舞台「家族の基礎」舞台写真

みんなが必死に生きていた!舞台「家族の基礎」観劇レビュー

舞台「家族の基礎」舞台写真
舞台「家族の基礎」舞台写真 撮影:柴田和彦

みんなが必死に生きていた!舞台「家族の基礎」観劇レビュー

劇団☆骸骨ストリッパーのかみざとです! 実はこれまでタイミングが合わず初めて倉持作品を観させていただきましたが、かなり好みでした! というのを前提に綴っていきます

松重豊さんが演じるお父さん

松重豊さんが演じる大道寺尚親
舞台「家族の基礎」舞台写真 撮影:柴田和彦

「プレミアムうまい棒」を食べても、「大人のきのこの山」を食べても、結局は昔に慣れ親しんだ定番の味を求めてしまう傾向があるなぁ…としみじみ感じていた今日この頃。松重豊さんが演じる大道寺尚親は、そんな自分と似た懐古主義を背負った人物、という印象でした。

冒頭の回想シーンから、少年期に輝いていた小さな世界が彼のすべてで、その理由は家族の愛情の欠如からそうなってしまった ― 始めはよくわからなかったタイトル『家族の基礎』は、そんな彼が必死に家族を作った物語と謎解けました(※勝手に納得してるだけです)

舞台「家族の基礎」舞台写真
舞台「家族の基礎」舞台写真 撮影:柴田和彦

だからね、開幕と同時に流れるテーマ曲も懐かしさを感じたし、同時に切ない感じもあり、とても“コメディ”が始まるとは思えなかったんです。いや、個人的には全然コメディに感じなかったと断言しておきます! 決して否定しているわけじゃないんです。同じように感じる人のために代弁したいし、コメディに興味がない人にはむしろ観てもらいたい。

もちろん終始笑いは散りばめられて、客席ではニタニタ&クスクスしてましたよ。日本語の微妙なニュアンスのズレを使ってボディブローのようにじわじわ効かせてくるし、ダチョウ倶楽部のように前フリをしてからベタな裏切りをする展開の見せ方は物語を軽快にして心地良い!

鈴木京香さんが演じるお母さん

舞台「家族の基礎」舞台写真
舞台「家族の基礎」舞台写真 撮影:柴田和彦

個々のキャラも強烈で愛くるしく痛々しい(笑) 鈴木京香さんが演じる須真は、みなさまの人生において「あぁ~、いるいる、こういう天然な人!」と感じさせる人物。自分も見ながら『(同期の)中村さんだぁ…(後輩の)越智さんそっくりだぁ…』と何度呟いたことか。

須真の暴走っぷりはとても可愛く笑えますが、そんな彼女と尚親が運命の出逢いを果たします。真っ直ぐな尚親の行動と、ロマンチスト(思い込みが激しい?)な須真のダンスはとってもキュート。メリーゴーランドのように美術も展開し運命が回り出します。うまくいくことを望んで観ていたけど、どうやら“おかしなふたり”が築く未来は複雑な家庭へと繋がっていたようで…

まぁ、とにかく出てくる人物がみ~んなズレてます! 長男はやたら怒ってるし、負けじと長女も尖がってるし、その息子は○○だし(笑) ズレた家族を描いた衝撃的な映画『カタクリ家の幸福(日本版)』を思い出しながら、愛くるしく応援してました。

みんなが必死に生きていました!

舞台「家族の基礎」舞台写真
舞台「家族の基礎」舞台写真 撮影:柴田和彦

いつしか舞台の上で必死に生きる人物たちに感情移入してしまい、先にも書きましたがコメディというより“人間ドラマ”というカテゴリーで観てました。自分もよく変わり者だといわれるので、出てくる変わった人たちが“日常というズレ”によってうまくいかなくなる様が、寂しくなったわけです。大道家の人々は、みんなが必死に生きていました!

本作は9月28日(水)までシアターコクーンで上演。
その後、愛知、大阪、静岡でも上演されます!

(文:かみざともりひと

公演情報

舞台「家族の基礎」

作・演出:倉持 裕

出演

松重 豊、鈴木京香
夏帆、林 遣都、堀井新太、黒川芽以、山本圭祐、坪倉由幸、眞島秀和、六角精児
長田奈麻、児玉貴志、粕谷吉洋、水間ロン、山口航太、近藤フク

2016年9月6日〈火〉~9/28〈水〉/東京・Bunkamuraシアターコクーン
2016年10月1日〈土〉、10月2日〈日〉/愛知・刈谷市総合文化センター 大ホール
2016年10月8日〈土〉~10月10日〈月・祝〉/大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2016年10月16日〈日〉/静岡・浜北文化センター 大ホール

舞台「家族の基礎」 公式サイト

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