人間と記憶と記録が「おちあう」物語。多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 2025年度卒業制作『人畜音記』を2026年1月に上演

『人畜音記』メインビジュアル
多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 2025年度卒業制作『人畜音記』メインビジュアル

『人畜音記』・・・人間と記憶と記録が「おちあう」物語。

多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 2025年度卒業制作『人畜音記』が2026年の1月16日(金)から18日(日)まで、多摩美術大学の上野毛キャンパス(世田谷区)にて上演される。

『人畜音記』は劇作を日髙来哉、演出を安藤優が務める。多摩美術大学で過ごした4年間の集大成として、二人が紡ぐ言葉を、12名のキャストが演劇公演として奏でる。

多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科は、上演芸術の創作と研究を世界に向けて発信する学科。<演劇舞踊コース>と <劇場美術デザインコース>があり、コースごとの専門性を深めると同時に、合同授業を通じて交差し合いながら上演芸術を学ぶ。
美意識ある俳優、ダンサー、演出家、劇作家、舞台美術家等を将来像とし、上演芸術を総合芸術として捉え、誰も見たことのないオリジナリティ溢れる創作を追求。授業は、イメージ豊かな表現力や造形力を修得する徹底した実践性に重きをおき、表現者たることの畏れと、これからの文化の担い手たることの責任を自覚することを促します。上演芸術界の第一線で活躍する教員が、これからの上演芸術を切り開いていく豊かな人材を育成していく。(演劇舞踊デザイン学科WEBサイトより)

演劇舞踊デザイン学科 2025年度の卒業制作は全17企画。
『駆け抜けろ、17(セブンティーン)』というスローガンのもと、学びの集大成として、さまざまな公演や展示が開催される。

『人畜音記』あらすじ

「生き方よりも死に方を選びたい。」と男は言った。
「人畜生め‼︎酒のんで氷で頭冷やせ‼︎」と女は言った。
恥ずかしいことにそれは海底に沈みゆく男女の姿であった。淋しいひと程あたたかいのです。
だから老夫婦はその表情がいつだってあたたかいことが多いのです。孤独とは訳の違う。優しいことなのです。
人生が記憶として進むならそれだけでいいのですが、記録として進みゆくならもっと冷徹な孤独も必要で、それは思春期なんかがそうでしょ。そうして最後には音のような目に映らないものとなって死ぬすんでのところまで、液体の揺籠ゆられてゆっくりとゆっくりと只恋しいだけの貴方とゆっくりゆっくりとおちておちて。おちて。

 

劇作家:日髙来哉よりコメント

“私の祖母はあまり喋らない人でした。祖母の家が好きで、ツマベニチョウの標本を一緒に作ったりなんかもしました。
心の中に自分だけの小さな庭園を育てているような人で、暖かな時間が過ぎているのを感じました。今作は人の音、その記憶と記録です。普遍性を安易に打ち壊そうと思いましたが狙って出来ることでは無いから諦めました。今回が正しいとかどう着地するか私には皆目見当がつかないです。記憶と記録を対極のようで近接したものという狡猾な二分論を企てた私をどうか赦して下さい。私の信じる神様は私の内にしかおりません。信じていると聞こえてきました。足音。馬が流氷を駆ける足音。信じていれば。誰といれば。死を受け入れることが出来るだろうか。一緒に生きるとはなんでしょうか。”

日髙来哉 / Raiya Hidaka
劇作家、俳優。
2002年生まれ、鹿児島県出身。
幼少の頃から芸能活動に親しみ、現役美大生ながら劇作家・演出家・俳優とし
ても活動している。主に日本の歴史や純文学にフォーカスを当てながら、人間
の敏感な心情の移り交わりを現代劇として描く。
2023年8月に古着屋HOOKIを発足。
2024年7月には同大学で出会った仲間と創作カンパニー〈人となり〉を結成。
旗揚げ公演『番』では作・演出・出演を努め、全回満員御礼の成功を収めた。

 

演出家:安藤優よりコメント

“人間にはたくさんの穴が空いています。目も耳も口も穴。わたしにも、なんだかぽっかり。多摩美で過ごした4年間。話して、寄りあって、見つめて、見つめられて。いろんな形の穴があって。そこから発せられる表現の交々が、うつくしいと思いました。だいすきなひとに、たくさん出会いました。その記憶の一粒一粒が、歩みを進めるたびにおちていきそうな人生を記録する勇気になっています。
この演劇は、人間の記憶と記録が「おちあう」物語です。記録した瞬間に記憶に変わるできごとたちがおちあう、人間レコード。いま、戯曲に拡がる、うそみたいな夜空のうつくしさを、脆い流氷に寝そべって、じっと見つめています。夜空にぽっかりと浮かぶ星たちと目があうと、言葉が生き生きと輝き始めます。”

安藤優 / Yu Ando
演出家、作家、俳優。
2002年、東京都台東区生まれ。
舞台芸術のもつ、刹那的な美しさを作品に込め、創作を行う。登場人物の主観
を拡張し、〈精神世界〉と襲ってくる〈現実〉を、混在させた心象風景の描写
を試みる。
俳優を愛する演出を、目指している。
自由奔放な表現が特徴。

 

メインアドヴァイザー:糸井幸之介よりコメント

“その昔FUKAIPRODUCE羽衣という劇団がありました。
そこには深井さんと糸井くんというナイスペアがおりました。
安藤さんと日髙くんもナイスペアです。
もっと現代的な、令和のナイスペアです。
安藤さんは演出家、日髙くんは劇作家です。
もうこれは、日本の演劇史的にいえば、蜷川幸雄さんと清水邦夫さんくらいのナイスペアになっちゃうかもしれません。
観念的ナイスペアといえば、エロスとタナトスがあります。
安藤さんと日髙くんの生み出す世界にはエロスとタナトスの両方が漂っています。
エロスとタナトスが、人間の中で常にせめぎ合っているものと考えると、芸術作品は以下の3通りに分類されます。
エロスもタナトスもない→三流作品
エロスのみある、あるいはタナトスのみある→二流作品
エロスもタナトスも両方ある→一流作品
というわけで、こちらの公演『人畜音記』はまだ誰も知らない一流作品に出会える(かもしれない)、ビッグチャンスです。”

糸井幸之介 / Yukinosuke Itoi
多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 准教授。
劇作家・演出家・音楽家。
芝居と音楽が融合した作風を、妙―ジカル(妙なミュージカル)と称し、独自
の音楽劇を創作している。
主な作品に、FUKAIPRODUCE羽衣『プラトニック・ボディ・スクラム』、
木ノ下歌舞伎『心中天の網島』などがある。

 

さらなる詳細はオリジナル公式WEBサイトにて公開中。

(文:井上花音 監修:エントレ編集部)

公演情報

多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 2025年度卒業制作『人畜音記』

【作】日髙来哉
【演出】安藤優

【出演】秋山エドガル、石野凜華、石橋智子、岡﨑毬紗、小沢日菜、草野浩世、駒井珠里、澤田千紘、鈴木耀介、原田花楓、藤田敦也、三輪栞子

【舞台美術プラン】孫悦
【舞台監督】川崎夢月
【大道具製作】加藤仁子、森田凛々子、中曽
【衣裳プラン】新井涼香
【衣裳製作補佐】草部真彩
【被り物製作】森絢子
【照明プラン】杉浦千尋
【照明オペレーション】石橋美紗
【音響オペレーション】永田那由多(演劇舞踊デザイン学科8期卒)
【宣伝美術】秋山エドガル(統合デザイン学科8期卒)
【制作補佐】駒井珠里、原田花楓
【制作】井上花音(演劇舞踊デザイン学科7期卒)
【主催】多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科

公演日時
2026年1月16日(金) 12:30開門/13:00開演
2026年1月16日(金) 17:30開門/18:00開演
2026年1月17日(土) 12:30開門/13:00開演
2026年1月17日(土) 17:30開門/18:00開演
2026年1月18日(日) 12:30開門/13:00開演
※各回約120分間の上演を予定
※開場・受付開始は各開演30分前から
※各公演「開門」のパフォーマンスがございます。

会場
多摩美術大学 上野毛キャンパス A棟 演劇スタジオ(スタジオS)
〒158-8558 東京都世田谷区上野毛3-15-34
東急大井町線「上野毛駅」下車、環状8号線沿い(瀬田方面)に徒歩3分。
東急田園都市線「二子玉川駅」下車、徒歩12分。

チケットご予約受付中!(トロクレチケットより取扱)
https://trkr.jp/ticket?p=zinchikonki

座種・料金(税込)
前売券〈桟敷席〉 2,000円
前売券〈椅子席〉 2,000円
当日券 2,500円

*未就学児入場不可
*本公演では受付入場順の自由席を予定しております。
*鑑賞にあたってサポートが必要な方は事前に本公演制作部までご連絡ください。
*開演時間を過ぎますとお席にご案内できない場合がございます。
*本公演の上演に際して、場内の一部エリアを土足厳禁とさせていただきます。

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