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『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビュー

全ての働く人へ送る、労働系ミュージカル 再演! 柚希礼音・ソニンのタッグに平野綾、水田航生ら新キャストを迎えパワーアップした『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビュー

『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビューミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』全ての働く人へ送る、労働系ミュージカル 再演! 柚希礼音・ソニンのタッグに平野綾、水田航生ら新キャストを迎えパワーアップした『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビュー

19世紀アメリカで起きた実話を基に、過酷な労働下で働きながら、自由と平等を求めて戦う女性たちを描いた日米クリエイター共作のオリジナルミュージカル。
2019年読売演劇大賞優秀作品賞を受賞し大きな話題を呼び、多くのファンから熱烈なラブコールを受け、初演から3年半の時を経て再演されます。
主人公サラ・バグリーを演じるのは前作から引き続き元宝塚歌劇団トップスター柚希礼音、タッグを組むのは数々のミュージカル出演歴のある実力派女優ソニン。そして今作から平野綾、水田航生ら豪華追加キャストを加え、時代に合わせ内容もブラッシュアップされています。

『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビュー
ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

産業革命のアメリカ、ローウェルでは大規模な紡績工場が誕生し女性が重要な労働力となり経済を支えていました。それにも関わらず女性の人権は軽んじられ、虐げられ、発言や意見することは抑圧されていました。それでも、彼女たちは夢のため、豊かな未来のために前向きにたくましくファクトリーガールズとして働きます。彼女たちの寄稿集「ローウェル・オファリング」は自由を夢見る女性たちにとって希望の光でした。

そんな中、劣悪な労働環境で働いていたサラ達は業績を上げるため更なる労働時間延長を強いられます。どうにか耐えながらも生きていた彼女たちですが、自分たちの「生きる権利」を求め長時間労働に対しついにペンの力で闘います。
朝から晩まで働いて、ベッドにバタンキュー。休日はそれなりに過ごしてまた仕事へ行く。「働き方改革」が叫ばれて久しい現代日本においても多くの人がまだ同じような生活を繰り返しているのではないでしょうか。そんな中でもやりがいや生きがいを見つけ、明るく、弱音や不平不満も吐かず、笑顔を絶やさず、ポジティブシンキングで日々小さな幸せを見つけられたら良い部分もあるかと思います。

しかし、どこかでモヤモヤ、イライラ、矛盾や苦痛、悩みや怒り、悲しみを感じていませんか?少なくとも私はそうでした。

『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビュー
ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

主人公は「働く女性」であり、主軸は女性の権利を勝ち取っていく話ですが、それ以上に多くの人に対し壮大なメッセージ性を感じる作品です。囲み取材の際、柚希さんは「女性が強そう、女性メインのお話でしょ?と言われますが男性を責めるのではなく人間としての人権を得るために闘う話。今現在の皆様にも刺さるところがあると思う」とおっしゃっていました。また、脚本の板垣さんも「女性に限らず、人生に疲れている人、挫折を経験している人、Happyな人も含めすべての人の背中を少しでも押せる作品」と強く伝えられていました。

ポスターには『過去から現在へと続く、「私たち」の戦いの物語』とあります。まさにこの「私たち」とは性別や人種、年代を問わず時代を越えて現代社会に生きるすべての人に対する応援の物語だと感じました。

「糸を紡ぎ」ながら働く女性たちが、自分の人生を考え、自分の「言葉を紡ぐ」

『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビューミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

冒頭、心地よい生バンドの音楽から静かにスタートしますが、すぐに熱量の渦に巻き込まれ胸が熱くなっていくのを感じました。機械のように管理され抑圧されながらも、働く女性一人一人が夢や希望を持ちながら「生きている」ことを感じるからです。女性以外にも移民として低賃金で働く人物たちも出てきます。その秘めた思いや熱量が圧倒的なパワーとなり、ダンスや歌声に反映され、心に響き、胸を撃たれました。

また、劇中、闘いに賛同する人ばかりではなく、色々な立場や考えの人たちが登場します。目的は同じでも共に歩めない人、戦うことで傷つくことを恐れ耐える人。更なる仕打ちに怯え、子どもや家族を守るため傍観者となる人、現状を変えることは無理だ、お金のためには仕方ないと諦め保守的にふるまう人。様々な登場人物の心の葛藤が描かれ、どこかに自分を投影させられるようでした。

『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビュー
ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

昔に比べ「職業選択の自由」や多様性が叫ばれる現代ですが、実際問題、組織や社会に根付く力関係や生きづらは誰もが感じているのではないでしょうか?枠組みにとらわれ、誰かの顔色を窺って、見えないルールに縛られて…本当の自分を見失っていませんか?もしそうであるなら、これ以上傷つけられ、悲しみを重ね、時代を繰り返す必要はありません。適切な環境で健康的に働くこと、自分の意見をもつこと、自分の言葉で、自分の声で「発信」すること、自分らしく生きること、それは誰にも制限されるべきものではないからです。
出演者の何十にも重なる思いが美しくも力強い歌声となり胸に訴え鼓舞してくれるようでした。それは私たちの心の叫びを代弁してくれるようで一歩踏み出す勇気をもらえました。

『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビュー
ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

私自身、組織の一員として働く社会人の一人です。とりあえず「空気を読むこと」「誰のため、何のためかわからないルールに従い生きること」も「そういうもの」と割り切り生きてきました。そんな中、矛盾や小さなざわつき、心の機微に気づきながらも毎日の忙しさにかき消され、過ぎていく毎日に疲弊している自分にも気づきました。争いを避け、できるだけ穏便に済ませたい平和主義な人間でもあるため、理不尽な出来事があっても、笑顔で受け流し我慢することも多かったです。

ですが、ここ数年、「生きる意味」や「働く意味」を改めて考え、人生という限りある時間を大切に、自分らしくいきいきと生きたい!という思いが強くなりました。「誰か」の意見や価値観に流されず「自分がやりたいこと」や「望む未来」を考えたときにもっと自分の気持ちに正直に生きたいという思いも強くなりました。
また、多くの虐げられて生きる人々の存在も知り、「発信すること」「声を上げること」の大切さを感じ、「伝えること」で世の中を変えたいと思い、自分自身の働き方を見直し、ライターをしています。

『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』観劇レビュー
ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

劇中、「闘うことから逃げたら生きる意味を無くす」という力強い言葉が出てきます。「闘う」とは必ずしも暴力的な意味ではありません。不条理な環境や相手に対し、自分の尊厳や生きる権利を示すものです。自分の人生を生きるのは紛れもない自分自身です。誰にも搾取されることなく自分らしく生きていいのです。

今作は「なんのために働くのか」ということや「自分の人生」について考え、よりよく自分の人生を生きるために一歩踏み出す勇気をもらえる作品です。現在の労働環境や働き方に悩みがある方、自分の人生これでいいのかなと迷っている方には特におすすめしたいです。ぜひ、皆さんも心震える体験を劇場で体感下さい!

(文:あかね渉

公演情報

ミュージカル『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』

【作詞・作曲】クレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニー
【脚本・歌詞・演出】板垣恭一

【出演】
柚希礼音、ソニン
実咲凜音、清水くるみ、平野綾、水田航生、寺西拓人、松原凜子、谷口ゆうな、能條愛未
原田優一、戸井勝海、春風ひとみ
佐々木崇、丸山泰右、酒井翔子、杉山真梨佳、井上花菜、舩山智香子、半澤昇、國末慶宏、山崎感音、久信田敦子、鈴木里菜

2023年6月5日(月)~13日(火)/東京・東京国際フォーラム ホールC
2023年6月24日(土)・25日(日)/福岡・キャナルシティ劇場
2023年6月29日(木)~7月2日(日)/大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

公式サイト
https://musical-fg.com/

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