ミュージカル『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』

SnowMan岩本照が華麗に変身し世界を欺く‼︎ あのブロードウェイミュージカル『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』を2年ぶり再演!

ミュージカル『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』撮影:伊藤智美

あらすじ

16歳のフランク(岩本照)が幸せな生活から家庭崩壊したことをきっかけに、どん底の中、身分証と小切手偽造を思いつき、偽パイロットとして、世界中を旅することに…。
世界的な小切手偽造犯の捜査に、FBIの捜査官ハンラティ(吉田栄作)が乗り出す。追われるフランクと追うハンラティ。パイロットから医者へと姿を変え看護師ブレンダ(仙名彩世)と恋に落ち、温かい家庭を築こうと結婚を誓った矢先、ハンラティの捜査の手がフランクに迫る…。

 
本作は1980年に出版されたフランク・W・アバグネイル·Jr著の自伝小説『世界をだました男』をもとに製作された映画のミュージカル版。なんと原作が自伝小説というところも衝撃で、正に「現実は小説より奇なり」という言葉がぴったりな作品です。
映画はスティーヴン·スピルバーグが監督、主役の天才詐欺師をレオナルド·ディカプリオが演じ、彼を追うFBI捜査官をトム·ハンクスが演じるというハリウッドの名優の競演が話題となりました。ミュージカルは2009年の初演から、ブロードウェイにも進出し高い評価を得ています。また、2022年夏に演出上田一豪・主演岩本照で上演され、大好評を博しました。

私は残念ながら前回公演は見ることができなかったため、今回の再演を大変楽しみにしていました!
今作は幸運にも2回観劇する機会がありましたが、観ればみる程に奥深い作品だと感じました。

ミュージカル『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』撮影:伊藤智美

オープニング…主演の岩本照さんをはじめとするキャストの華麗なダンスや素晴らしい歌声、オーケストラを従えた華やかで煌びやかな舞台演出に圧倒されます!
岩本さんと言えばSnowManのパフォーマンスに欠かせない存在で、振付を担当するほどダンスに秀でた才能の持ち主です。やはり、存在感は抜群で、ハットをかぶり、ステージにスッと立つ姿、ジャズなどお洒落な音楽に体を揺らし踊る姿、ぴたっと止まるターンやスッと高く伸びた脚の美しいこと!ステージの真ん中で堂々とスポットライトを浴びる姿はまさに“Mr岩本”!
パイロットの制服で美女に囲まれ、時に色気を纏った表情や腰使い、たくましい肉体で大人の男の一面をのぞかせたかと思えば、実際は16才~20才前後のフランク少年を演じているため、幼さが残る可愛らしい”ひーくん“の一面も見えたりと…大きなギャップに役柄同様多くの観客が心を鷲掴みされます!
また、グループではダンスやパフォーマンスを担当することが多い岩本さんの歌声を存分に堪能できることも本ミュージカルの醍醐味ではないでしょうか!伸びやかで真っすぐな歌声は雑味がなく、役柄に誠実に向き合う岩本さんを表しているようで心に届いてきました。

魅惑的アンサンブルズ

そんな魅力的な岩本さんを誘惑するセクシーお姉様方にも注目!主人公フランクがパイロットになるきっかけとなったセクシーCAさん、その後のセクシーナース、そして、1番印象に残ったセクシーマウス!あんなに色気があって可愛いネズミちゃん達は初めてみました!変幻自在のアンサンブルズのレベルの高い美脚のラインダンスや早着替え、個性豊かな登場人物にも注目です!

ミュージカル『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』撮影:伊藤智美

愛を求めて…

元は愛に溢れた家庭で、尊敬する父、料理上手な母に愛されて育ったフランクですが、ある時から家族がバラバラになっていきます。法廷に出廷させられ、どちらも大切な存在なのに父か母か選ばなければならないシーンは観ていて心が引き裂かれそうでした。そこから逃げたくなる幼いフランクの気持ちもわかるようで、親の離婚が子どもに与える影響について考えさせられました。その後の展開はまさかの連続で、犯罪は肯定しませんが、「自ら新しい人生を始めよう!」と切り開いていくフランクの行動力には驚かされます。

犯罪とは裏腹に、ただただフランクは大切な家族を取り戻したかった…繋ぎ止めたかった…純粋な気持ちで温かい家族や居場所を再び求めていたのではないだろうか…。と思えました。だからこそ身元がばれ、捕まるリスクがあっても愛する人と新しい家族を作り、「結婚」という形をとりたかったのでは?とフランクの思いを感じ、なんだかとても切なくなりました。

追う追われる中で生まれた不思議な友情

FBI捜査官のハンラティは当初、大掛かりな小切手偽造をしているのは初老の人生経験豊富な男だと予想しますが、まさかその正体が子どもだったと驚きます。 

クリスマスの夜、二人が電話を交わす場面は心に残りました。欧米ではクリスマスは恋人や家族と過ごす1年で最も華やかで大切な日です。フランクもかつては大好きな父母に囲まれ温かなクリスマスを過ごしていました。しかし、今は犯罪者として追われながら孤独なクリスマスを迎えていました。凍えながら電話ボックスから、自分を追う男に電話を掛けたフランクの気持ちを考えると何とも寂しくなりました。そして彼を追う捜査官のハンラティもまた、かつては家族がいましたが、家庭を顧みず離婚し独り身となっていました…。孤独な二人の間にいつからか追う追われる関係だけではなく奇妙な友情が生まれ、お互いの存在が「生きる」理由になっていたようでした。

ハンラティ演じる吉田栄作さんは仕事一筋の熱血捜査官です。しかし、暑苦しく感じないのは吉田さんのスマートでダンディな魅力が生かされているからだと思いました。ユーモアがあり、温かい彼に出会えたことはフランクにとって救いだと感じました。

ミュージカル『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
撮影:伊藤智美

仕事に真面目で一生懸命、品があって美しい仙名彩世さん演じるブレンダと出会い、お互い惹かれ、愛を歌うシーンはこちらが恥ずかしくなる程にラブラブで可愛らしい場面でした。嘘をつき生きてきた孤独なフランクがやっと心を開いて正直になれる相手が見つかって良かったと嬉しくなりました。モノクロの世界から彩りを取り戻したように明るくハッピーな場面でした。生田智子さん演じるブレンダの母キャロルは陽気でチャーミング、阿部裕さん演じるブレンダの父ロジャーも明るく朗らかで再びフランクが家族を築きたいと思える程、娘思いで素敵な家族でした。家族で食卓を囲み、食後にダンスを踊る姿はかつてのフランクの家族に重なる部分でもありました。
頼もしく心から尊敬でき、時に親友のような存在のフランクの父に岸祐二さん、かつて200人の兵士を魅了した美しい母ポーラに春野寿美礼さんと実力ある役者が揃いました。それぞれが抱える思いが深い演技や歌声として表現され、物語に大きな奥行を持たせていました。特に岸さんの自信満々だった父から廃れていく様が哀愁に満ちていて、最後まで息子からのお金を受け取らない姿に父親のプライドを感じました。春野さん演じる母ポーラがとった行動も、その裏には夫への思いや歯がゆさ、子どもへの愛故の葛藤があることを感じました。それぞれに孤独や寂しさを抱え、愛を求める姿に幸せを願わずにはいられませんでした。

2回観劇したうち、初回はオリジナルキャストの回、次は代役キャストの回でした。中止になった回もありますが、代役の方々や合わせる役の方々は短い稽古期間ながら舞台の幕を開け、やり切る姿に役者魂を感じました。またカンパニーの結束力や雰囲気の良さを感じました!

嘘のような本当の話の結末と、熱気溢れるカンパニーの素晴らしいステージをどうぞ劇場でご覧下さい!

(文:あかね渉

公演情報

ミュージカル『キャッチミーイフユーキャン』

脚本:テレンス·マクナリー
作曲:マーク·シャイマン
作詞:マーク·シャイマン、スコット·ウィットマン
演出·翻訳·訳詞:上田一豪
音楽監督・指揮:上垣聡
振付:藤林美沙 大澄賢也
美術:二村周作 照明:高見和義 音響:山本浩一
衣裳:十川ヒロコ ヘアメイク:宮内宏明
歌唱指導:横山達夫 吉田純也
演出助手:守屋由貴  舞台監督:津江健太

〈出演〉
岩本 照(SnowMan)、吉田 栄作、仙名 彩世、
岸 祐二、春野 寿美礼、生田 智子、阿部 裕、

鎌田誠樹、伊藤広祥、中谷優心、可知寛子、清水彩花
榎本成志、尾関晃輔、輝生かなで、菊地まさはる、
鈴木満梨奈、田中真由、中嶋紗希、元榮菜摘
山田美貴、横山達夫、りんたろう

◻︎東京公演
公演日程:8/19(月)~9/8(日)
会場:東京国際フォーラム ホールC

◻︎大阪公演
公演日程:9/13(金)~9/17(火)
会場:オリックス劇場

公式サイト
https://www.musical-cmiyc2024.jp/

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