「ケムリ研究室」は、劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と女優・緒川たまきが新たに立ち上げたユニット。
2020年9月、旗揚げ公演として『ベイジルタウンの女神』を緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、高田聖子などの出演で上演した。
第二回となる今回は、安部公房の小説「砂の女」を原作とし、KERAが上演台本と演出を手掛ける。
「砂の女」は、1962年に書き下ろされ、近代日本文学の傑作と評されるとともに、世界20数カ国で翻訳され安部公房を世界に知らしめた作品だ。
出演は、KERAとともにケムリ研究室の主宰である緒川たまきを始め、仲村トオル、オクイシュージ、武谷公雄、吉増裕士、廣川三憲。
緒川たまき・仲村トオル 撮影:引地信彦
初日が開けてとりあえずホッとしてます。開幕できるか、稽古中はずっと不安でした。 観客がいる劇場の有り難さ。ご覧になったお客様がどんな風に感じたか知りたいですね。
同じコロナ禍での上演でも、昨年の『ベイジルタウンの女神』は多幸感溢れるエンタメ作品でしたけれども、今年は安部公房ですからね。180度違う。今回は辛辣な芝居です。照明もずっと暗めだし、明るいことはあまり起こらない。娯楽要素はありつつも、いわゆるエンタメとは異なる舞台を目指しました。けれども、砂の谷底の小屋で繰り広げられる男女のドラマは、きっと様々なことを感じさせてくれるでしょう。
安部公房は明らかに理数系の作家ですが、今回僕は、それを無理矢理文系の作品にねじ曲げたのかもしれません。自分のモードでやるしかないし。
岸田國士さんの時は一作やって大ファンになったけれど、安部公房さんはまだまだ近づくには怖い所がある。やっぱり理数系だからかな。これから時間をかけて徐々に仲良くなれるといいなと思っています。
劇場入りしてからはバタバタで、ともかく幕を開けることで精一杯でした。明日からは少し客観的になれるのではないかと。スタッフ、キャストが皆同じ方向を向いている素晴らしい座組なので、なんとかこのまま完走できるよう、祈るばかりであります。
緒川たまき コメント
このようなご時世ですから、本当に幕を開けることが叶うのかどうか、カンパニー全体、かなりドキドキしながら、覚悟をして稽古をしておりましたが、おかげさまで無事初日を開けることが出来ました。
カーテンコールでお客様の姿が照らされたとき、これはつい数時間前まで行っていた舞台稽古の続きではなく、お客様に見て頂けたのだと改めて信じられないような思いでした。
同時に、何か重い責任を負っているような気持ちで、その場に立っていました。
このような状況の中、演劇を、ケムリ研究室の『砂の女』を、観ようと思って下さり、実際に劇場に足を運んで下さった事に、まずは深い感謝を申し上げると共に、ご期待に添えたかどうかは分かりませんが、皆様の思いを無駄にしないよう、明日以降もブラッシュアップして、少しでも良いものをお届けしたいと、祈るような誓うような気持ちでおります。
東京公演は9月5日(日)までシアタートラムにて上演。
その後9月9日(木)から兵庫で上演される。
(文:エントレ編集部)
ケムリ研究室 no.2『砂の女』
【原作】安部公房
【上演台本・演出】ケラリーノ・サンドロヴィッチ
【音楽・演奏】上野洋子 【振付】小野寺修二
【出演】
緒川たまき 仲村トオル
オクイシュージ 武谷公雄 吉増裕士 廣川三憲
【東京公演】2021年8月22日(日)〜9月5日(日)シアタートラム
【兵庫公演】2021年9月9日(木)〜9月10日(金)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール