2018.8.30  17

【役者コラム001】79ヶ月間連続で舞台に立ち続ける女優が実践している台詞覚えの7つのコツ


劇団BDPアカデミー公演 ミュージカル「彼女たち」

役者コラム001「せりふ覚えの7つのコツ」
【役者コラム001】79ヶ月間連続で舞台に立ち続ける女優が実践している台詞覚えの7つのコツ
 

【役者コラム001】79ヶ月間連続で舞台に立ち続ける女優が実践している台詞(せりふ)覚えの7つのコツ

 
エントレ読者の皆様、はじめまして!五條なつきと申します。

私は女性だけの劇団・楽劇座(がくげきざ)に所属している舞台女優で、かれこれ6年以上、毎月舞台に立たせて頂いております。ちなみに、この2018年8月公演で79ヶ月連続・・・。自分でもちょっとびっくりです。

 
そしていきなりですが、こちらの写真をご覧下さい!(文字自体は読みづらいかと思いますが、ご了承下さいませ。)

長ぜりふの例

こちらは楽劇座『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』シリーズで名物となっている、通称「八の字眉幸子のお取り寄せ」という長台詞の一部抜粋です。

・・・そう、これでも一部抜粋です。これが何ページも続きます。このお取り寄せ、シリーズを重ねる毎に長~くなり、今ではほぼ一人で30分近く高速で喋りっぱなしの台詞です(笑)

 
楽劇座はこのような高速長台詞が多く、しかも毎月公演をしているため台詞覚えの期間は3~4日である事がほとんど!よく「台詞ってどうやって覚えてるんですか?」とご質問を頂くので、今回は台詞覚えの方法をご紹介しようと思います!

 
台詞の覚え方に正解はないので、あくまでも私のやり方ではありますが、実は私は1行も(!)台詞が覚えられないところからスタートして、今では長~い台詞もきちんと覚えられるようになりました。

特に「最初はこうしてたけど、今振り返ると失敗だったなぁ…。もっと効率のいい覚え方があったのに!」と感じている事を書かせて頂きますので、まだ台詞覚えのやり方がよく分からない役者さんのヒントになれば幸いです。

 

その1 とにかく「私には覚えられる!!!」と信じる

いきなり精神論・・・?と思われるかもしれませんが、とても大切です。台本を貰って、台詞の量が多いと「こんなの覚えられない!」とプチパニックになってしまう方が時々いらっしゃいます。でも、自分で覚えられないと思ってしまったら絶対に覚えられません。

まずはとにかく「私には覚えられるのだ!!!」と思い込む事が大切。覚える前の、心と頭の準備運動みたいなものです。

 

その2 まずは冷静に台本を読む

よく、台本を貰ったとたんに自分の台詞にマーカーでラインを引く役者さんがいます。もちろんそれでも構わないのですが、マーカーを引く前にまずは1度、冷静に台本を読んでみる事をおすすめします。

なぜ「マーカーを引く前」かと言いますと、マーカーを引くと、どうしても自分の台詞を中心に台本を読んでしまうからです。(なので、私は一切自分の台詞に印を付けなくなりました。)

台本というのは、当たり前ですが自分の台詞だけで成り立っている訳ではありません。この当たり前の事が、「自分の台詞を何とか覚えなきゃ!」と焦っていると見えなくなってしまいがち。

まずは自分の役を忘れて、冷静に脚本を読んで物語の流れや登場人物の関係・役割を理解する。

 
お芝居を始めたばかりの役者さんは意外と忘れがちですが、とても重要なので覚えておいて損はないと思います。ここで台本の構造をしっかり掴んでおくと、台詞も覚えやすいですし、演出家からの指示やダメ出しも理解しやすくなってお稽古もスムーズに進みます。

 

その3 相手の台詞を確認する

いよいよ台詞覚え・・・、といきたいところですが、焦ってはいけません。台本全体が理解出来たら、今度は各シーンや各台詞をより深く理解するためにもう一度読み返します。

その時に私が特に重視してチェックするポイントは、自分の台詞の前後の相手の台詞です。

 
台詞はただテスト勉強のように暗記しようとすると、なかなか覚えられません!なので私はその台詞を言う時の動作や感情、言い方と連動して覚えます。

その時に大切なのは、「自分の台詞は前の相手の台詞によって引き出され、また後の相手の台詞を引き出している」という事。

例えば「バカ」という台詞があったとして・・・、

【台本A】

女「バカ」
男「お前こそふざけんなよ!」
女「何よ、あんたが悪いんじゃない!」

 
という台本と、

 

【台本B】

女「バカ」
男「そのバカと付き合ってるのは誰だよ?」
女「・・・しょうがないじゃん、バカでも好きなんだもん」

 
という台本では「バカ」の言い方がずいぶん変わってきますよね。文字にしてしまうと同じ「バカ」ですが、【台本A】では相手を怒らせるような言い方が、【台本B】では愛情を感じさせるような言い方が必要です。

これは単純な例ですが、台本はこんな事がもっと複雑に入り組んで出来ています。相手の台詞が自分の台詞のヒントになっているわけです。なので台詞を暗記する時は、単に文字として「バカ」を覚えるより、感情や相手との関係を理解しながらの方が絶対に覚えやすいです。

 

その4 動きながら覚える!

さて、台本を理解したらいよいよ暗記に入ります。

その時にオススメなのが「とにかく動きながら覚える」という事! 座りながら頭の中だけで暗記しても、いざお稽古で動き出すと覚えたはずの台詞を忘れてしまう事・・・多いんですよね(笑)

動きながら覚えると、いわゆる「体が覚えている」状態になるので、頭で考えなくても台詞が出てきやすくなります。

 
またまた突然ですがこの方は関口存男さん。ドイツ語学者で青山杉作さんらと共に劇団「踏路社」を立ち上げ、新劇界に多大な功績を残した方です。

関口存男

 
彼は著書『素人演劇の実際』の中で「演劇の台詞と動きの関係は、音楽で言う歌詞とメロディの関係に似ている。歌詞は忘れてもメロディは忘れないように、台詞は忘れても動きは忘れない。」といった内容の事を書かれています。

 
関口存男「素人演劇の実際」

 
これは私も経験があって、舞台で頭が真っ白になっても体が動きを覚えているとポンっと台詞が出てくるんですよね。

「暗記してから動こう・・・」と座って暗記して、なかなか台本を離せない方も多いかと思いますが、実は台詞と動きをセットにして最初から動いてしまった方が覚えやすいですよ!

 

その5 「脳内シミュレーション」で思い出す練習をする

暗記した!と思っても、また忘れてしまうのが人間です。なので、大切なのは「思い出す」練習をする事。
「思い出す」練習はすればするほど、覚えた台詞が定着していきます。

お家では稽古場のように大きな声を出したり、実際に声に出して練習する事が難しいという方も多いと思いますが、そんな時はぜひ「脳内シミュレーション」をしてみて下さい。

その時に、ただ自分の台詞だけを頭の中で思い浮かべるだけでは効果半減!

・舞台の状況
・相手役の台詞と動き
・自分の動きと感情

などなど…「実際に舞台に立っているかのように」思い浮かべてシミュレーションすると、あら不思議!しっかり頭に台詞が定着してくれます。更に、台詞だけでなく演出で指定された動きや表情も一緒に覚えられるので一石二鳥です。

ただし・・・、

※脳内シミュレーションの注意点!

自分のイメージを固めすぎると演出家の指示に従えなくなってしまうので、注意が必要です!演出家や共演者に合わせられる余白も残した上でシミュレーションしておきましょう。

 
上手くシミュレーション出来ない場合でも、スポーツと同じで経験を積むと「舞台のカン」のようなものが鍛えられるので、だんだん余白を残すシミュレーションの仕方が分かってきます。逆に経験がないとなかなか掴めない感覚なので、まずは「自分で固めすぎない」と頭の片隅に置いてチャレンジしてみて下さい。

 

その6 台詞を自分のものにする

そしてようやく台詞を覚えたらOK!・・・ではありません。

台詞を覚えただけでは、台詞を使う事は出来ません。例えば、学生の勉強でもテスト前に単に「覚えただけ」の知識はその時だけのもので役立ちませんが、しっかり理解して「自分のもの」にした知識はずっと覚えていたり、応用問題が出た時にその知識を使って答えを導き出したり出来たはずです。

 
覚えた台詞は「自分のもの」にしなければいけません。単に「暗記した」だけの台詞は、演出が変わって違う言い方を指定されたり、舞台上で何らかのトラブルが発生した時にビックリするぐらい簡単に言えなくなってしまいます。

もしお稽古中に悩む事があったら、台詞を覚えた後でも、何度も「脳内シミュレーション」をしておく事、台詞を覚えた後も台本を読み返して基本に戻ってみる事。

台詞を「自分のもの」にしてしまえば、舞台は本当に楽しくなります。

 

その7 本番がある

台詞を覚えたいと思っている方の中には、実際に舞台の本番が決まっている方と、本番ではないけれどお稽古事や演技レッスンのために台本を覚えるという方がいらっしゃると思います。

本番が決まっている方は、台詞を覚えないと大変な事になってしまうという責任があるので、意外と覚えられます(笑)

やっかいなのは、お稽古事やレッスンのために台詞を覚えている方です。一緒にレッスンを受けている仲間が台詞を覚えていなかったり、何よりお客様がいない=責任がないので、どうしても甘えが出てしまいます。

なので、お稽古やレッスンも「本番」という意識を持つ事。それが難しければ、家族や友人に「この日までに覚えるから、見て!」と宣言して自分の本番を決めてしまうのも有りかもしれません。

人間って、やっぱり誰かの目の前で演じる「本番」という期限を設定すると、そこに向けて頑張れるんです。

 


まとめ

最近、本当によく質問を頂く「台詞の覚え方」について、私なりのコツを書いてみました。

「あんなに長い台詞、どうやって覚えてるんですか!?」とお客様からお伺いされる事もあれば、新人さんから「どうしても台詞が覚えられないんです・・・」と相談される事も。

役者をやりたい以上、台詞覚えからは逃げられません(笑)台詞を覚えるのは確かに大変ですが、1度覚えてしまえば自由に演技できるので、お芝居が一気に楽しくなります!

 
私も、台詞が1行も覚えられなくて泣いて悩んだ事もありました(笑)でも、そんな私でも試行錯誤を重ねて今では長台詞をきちんと暗記出来るようになったので、コツを掴んで頑張れば、絶対覚えられるようになります。

 

演劇は奥が深くて、やればやるほど面白さと難しさが分かって終わりがありません。台詞が覚えられずに悩んでいる状態は、レストランでハンバーグを頼んだのに付け合わせのお野菜しか食べていないようなものです。もっと美味しい部分があるのに、本当に勿体無い!!

私の経験が、少しでも台詞が覚えられなくて悩んでいる方の参考になれば幸いです!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 


 
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(文:五條なつき ※文章・写真の無断転載を禁じます)

この記事を書いたのは

五條なつき
ごじょう なつき|舞台女優。楽劇座(がくげきざ)所属。
2012年より6年間、毎月様々な作品で主演として舞台に立ち続けて現在も記録更新中(2018年8月現在79ヶ月連続出演)。代表作は2.5次元メルヘン劇場『マカロンちゃんの憂鬱』マカロン役、『ルーシー・フラワーズは風に乗り、まだ見ぬ世界の扉を開けた』ルー役など。長台詞の覚え方や舞台メイクの講師も務める。

 

 

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