢っていたから“妖怪”を信じ、好きになったかもしれない。水木先生の妖怪愛は僕たちの心に伝染していて、科学が進んだこの時代でも、数値で証明された怪奇現象も【その数値こそが妖怪の証明】なんじゃないかと考えている節があります。

この作品に触れて妖怪たち会えたし、また会いたくなりました!

(文:かみざともりひと

公演情報

舞台「ゲゲゲの先生へ」

原案:水木しげる 脚本・演出:前川知大

出演:
佐々木蔵之介 松雪泰子 水田航生 水上京香 手塚とおる 池谷のぶえ 浜田信也盛隆二 森下創 大窪人衛
白石加代子

2018年10月08日 (月・祝) ~10月21日 (日)/東京・東京芸術劇場プレイハウス
2018年10月27日(土)-28日(日)/松本・まつもと市民芸術館 主ホール
2018年11月2日(金)-5日(月)/大阪・森ノ宮ピロティホール
2018年11月9日(金)-11日(日)/豊橋・穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2018年11月14日(水)/宮崎・メディキット県民文化センター 演劇ホール
2018年11月17日(土)-18日(日)/北九州・北九州芸術劇場 大ホール
2018年11月22日(木)-23日(金・祝)/新潟・りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

公式サイト
舞台「ゲゲゲの先生へ」

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