
ピアフの人生そのものを浴びている感覚 大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』観劇レビュー

大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』
大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』観劇レビュー
200回の上演を達成した舞台『ピアフ』。2011年の初演から数えて今回で6度目の上演となるが、これほど長く繰り返し上演されてきたのは、ただ人気があるから、という理由だけでは続かない。その背景には、作品と真正面から向き合い続けてきた出演者たちの覚悟と情熱があるにちがいない、そんなことを思いながら初めて観劇してきました。

大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』
エディット・ピアフ はフランスを代表するの有名な歌手、という程度の知識しか持っておらず、本作は新鮮な気持ちで観たいという気持ちもあって予習もせず。『ピアフ』初心者がどう感じるかを素直にレビューしたいと思います。ネタバレもあるのでご注意ください。
華やかなショーが始まるのかと思いきや予想は大外れ。舞台は、栄光の瞬間ではなく、マイクの前で倒れるピアフの姿から始まる。そしてそこから遡るように描かれていく、彼女の人生。貧困の中で育ち、裏通りで歌い、心を許せる友人は娼婦たち。下品で遠慮のない会話があまりにも自然で、芝居というより“その場の生活”を盗み見ている感覚。「こんな環境からスターになるの!?」と驚きの連続。

大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』
印象に残ったのは、戦争から戻った兵士たちに対する接し方。身体を差し出すことも、彼女にとっては特別な行為というより、痛みを抱えた相手に向けた“愛”だったように見えた。描写としては苦手だったけど、ピアフという人物を知るうえで避けて通れなかったと思う。 彼女の生き方は決して綺麗ごとじゃない。素行がいいとも言えない。でも、それ以上に、異様なほど“愛”に向かっていく人ということだけは強烈に伝わってくる。

大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』
ピアフを見出した人物ルイの死を描く場面も強烈だった。悲しみをただ声高に泣き叫ぶのではなく、言葉を失い、彼女は歌う。その歌が続くほどに彼女の痛みが伝わり、観客の感情も静かに、確実に揺さぶられていく。「舞台は役者のもの」という言葉の真意。気づけば作品を“観ている”というより、大竹しのぶさんを通して、エディット・ピアフという人間の人生を追体験している感覚に包まれていた。

大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』
作中で時代は目まぐるしく移り変わり、登場人物も次々と現れるため、「今はいつ?この人は誰?」と一瞬戸惑うこともあるけど、ピアフの存在を軸にして観ていると、大まかな時代背景や関係性が自然と入ってくる。その中で何度も恋をし、何度も別れ、孤独を恐れながらも、結局は孤独の中に身を置いてしまう。その生き方に共感できるかと問われたら、正直、「はい」とは言えない。でも、理解はできるし、心は確実に揺さぶられた。彼女の歌は、美しいというより生々しく、旋律を聴いているというよりピアフの人生そのものを浴びている感覚。

大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』
6度も上演されてきた『ピアフ』。それぞれの時代ごとに違う魅力が積み重なってきて「今が一番のピアフ」と思える。一方で、過去の上演のピアフも、いま生で観てみたかったな、という欲も湧いてくる(笑)。 観帰り道、自然とピアフの曲を聴きながら、彼女の人生を調べていました。 3時間では到底描ききれない背景があって、それを知るほど、舞台で観た光景が立体的になっていく。ピアフをよく知っている人ほど発見が多く、知らない人ほど強烈に刻まれる。そんな、観る側の立ち位置すら問いかけてくる強烈な後味を残す舞台でした!
(文:かみざともりひと)
大竹しのぶ主演 上演15周年記念公演『ピアフ』
【作】パム・ジェムス
【翻訳】常田景子
【演出】栗山民也
【出演】
大竹しのぶ
梅沢昌代、彩輝なお、廣瀬友祐、藤岡正明、上原理生、山崎大輝、川久保拓司、前田一世、土屋佑壱、小林風花
2026年1月10日(土)〜1月31日(土)/東京・日比谷シアタークリエ
2026年2月6日(金)〜2月8日(日)/愛知・御園座
2026年2月21日(土)〜2月23日(月祝)/大阪・森ノ宮ピロティホール

