2016.8.9  10

樋口一葉さんに会いたい!井上ひさしイズムが息づく「頭痛肩こり樋口一葉」観劇レビュー


舞台「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真
「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真 写真提供:東宝演劇部 若村麻由美と永作博美
 

樋口一葉さんに会いたい!井上ひさしイズムが息づく「頭痛肩こり樋口一葉」観劇レビュー

 
“作・井上ひさし、演出・栗山民也”、これを野球で例えるなら王貞治と星野仙一がタッグを組んだほどのインパクトなのに、出演女優の顔ぶれの豪華さを見るや否や、野茂英雄・松井秀喜・イチローetcとプロ野球ドリームチーム結成ぐらいの最強感!

2軍にも上がれない小童、劇団☆骸骨ストリッパーのかみざとが生意気にも筆を取らせていただきます。

 

開演前から明治時代

舞台「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真
「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真 写真提供:東宝演劇部

今回は初日を観劇させていただきました。やはり舞台はお客様が入ってこそだなと噛みしめました。というのも、関係者ばかりが集まるプレビュー公演なんかは、みんな偵察に来ているようなもの。残念ながら客席はとても静か…呼吸してないんじゃないか?ってくらい(笑) きっと演者もやりにくいはず。いや、仕事なので真面目に観劇されてるんでしょうが。

舞台「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真
「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真 写真提供:東宝演劇部 熊谷真実と永作博美

それに比べて賑やでした、初日の客席! 慣れ親しんだ空間に遊びに来ているような柔らかい雰囲気。開演を心待ちにしている目。そのほとんどが年配の方。着物で来ている人が何人も!『サザエさん』のおフネさんを思い出します(笑)

自分なんて観劇に行くのにユニクロのTシャツですよ。わざわざ着物に着替えてお洒落して観劇に行くなんて、【楽しみに行く】という能動的な感じがして、すごく素敵だなと感じちゃいました。ましてや残り少ない人生を、芝居という娯楽に費やすなんて、実に風情があるなぁ、な~んて不謹慎にも思ったり→こういった冗談をちゃんと笑える方々ばかりだったことは次の章で。

そして、この作品の背景は明治時代。客席の着物までが世界観に引き込む手助けをしていました。※ちなみに8月11日~16日に浴衣や着物で観劇に行くと、特製うちわがもらえるそうですよ!

 
定刻になり、じんわり時間をかけて照明が落ちていき、仏教的な雰囲気の音楽で、幽界(あのよ)と明界(このよ)の狭間に誘われていきます。


 

骨の髄まで井上ひさしイズム。

舞台「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真
「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真 写真提供:東宝演劇部 愛華みれ と 三田和代

冒頭から可愛い子供たちの登場で、あっという間に会場は和みます! キャスト表を見てもらえればわかりますが、出演者に子供はいません。てことは…わかりますよね? 子供にはできないだろう子供の演技を、大女優たちがうまく表現してます。いやぁ、可愛かった!
生意気そうなのから、大人しそうなのまで。自分は観たことないけど、森光子さんの『放浪記』もこんな感じだったのかなと、勝手に思っちゃいました。

こういった表現や、井上先生の構成で笑いが起きるのはとてもわかりやすいんですが、この客席それだけでは留まりません。人の不幸は蜜の味とばかりに、巻き起こる不幸や、必死に生き抜く人たちの姿を見て、みんな笑ってます。しまいにゃ人が死んでも笑います(笑)

舞台「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真
「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真 写真提供:東宝演劇部 永作博美と若村麻由美

きっと自分が台本だけを読んでいたら、切なくなったり怒りたくなってたんだろうなぁ、というシーンです。これは一種の逆ジェネレーションギャップ!

なぜ笑いが起きるのかも理解できるんですよ。よくある例えでいうなら、冷蔵庫に置いてた妹のプリンをお兄ちゃんが食べて喧嘩になって怒られる、ってのを客観的に観たときに【よくある日常の光景】として笑えちゃうのと同じです。

客席のみなさまの経験値の高さが、劇中で起こるすべての出来事を笑いに変えちゃうんです。…人生も終わりに近づくと悟りを開いて楽しく過ごせるってことなんですかね? 自分にはまだ先の話かもしれません。(綾小路きみまろ調)

 
そして井上先生が“人の面白さ”を狙っているのも、観劇後にはよくわかります。一生懸命に生きている人たちの姿を洗練された言葉で描き、栗山さんもその意図を明確に表現する。
全体的には繊細な演出だけど、演者に“真剣になりすぎない演技”を求めて“笑い”であることを提示させてるし、演者もそれに応えつつ丁寧に感情を重ねていく。もう会場丸ごと井上ひさしイズムだなと感じました!


 

樋口一葉さんに会いたい!

舞台「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真
「頭痛肩こり樋口一葉」舞台写真 永作博美

製作発表で熊谷さんが『中野八重という役は樋口一葉さんの主人公を凝縮した役』(エントレ動画参照)と仰ってました。それがよくわかる波乱万丈な役でしたが、“彼女等”にもう一度会いたくなりました。
勉強嫌いな自分は樋口一葉さんのことはほとんど知りません。だからこそか、帰りながら今年の夏の読書は樋口一葉にしよう、と決めました。読んだらきっと、もう一度会いたく(観たく)なるんだろうなぁ。それほど樋口一葉さんのことを知りたくなる作品でした!

 
冒頭にも述べたように最強チームです。わざわざ内容に触れなくても面白いのはわかるはず! けっして恐れをなして“筆が止まった”なんてことはないんだからね!(汗)

最近はもっぱら照明音響ガンガンのエンタメ作品が多かったので、久しぶりに落ち付いた作品を観ました。自分にとっては文学作品です。
日本らしい空気感や間の使い方、シンプルに考え抜かれた美術や風鈴の音、内容もお盆や幽霊ってのも相まって、猛暑続く夏に涼風を感じる“納涼劇”でした!

本作は日比谷シアタークリエで 8月25日(木)まで!
 

(写真提供:東宝演劇部 文:かみざともりひと)

公演情報

東宝・こまつ座提携特別公演「頭痛肩こり樋口一葉」

作:井上ひさし
演出:栗山民也
音楽:宇野誠一郎

出演:永作博美 三田和代 熊谷真実 愛華みれ 深谷美歩 若村麻由美

2016年8月5日(金)~8月25日(木)/東京 日比谷 シアタークリエ

舞台「頭痛肩こり樋口一葉」 公式サイト
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