悲しいのに、観劇後スキップしたくなる。ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」観劇レビュー
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」舞台写真 撮影:田中亜紀悲しいのに、観劇後スキップしたくなる。ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」観劇レビュー
インターネットにアクセスすれば、すぐに誰かと繋がることができる現代。「おおロミオ、あなたはどうしてロミオなの?」バルコニーからジュリエットが問いかける、この台詞のような切実な葛藤を抱くことはなくなりました。LINEで、クマとウサギがハグしているスタンプをペロッと送信して、愛を伝えることだってできますもんね。(それが愛の表現として適切かはさておき)
さて、そんな現代で、『ロミオ&ジュリエット』に共感できるポイントは、あるだろうか?と、半信半疑で観劇したわけです。
……そんなわたくし、観劇後、涙を拭って歌いつつ、スキップしながら帰りました。いやあ、面白かった!愛と死。普遍的なテーマに胸がえぐられました。
原作よりも、“家庭”と“不義の愛”にフォーカス
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」舞台写真 撮影:田中亜紀
原作の『ロミオとジュリエット』からは少し人物設定が変わっているところがあり、原作よりも、“家庭”と“不義の愛”にフォーカスして描かれています。
特にジュリエットの母、キャピュレット夫人の役どころが効いていて、大人の色香漂うセクシーさがたまりません。禁断であれ本当に愛する人への思いは、止められない。その業を背負い込んだ孤独な女として描かかれ、ラストシーンで夫人が亡き娘ジュリエットに投げかける一言で、わたくし、涙腺崩壊、鼻水ジョロジョロになってしまいました。
わたしは大野拓朗さん/木下晴香さんペアの回を観劇しましたが、ピュアで愛嬌のある出で立ち、んもう、ぴったりのお二人でした。華やかなメインキャストの美声やダンスは観ているだけで幸せな気持ちになりますし、シルビア・グラブさん演じる個性的でキュートな乳母も、坂元健児さん演じるアロマテラピー好きなコミカルな神父も素敵。
一人一人がソロで歌うシーンがたくさんあり、個性的なキャラクターの魅力が味わえて、それぞれのキャラクターが、とても愛しくなります。
特筆すべきは『死』
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」舞台写真 撮影:田中亜紀
そしてこの作品、なんといっても特筆すべきは『死』という役どころ。『死』とはなんじゃらほい、と思われるかもしれませんが、死神のように、死を操るというわけではありません。ただひっそりと、影のようにロミオやジュリエットの背後に現れては、美しく舞う……。二人の運命の先にある『死』としての、象徴的な存在なのです。
結末の悲劇を知っている身としては、『死』が美しく舞い踊るたびに、「2人は~いず~れ~死ぬ~ん~やで~」と、警鐘をリンゴンリンゴン鳴らされているようで、(はああ、悲しい……。)と、ため息をついておりました。(死ぬんは分かってんねん、でも、『死』さん、そこ、ちょっとどいたってえや!)と。しかし。
ラストシーン。ネタバレになるので控えますが、あまりにも象徴的に美しく舞台上に佇む『死』と、愛し合いながら命を落としたロミオとジュリエットを見て、二人で選び取った選択、それは正しかったのだ。と、妙に清々しく思えたのです。『死』が、風景のようにただ美しくそこに「いる」という姿を見ることで、亡くなった二人は、誰のせいでもない、“運命のイタズラ”でもなく、“自らが良いと選んだ道を全うした”姿として、より印象づけられたのだと思います。
だから、亡くなった二人の姿は悲しいし、ラストの母の台詞も涙腺を崩壊させるのだけれど、“生きる”元気をもらって帰ってきました。
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」舞台写真 撮影:田中亜紀
観終わったら、劇場を飛び出して、エーメー♪エーメー♪と歌いながらスキップ・スキップ・ツーステップしたくなるはず!
POPな音楽で華やか、想像していたよりもとてもコミカルで、あっという間に時間が過ぎました。
初めてミュージカルを観る方にもオススメです!
(文:藤原佳奈)
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」
【原作】ウィリアム・シェイクスピア
【作・音楽】ジェラール・プレスギュルヴィック
【潤色・演出】小池修一郎
【振付】KAORIalive、小尻健太
【キャスト】
ロミオ:古川雄大 / 大野拓朗
ジュリエット:生田絵梨花(乃木坂46) / 木下晴香
ベンヴォーリオ:馬場徹 / 矢崎広
マーキューシオ:平間壮一 / 小野賢章
ティボルト:渡辺大輔 / 広瀬友祐
死:大貫勇輔 / 宮尾俊太郎
キャピュレット夫人:香寿たつき
乳母:シルビア・グラブ
神父:坂元健児
モンタギュー卿:阿部裕
モンタギュー夫人:秋園美緒
パリス:川久保拓司
ヴェローナ大公:岸祐二
キャピュレット卿:岡幸二郎
ほか
2017年1月15日(日)~2月14日(火)/東京・赤坂ACTシアター
2017年2月22日(水)~3月5日(日)/大阪・梅田芸術劇場 メインホール