6役Wキャスト‼︎ 長年のファンから初めて見る方まで幅広い層が楽しめる現代版ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』観劇レビュー
ミュージカル『ロミオ&ミュージカル』公演事務局【撮影:渡部孝弘/田中亜紀】
今作のWキャストはなんと6役!次世代を担う若手キャストが揃いました。私が観た回はロミオ:小関裕太さん、ジュリエット: 吉柳咲良さん、ベンヴォーリオ: 内海啓貴、マーキューシオ : 伊藤あさひさん、ティボルト : 太田基裕さん、死のダンサー: 栗山廉さん(K-BALLET TOKYO)バージョンでしたので、そちらのレビューを書かせて頂きますね。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局【撮影:渡部孝弘/田中亜紀】
今作で最も印象的だったのは、なんと言ってもロミオを演じる小関裕太さん!誠実で柔和な中に精悍さが際立ち、現代版「ロミオとジュリエット」に相応しいとっても素敵なロミオでした!登場シーン、パッと光を放つように纏うように現れたロミオの姿に私は一瞬で目を奪われました。(恐らく目だけではなく心も!笑)「ベローナ中の女性を虜にする」という役柄に説得力がある美しくて華がある凛々しいビジュアルと高貴な佇まい。華やかな金髪ヘアは全体的に短めで清潔感と爽やかさはありつつ、長めの前髪に程よい色気があり、ゆるいウェーブがなんともアンニュイな儚さを醸し出していました。また小関さんの品の良さは残しつつもスタイリッシュな装いで、シュッとしたお顔立ちと背の高さ、スタイルの良さが際立っていました。衣装担当、ヘアメイク担当のスタッフの方達にも感謝を述べたい程、小関さんの良さが最大限活かされた素敵な装いでした。そして、ビジュアルはもちろん、仮面舞踏会でジュリエットが恋に落ちてしまう甘くて低い「声」にもまた魅了されました。主演の小関さんは近年、舞台作品に出演されていることは知っていましたが、「ドラマ俳優」のイメージが強かったため、彼の伸びやかな歌声と華麗なダンスには驚かされました。親友達と踊るシーンは自然体で躍動感があり、共に楽しんでいる様子が伝わってきました。心根の優しい純粋さ、快活で誰からも好かれ、仲間に囲まれるキャラクターは小関さんの人柄にぴったりでした。やや荒々しくチャラさがある友人達と、心優しいロミオは相慣れない感じはするものの、幼い頃から家族ぐるみで仲の良い信頼関係がある様子が話の節々から伝わり、「最後の事件」が起こってしまう背景に胸が苦しくなりました。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局【撮影:渡部孝弘/田中亜紀】
ジュリエット役の吉柳咲良さんはミュージカル『ピーターパン』の主演で女優デビューをし、近年では声優も務めているだけあり、清らかで愛らしい声はジュリエットにピッタリで、小柄な身体からは想像できない声量のある歌声に驚きました。そして、小関さんとの身長差にはキュンとしました。
私が好きなシーンは、まだ出会う前の二人が「生涯愛する人と出会って恋をしたい!」と夢みる心情をそれぞれ歌うシーンです。キラキラとした二人の表情と弾む様な歌声にこちらも胸が高鳴り、その後、運命の出会いを果たす期待にワクワクします!
ですが、長い歴史の中で、憎しみが憎しみを生み「誰もが自由を求めているはず」なのに争いをなかなか止められない根深い両家の因縁がある状況やその後訪れる悲しい結末を知っているからこそ、胸が痛くもなりました。しかし、絶望的な状況でも神父様や乳母のように、心から二人の幸せを願い、手を差し伸べてくれる存在は物語の中で救いのようでした。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局【撮影:渡部孝弘/田中亜紀】
今作の見どころは、ロミオの繊細で揺れ動く心情が影の存在である「死のダンサー」として表現されているところにもあります。存在は妖しく不気味でありながらも栗山廉さんの精巧で美しい肉体美と指先まで宿る魂のこもったパフォーマンスには惹きつけられるものがありました。悩み苦しみ、心の奥底にある人間の黒い部分、衝動的な怒りや弱さ、葛藤も表現され作品の深みが増すようでした。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局【撮影:渡部孝弘/田中亜紀】
ジュリエットに思いを寄せるティボルト役(ジュリエットの従兄弟)の太田基裕さんが孤独な気持ちで胸に秘める恋心を歌いあげるシーンなど、今回は若いキャストの割合が多いですが、歌やダンスの実力、完成度が高く、儚いシリアスなシーンから華やかなシーンまで安心してみることができました。キャピュレット家、モンタギュー家それぞれの若者が歌い踊るシーンは若さ溢れ、生き生きとしたダンスで大人に負けない強いパワーを感じました。
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局【撮影:渡部孝弘/田中亜紀】
前半に述べた小関さん以外のキャストの衣装も特性のあるキャラに合ったスタイルで豪華でお洒落でした。上流階級の貴婦人や紳士、上品なお嬢様、貴公子スタイルと着崩したファッションの対比や舞台変換も観客側に伝わりやすく面白かったです。
内容は原作のトラッド感あるベースはそのままに、スマホなど現代のアイテムが取り入れられたり、仮面舞踏会のシーンはまるでクラブのようでした。音楽も心を揺さぶる名曲揃いで、静かに聞かせる様な曲目からロック調のノリノリのサウンドまであり、何度も上演されてきた今作の長年のファンから初めて見る方まで幅広い層が楽しめる令和版「ロミオとジュリエット」だと感じました。
禁じられた恋をし、命を懸けて愛し合った2人の物語…
その愛に生きた2人の姿が周りに与えた影響とラストのメッセージに胸を打たれます‼︎6役のWキャストで演じられるため、それぞれのキャストと色んな組み合わせの化学反応もぜひ、劇場でお楽しみ下さい。
(文:あかね渉)
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局【撮影:渡部孝弘/田中亜紀】
ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
【原作】ウィリアム・シェイクスピア
【作】ジェラール・プレスギュルヴィック
【潤色・演出】小池修一郎(宝塚歌劇団)
【出演】小関裕太/岡宮来夢、吉柳咲良/奥田いろは(乃木坂46)
内海啓貴/石川凌雅、伊藤あさひ/笹森裕貴、太田基裕/水田航生
栗山廉(K-BALLET TOKYO)/キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)
彩吹真央、吉沢梨絵、津田英佑、田村雄一、ユン・フィス、雷太、渡辺大輔、岡田浩暉 ほか
2024年5月16日(木)~6月10日(月)/東京・新国立劇場 中劇場
2024年6月22日(土)・6月23日(日)/愛知・刈谷市総合文化センター
2024年7月3日(水)~7月15日(月・祝)/大阪・梅田芸術劇場メインホール
公式サイト
https://www.rj-2024.com/