
朗読と芝居の中間を軽やかに行き来する《新しい形のエンターテインメント》『大誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜 観劇レビュー
『⼤誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜
朗読と芝居の中間を軽やかに行き来する《新しい形のエンターテインメント》『大誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜 観劇レビュー
まず驚いたのは、キャストによって「台本を手にしている人」と「そうでない人」がいること。最初は「朗読劇なのかな?」と思ったけれど、すぐにそうではないと気づきました。むしろ、それぞれの“表現スタイルの違い”がこの作品の味になっている。白石加代子さんは台本を手にしていながら、言葉のひとつひとつが生き物のようで、ページをめくる仕草さえひとつの演出のよう!誰にも真似できない、圧倒的な熟練の表現。朗読劇では「読んでいるように」見えがちだけど、白石さんの場合はそれが“語る芸”として完璧に成立している。
『⼤誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜
一方で中山優馬さんは台本を持たず誰よりも体を動かし、空気を動かしていた。登場した瞬間、ぱっと場の温度が上がる。視線を惹きつける華やかさ!役のワイルドさと、中山さんの持つ清涼感が混在する不思議なバランスが面白い!役の背景をしっかり踏まえた上で、感情をそのまま身体に通しているようなリアルさがありました。
柴田理恵さんの舞台を生で拝見するのは初めてでしたが、さすがの安定感!期待を裏切らないどころか、その引き出しの多さに驚かされました。コミカルな持ち味を封印しつつ、柔軟にキャラクターを切り替える器用さが光っていた。 もっといろんな役を観てみたい!
『⼤誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜
風間杜夫さん。長年舞台に立ち続けてきた人だけが持つ包容力がある。 セリフの間合いも絶妙で、ひとつの言葉にグッと深みを感じる。かと思えば即興のような場面では、共演者との掛け合いを心から楽しんでいるようで、観ているこちらも自然と笑顔になってしまう。きっと毎ステージごとに新しい空気が生まれるんだろうなと感じました。
『⼤誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜
そして衣裳がとてもチャーミング!舞台がシンプルだからこそ、衣裳がキャラクターの個性を存分に引き立てていた。 柴田さんの独創的な髪型と衣裳はインパクト抜群で、思わず微笑んでしまうほど。中山さんの虎柄ジャケットは彼の勢いを象徴するようだし、風間さんのスーツはどこか洒脱で遊び心があり、白石さんのワンピースはまっすぐで純粋な印象を添えていました。
『⼤誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜
原作は1978年の小説ですが、いま観てもまったく古びない。むしろ現代の感覚で観ると、その大胆さや人間模様の奥行きがより際立って感じられる!派手な仕掛けがなくとも、静かな始まりからじわじわと世界が広がっていく。舞台上はたった四人なのに頭の中でいろんな景色が浮かぶ。この“想像の広がり”こそが、本作の醍醐味!
『⼤誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜
笑いもあって、緊張もあって、どこか人間くさい。朗読でも芝居でもなく、その中間を軽やかに行き来する“新しい形のエンターテインメント”。四人の名優が、それぞれの方法で物語を呼吸させていた。まさに“大スペクタクル”の名にふさわしい舞台でした!
(文:かみざともりひと)
『⼤誘拐』〜四⼈で⼤スペクタクル〜
【原作】『大誘拐』天藤真(創元推理文庫刊)
【上演台本・演出】笹部博司
【ステージング】小野寺修二(カンパニーデラシネラ)
【出演】中⼭優⾺、柴⽥理恵、⾵間杜夫、⽩⽯加代⼦
<東京公演> 2025年10月10日(金)〜10月13日(月祝) シアター1010
<香川公演> 2025年10月18日(土) レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール
<鳥取公演> 2025年10月19日(日) エースパック未来中心 大ホール
<岡山公演> 2025年10月21日(火) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場
<山形公演> 2025年10月25日(土) やまぎん県民ホール (山形県総合文化芸術館) 大ホール
<北海道公演> 2025年11月1日(土) 帯広市民文化ホール 大ホール
2025年11月2日(日) カナモトホール(札幌市民ホール)
<大阪公演> 2025年11月7日(金)・8日(土) サンケイホールブリーゼ
<愛知公演> 2025年11月9日(日) 安城市民会館 サルビアホール
<石川公演> 2025年11月11日(火) 金沢市文化ホール
<秋田公演> 2025年11月15日(土) あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
<新潟公演> 2025年11月22日(土) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
<長野公演> 2025年11月24日(月祝)長野市芸術館 メインホール
<神奈川公演> 2025年11月29日(土)・30日(日) KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
公式サイト
https://daiyukai.com/