古川雄大、大迫力の言葉の戦い 新しいシラノの世界 『シラノ・ド・ベルジュラック』観劇レビュー
舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』撮影:引地信彦古川雄大、大迫力の言葉の戦い 新しいシラノの世界 『シラノ・ド・ベルジュラック』観劇レビュー
舞台は17世紀フランス。
・・・のはずが舞台にはデニムを中心としたストリートカジュアルな服装に身を包んだ人々。開始早々繰り広げられるラップバトル。現代的な演出がなされたマーティン・クリンプ氏脚色のシラノドベルジュラック、今回日本に初上陸しました。
『シラノ・ド・ベルジュラック』は剣術の達人で一流詩人、人望も厚いが鼻が大きい。
容姿に恵まれない主人公シラノが悩みながらも見返りを求めず純粋に人を愛した物語です。
舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』撮影:引地信彦
“永遠の愛に殉ずる男”シラノを演じるのは古川雄大さん。ミュージカルで活躍されている古川さんですがストレートプレイの主演は10年ぶり。舞台上では、人間らしさを感じさせる純粋で真っすぐな雰囲気が印象的でした。今回古川さんが演じるシラノは口達者な詩人。富や名声よりも言葉を大切にし、言葉で人を唸らせたいという心意気を持つシラノ。古川さんの歯切れ良く通る声により説得力が増し、何事にも真っ直ぐな人物に映りました。
舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』撮影:引地信彦
シラノが密かに思いを寄せる女性、ロクサーヌには馬場ふみかさん。芯のある声、周囲をじっと見つめる大きな瞳が印象的で自分の意見をしっかりと持つ芯のある女性を演じます。ロクサーヌの恋の相手美青年クリスチャンには浜中文一さん。身のこなしが軽く、シラノと対照的で軽快な華やかさや器用さが際立っていました。
舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』撮影:引地信彦
二人の恋の仲立ち役となってしまうシラノはロクサーヌ宛の手紙を代筆することになります。クリスチャン名義で愛の言葉を綴るシラノの姿は弱弱しく切ないながらもどこか楽しそうで。ロクサーヌへの思いを並べ、囁き、それが溢れ出し歌となる場面では胸が苦しくなりました。
3人の間で繰り広げられる恋愛模様。戦渦でも人々に希望や喜びを与えた“詩“や“言葉“。それは時にはレモンパイ(何故か劇中で多く登場し癒しを与えてくれる存在なのです)の様に甘く、優美なもので時には鋭く残酷なものになります。
シラノの詩は周囲を喜ばせ、ロクサーヌへの手紙はクリスチャンとロクサーヌの仲立ちの助けとなりシラノを悩ませます。
舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』撮影:引地信彦
今回の舞台ではマイクが上から吊るされており、劇中に散りばめられたラップパフォーマンスに使用されています。ラップを介して語られる台詞はその人物の心の叫びとなってダイレクトに言葉が舞台から飛んでくるようで、受け止めるのにとても体力が必要でした。敷き詰められた言葉は、まるで人間が考えを巡らす時の頭の中の様だなぁとぼんやりと思い、どうやら奥が深いようだぞとラップという森の入り口に立たされた様な感覚になりました。
今回のシラノドベルジュラックでは衣装にも舞台セットにもほとんど彩りが無く、あるのは人間と、言葉と。だからこそ、それぞれの人間の色や言葉、息づかいが際立っているのではないかと感じます。外見に囚われず中身で、言葉で人々の心を動かしたシラノ。そんなシラノの生き様を新しい形で感じることができる舞台となっていました。
東京芸術劇場プレイハウスで上演された東京公演は終演。
2月25日(金)からは大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホールで上演されます。
詳細は公式サイトで。
https://www.cyrano.jp/
(文:佐久間晴菜)
『シラノ・ド・ベルジュラック』
作:エドモン・ロスタン
脚色:マーティン・クリンプ
翻訳・演出:谷 賢一
出演】
シラノ・ド・ベルジュラック 古川雄大 ロクサーヌ 馬場ふみか
クリスチャン 浜中文一
リニエール 大鶴佐助
ル・プレ 章平
ド・ギーシュ 堀部圭亮
マダム・ラグノ 銀粉蝶
他
2022年2⽉7⽇(月)〜2⽉20⽇(日)/東京・東京芸術劇場 プレイハウス
※2⽉7⽇(月)はプレビュー公演
2022年2月25日(金)~2月27日(日)/大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TT ホール
公式サイト
https://www.cyrano.jp/
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