
地域演劇の輝きを次世代へ――イチニノ「RE-PLAY」プロジェクト第2弾、故・河野ミチユキ作『アクワリウム』を茨城・熊本で再創造

イチニノ2nd RE-PLAY『アクワリウム』
茨城県を拠点とする演劇チーム「イチニノ」が手掛ける地域演劇再演プロジェクト「RE-PLAY」の第2弾として、故・河野ミチユキ氏の代表作『アクワリウム』を上演する。水俣病をモチーフにしながらも普遍的なテーマを描く。2026年1月に茨城、2月に熊本で上演。演出はイチニノ代表の前島宏一郎が担当する。
イチニノは2015年の設立以来、「地域で生まれた演劇作品を全国に届ける」というコンセプトのもと活動を続けてきた。
地域演劇は、その地域の歴史や風土、人々の思いを映す重要な文化活動でありながら、記録や再演の機会が限られているという現状がある。「RE-PLAY」プロジェクトは、各地域で生まれた貴重な演劇作品が埋もれてしまうことへの危機感からスタートした。
「RE」には「REgional(地域の、地域による)」と「RE-creation(再創造)」の意味が込められており、単なる再演ではなく、地域の文化資源として作品の本質を再び示すための試みとなっている。
第1回には刈馬カオス作『異邦人の庭』が上演され、今回、第2弾として故・河野ミチユキ氏の代表作『アクワリウム』が選ばれた。
作者である河野ミチユキ氏は熊本県出身の劇作家で、2001年に劇団0相(現・ゼロソー)を旗揚げ。2010年には『義務ナジウム』で九州戯曲賞佳作、2015年には『チッタチッタの抜け殻を満たして、と僕ら』で九州戯曲賞大賞を受賞するなど、地方から全国へと影響力を広げた才能だったが、2022年に他界した。
河野氏の作品を上演するにあたり、前島代表は「単なるオマージュではなく、地域の宝として、現代に通じる問いかけとして作品を再解釈する」という姿勢で臨む。遺族の理解と協力を得て正式に上演権を取得し、稽古が進められている。
物語
化学工業都市として一時代を築いたが今はその面影もない、とある海辺の町、阿玖市。阿玖は孤立していた。戦後から稼動する地域産業を一手に担っていた企業「ニッカ(株)」の工場群は現在も残り、今でも地域住民の約1割がなんらかの形でこの企業に関わっている。10年ほど前、ニッカの多大な助成を受けて市は水族館を建設。地元民への就職場所の提供という意味もあった。水族館はこの町の大きな観光資源となり、イルカの奇妙なパフォーマンスなども手伝ってにわかに賑わう新時代の阿玖…阿玖市民でもある「水族館職員」を中心に繰り広げられる、共同体の歪みに身を沈めたりあるいは浮き上がりかけたりする人々の物語。
前島代表は「水俣病という地域の歴史的課題をモチーフとして取り扱いながらも、その根底には人間社会の普遍的な問題が描かれている。これは地域演劇だからこそ描ける視点であり、全国に共有すべき価値がある」と指摘する。
公演は、茨城公演が2026年1月17日(土)と18日(日)に小美玉市四季文化館(みの〜れ)風のホールで、熊本公演が2月7日(土)と8日(日)に熊本市男女共同参画センターはあもにい多目的ホールで開催される。
公演詳細は公式サイトへ
https://www.ichinino.com/re-play/アクワリウム/
クラウドファンディング 実施中
なお、公演実現のため、クラウドファンディングが12月31日まで実施されている。クラウドファンディングのページでは、イチニノがこの企画に取り組む経緯や、現在の活動を行うことになった背景が描かれているほか、河野氏やイチニノにゆかりのある全国の地域演劇人からの応援メッセージが随時追記されている。
クラウドファンディングサイトはこちら。
https://camp-fire.jp/projects/877632/view
(文:エントレ編集部)
イチニノ 2nd RE-PLAY『アクワリウム』
【作】河野ミチユキ
【演出】前島宏一郎
【出演】
市川サクヤ(TEAM虹色の箱舟)
梅木彩羽(イチニノ)
岡田淳子
親鳥ヒナ(Inception)
小島優花(LEADERS ENTERTAINMENT)
佐藤ホームラン(バカバッドギター)
やべあい
山田夕可(ゼロソー)
トクトミヒロタカ(DOGANG)
【公演日程】
茨城公演
2026年1月17日(土) 19:00〜
2026年1月18日(日) 11:00〜/15:00〜
【会場】小美玉市四季文化館(みの〜れ)風のホール
熊本公演
2026年2月7日(土) 19:00〜
2026年2月8日(日) 11:00〜/14:30〜
【会場】熊本市男女共同参画センターはあもにい多目的ホール

