舞台『浪人街』

長髪丸ちゃんの色気と殺陣に酔いしれる!舞台『浪人街』観劇レビュー

舞台『浪人街』オフィシャル写真

主演はSUPER EIGHTの丸山隆平さん、共演に玄理さん、板尾創路さん、藤野涼子さんと個性豊かな顔ぶれで、本格時代劇に挑みます!脚本は倉持裕さん、演出は一色隆司さんが手がけます。今記事では本作の囲み取材と観劇レビューをお届けしていきます!

あらすじ
舞台は安政時代の江戸の町。藤兵衛(佐藤誓)が営む飲み屋にはやくざ者、夜鷹、浪人といったはみ出し者たちが集い、毎晩酒を酌み交わしていた。新顔の浪人・源内(丸山隆平)は店の支払いを巡り、用心棒である赤牛(⼊野⾃由)と刀を合わせる事態に。そこへ浪人の母衣(⼊江甚儀)が仲裁に入り、その場を収めるのであった。
店の常連で巾着切りのお新(玄理)は実は源内と顔なじみで、いつも弄ばれ金をたかられているのだが、源内に惚れ込んでいるためきつく当たりながらも縁を切れずにいた。
一方、浪人たちが暮らす寂れた長屋に住む孫左衛門(板尾創路)と妹のおぶん(藤野涼子)は、以前はれっきとした武士であったが没落し、お家再興のために必要な印籠も質屋に流してしまい、物乞いをして食いつなぐ日々を過ごしていた。
そんな日々の中で事件は突然に起こる。藤兵衛が殺されたのだ。実は旗本の小幡伝太夫(神保悟志)とその弟の七郎右衛⾨(⽮柴俊博)が屋敷の裏売買を有利に進めるため、藤兵衛に盗みの冤罪を擦り付け殺したのであった。父同然であった藤兵衛の復讐に燃えるお新だったが…

幕末の揺れ動く時代に生きる人々の生活や心情を描きながら、本格時代劇の重厚感もあり、静と動のバランスがとれた作品でした。また、それぞれのキャラクターがはっきりしていて、ストーリーもわかりやすく観やすい舞台だと感じました。タイトルが『浪人街』というだけあり、今作には様々な浪人が登場します。それぞれタイプが異なり、その奥にある背景を考えると奥深い人間ドラマを感じました。

舞台『浪人街』オフィシャル写真

まず、主演の丸山隆平さん(本文では親しみを込めて丸ちゃんと呼ばせていただきます)の長髪のお着物姿が想像していた以上にお似合いで驚きました。丸ちゃんの色気が駄々洩れしていて、普段見られない姿なので、これだけで観る価値があります!また、序盤の玄理さん演じるお新との絡みにはドキッとさせられ、艶っぽい大人の魅力を感じました。絡み方の理由はさておき…(笑)。殺陣のシーンではトレードマークのニコニコスマイルから凛々しい表情に切り替わる姿がカッコよくギャップがありました。丸ちゃん演じる源内はお酒好きの浪人でろくでなし感が否めませんが、終始お酒に酔いながらも剣術の腕は一級品で敵を唸らせる程の実力を発揮します。その姿は酔拳の使い手ジャッキーチェンを彷彿とさせるようで、おちゃらけた部分もあり、似てないようで丸ちゃんらしさも垣間見える役柄でした。
根なし草のように生きる源内は、お金もないのに酒を飲み、3年ぶりに戻ってきたかと思ったら、お新に金をせびるようなヒモでした(笑)。常に千鳥足で、違う女の子を連れていて…呆れてしまうほどのくずキャラでびっくりしました(笑)あっちにフラフラ、こっちにフラフラで真意がわからず理解しがたい言動に正直イライラします(笑)。しかしながら、風のように掴めず、何を考えているのかわからない部分がミステリアスで、過去のあれこれを知ると、そのように振舞ってしまうのもわかる気もして…(飲んでいないとやってられなかった日々…)「自分だけはこの人を理解してあげられる」「自分がいないとこの人はダメなのかも」と思い、離れられないお新の気持ちもわかるような魅力がありました。お新はダメ男ほいほいと自覚しているようで、いつの時代もこのような男女の関係はあるのだなと感じました(笑)

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お新は「あれこれと思いを巡らせたくなる女」という表現がぴったりでした。快活で芯のある美人でありながら、どこか影がある様子は女性から見ても艶やかで魅力的でした。玄理さんの凛とした美しさと発光するような美肌、濡れたような目線や声、所作がしなやかな色香を伴い、多くの男性を惹きつけるのも納得でした。

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特に笛のシーンは儚くも思わず見惚れる一幕でした。源内とお新の場面では「笛」が二人を繋ぐ大切な品のようで、熟れた色香を纏い、大人の魅力が滲み出ていました。お新が一人で吹くシーンは笛の音が美しくも切なく響き、もの悲しさや悔しさ、無念といった感情を笛の演奏に乗せて浄化しているようでした。
囲み取材で、丸ちゃんは笛のことを「相棒」と言い、稽古中に持ち帰って共同生活をしていたそうです。笛がきちんと演奏できるまでには三十年修行が必要とのことですが練習し、思い入れがあるようでした。
舞台『浪人街』オフィシャル写真
入江甚儀さん演じる母衣は浪人ながら清潔感があり、武士としての気品や男気を感じました。真面目で面白味はないかもしれませんが、正義感に溢れ、個人的には誠実で旦那さんにするには一番いいタイプだと感じました(笑)。源内がお新を託したくなるのもわかるようで、同性からも信頼されるような役柄でした。入江甚儀さんは背筋が伸びる様な存在感があり、精悍な顔立ちと立ち振る舞いが素敵で、役柄が合っているなと感じました。しかし、いまいち報われないキャラだったので一番幸せになって欲しい!と応援したくなりました(笑)

入野自由さん演じる用心棒の赤牛は飄々とし、打算的な面がありながらも一本筋を通すような人柄は好感が持てました。

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板尾創路さん演じる孫左衛門はれっきとした武士であったため、没落後もプライドを捨てきれず、頑なな姿勢は周りからは疎まれる存在でした。しかし、義理と道理を大切にし、侍の誇りを保つ姿は武士そのもののようでした。「印籠一つ守れぬ者が主を守れるか!」「殿からの一品を地べたに書けるか!」など、台詞の随所からも忠誠心溢れる人柄を感じました。

それとは対照的に神保悟志さん演じる旗本の小幡伝太夫と、⽮柴俊博さん演じる弟の七郎右衛⾨は自分の欲のためなら邪魔者は切り殺してしまう気持ちいいくらいの悪役でした。お二人の演技や存在感が物語に厚みを持たせていました。特に矢柴さんの冷徹で曲者感のある雰囲気と声が印象的でした。彼らの存在は「誇り高き武士の成れの果て」であり「武士の正体」にも思え、もの悲しさを感じました。

意外だったのが、おぶん役をされた藤野涼子さんです。かつて映画『ソロモンの偽証』で約1万人のオーディションで主役に抜擢され、本格的な演技は初めてでありながら圧倒的な存在感と演技力を放っており、私も記憶に残っていた役者さんでした。当時14歳の中学生であどけないイメージを持っていたので、大人の役者さんになられていて名前を見るまで全く気づきませんでした。まっすぐで信念を持つ姿が際立っていました。

舞台『浪人街』オフィシャル写真

舞台は飲み屋の活気がある賑やかなシーンから一転、緊迫した殺陣のシーンに切り替わったりと新橋演舞場の回転舞台の良さが存分に活かされた演出でした。やはり、時代劇と新橋演舞場との親和性の高さを感じました。また、優美さがありながら荘厳で駆り立てる様な音楽は緊張感や重みのある空気感を演出していました。『浪人街』の文字がバンっと浮かび上がる見せ方は照明と壮大な音楽との融合に痺れました!
囲み取材で、61歳になる板尾さんは殺陣のシーンや回転舞台に体力の限界を感じ呼吸するのもやっとだったそうです。とにかく体力勝負な部分があり、皆さんストイックに体作りをして作品に取り組まれていました。取材中は丸ちゃんと板尾さんがボケ合い、笑いと穏やかな雰囲気に包まれていて温かな空気感でした。

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今作は、東京・新橋演舞場を皮切りに、名古屋を経て、丸山さんの出身地・京都で幕を閉じます。私は初回と新橋演舞場での千秋楽の2回観劇させていただきました。その間にも、丸ちゃんをはじめとする役者の皆様が作品にどんどんのめり込み、役柄を自分のものにしている様子が伝わりました。また、チームワークが上がり、殺陣も進化していたのでおかわり観劇してみて良かったです!クライマックスでは、ファンの皆さんや観客がわっと驚くシーンがあります!物語にとっても重要シーンですのでぜひ劇場でお楽しみに!
全53公演という長い公演期間ですが、どうか皆さまが最後まで無事に走り抜けられますように!心よりお祈り申し上げます。
(文:あかね渉

公演情報

舞台『浪人街』
【原作】山上伊太郎
【脚本】倉持裕
【演出】一色隆司
【出演】
丸山隆平、玄理、⼊野自由、藤野涼子、⼊江甚儀、佐藤誓、⽮柴俊博、神保悟志、板尾創路 他

【日程】
2025年2月20日(木)〜3月16日(日)/東京・新橋演舞場
2025年3月21日(金)〜28日(金)/名古屋・御園座
2025年4月2日(水)〜10日(木)/京都・南座

公式サイト
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2025roningai_enbujo/

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