藤川澄十郎 プロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語』

日本舞踊の新風に胸が高鳴る!「伝統」と「革新」が融合した圧巻のエンターテイメントショー、藤川澄十郎プロデュース公演『ゆう』観劇レビュー

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新進気鋭の若手日本舞踊家・藤川澄十郎のプロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語~』が、10月16日、浅草公会堂にて上演され、盛況のうちに幕を閉じました。
藤川澄十郎さんは400年の歴史を誇る藤川流の家元を15歳で継承。その瑞々しい感性でアーティストとしても幅広く支持されている、注目の若手の鬼才です。

好評を博したプロデュース公演『ゆう』の第三段となる本作。
“夢の日本舞踊エンターテイメントショー”と銘打ったコピーに、
「日舞なのに、エンターテイメントショー…??」
と、日本舞踊の公演を観たことがなかった筆者には、どんなステージなのかイメージができなかったのですが、実際に公演を拝見して、おおいに納得!
まさに、“伝統”と“革新”が見事に融合した、夢のような新感覚エンターテイメントショーを目撃することとなりました。

思いがけない選曲に衝撃を受けたプロローグ!

藤川澄十郎 プロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語』

本作は日本舞踊と芝居劇の“オムニバス”で綴る構成。
千年生きた、一本の雄大な桜の木がステージの真ん中に佇み、この大きな木に見守られながら、様々な人間模様が美しい舞と共に描かれていきます。

幕が開き、舞台の中央にゆっくりとせり上がりで登場する“木の精”に扮した澄十郎さんの凛とした美しい姿、そして流れてくる聞き覚えのある幻想的なメロディーに、思いがけずぶわっと鳥肌が…!
というのも、知る人ぞ知る名曲、『ぼくの地球を守って』(漫画家・日渡早紀の代表作で、のちにOVA化された作品)のサウンドトラックに収録されている、菅野よう子さん作曲の「金色の時流れて」が楽曲として使用されていたのです!

子供の頃に魅了されたこの曲との思わぬ再会という個人的な背景と、“木の精”という役どころに絶妙にマッチするこの選曲に、プロローグからがっちり心を掴まれてしまいました。

しかし、“楽曲”で魅せられたのは、このプロローグのみにあらず!
全編を通して、音楽の使い方がドラマティックで、それでいて日舞の美しさを引き立てるものばかり。
「次はどんな曲が使われるのだろう?」
という楽しみが湧いてくるのも、本公演の大きな魅力です。

声なき芝居に引き込まれる、『義経主従の物語』

藤川澄十郎 プロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語』

澄十郎さんが義経を演じる『義経主従の物語』では、義経・弁慶終焉の地、平泉での最後の戦いを描いた舞踏。弁慶をゲスト出演の大沢健さんが演じます。
刀を持ち、流れるような動きで軍を率いて踊る澄十郎さんの義経は、そのカリスマ性に眼が眩むほど!力強い群舞もかっこよく、見応え抜群です。

台詞はないけれど、義経の表情からは、苦しさや悔しさ、仲間を想う気持ちが溢れ、声なき芝居に観客は引き込まれていきます。映画『ラストサムライ』などの楽曲も作品を盛り立て、追い詰められた義経は最後、荘厳かつドラマティックにその人生の幕を下ろします。
大沢さん演じる弁慶も迫力満点で、短いながらも、義経と弁慶の関係性がぎゅっと凝縮された物語になっていました。

愛に生きた二人の男女が艶やかに舞う、名作古典『蝶の道行』

藤川澄十郎 プロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語』

『蝶の道行』は、義太夫の名作古典と言われている演目。
お家騒動の末に死んだ恋人同士の小槙(澄十郎)と助国(大沢健)は、あの世で蝶として一緒になれると願っていた。しかし二人は、地獄に落ち、責め苦に合うことに……という悲恋の物語です。

朱色と水色を基調としたビビッドな色合いの華の絵が印象的な背景の中で、二人の男女が情熱的に、そして艶やかに舞う姿は、まるで動く日本画を見ているかのよう。
想い合う二人の心を象徴するかのようなシンクロする動きや、細かい足捌き、ダイナミックな海老反りにも目が奪われます。

下手に伸びた花道にお二人が登場すると、二次元的な絵面から立体感が立ち上り、劇空間を新たな目線で捉えられるのも、花道の持つマジックと言えましょう。
日本の伝統芸と美意識を存分に堪能し、「日本舞踊を観た!」という満足感を味わうことができるので、この演目はぜひ海外のお客様にも観ていただきたいところ!

まるでミュージカル!?圧巻の“和製バーレスク・ショー”にときめく!『宵闇祭の夢』

藤川澄十郎 プロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語』

舞台を見守る桜の木は、ある時は宿場町の御神木に。
年に一度の「宵闇祭」でにぎわう町の中に、遊郭【藤乃屋】の道中がやってきます。
ここでは花道が“道中”となり、一列に並んだ遊女たちが妖艶に、そしてしっとりと舞う姿には、客席からもため息がこぼれます。
遊女たちが静から動へ、情熱的な踊りに切り替わっていく様子は「圧巻!」の一言。

椎名林檎の名曲「stem」をバックに、赤い布をひらひらと翻し踊る遊女たちの“粋”な姿は、映画『さくらん』の世界を彷彿とさせ、そのまま楽曲のプロモーションビデオになってもおかしくないほどのかっこよさ。音楽とビジュアルががっちり合うことで生まれる恍惚感に酔いしれること必至です。

藤川澄十郎 プロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語』

その後もブロードウェイミュージカルを映画化した『NINE』で使用された「Be Italian 」(ファギー)や、映画『バーレスク』でおなじみの「show you how me burlesque」(クリスティーナ・アギレラ)とダンサブルなナンバーと共に繰り広げられる、遊女たちの優美でいながらエネルギッシュな迫力に満ちた群舞に、場内の熱はさらにヒートアップ!揺れる着物の袖に合わせ、こちらも体を揺らさずにはいられない状態に…!

この“和製バーレスク・ショー”では客席からも自然と手拍子が発生。まるでミュージカルのワンシーンのような盛り上がりをみせ、理屈抜きに「たのしい!」と感じられる、多幸感に溢れた時間となりました。

藤川澄十郎 プロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語』

終演後は、「この興奮を誰かに伝えたい!」という高揚感と共に劇場をあとにし、会場となった“浅草”という街が、より一層エキゾチックに感じられたほど。
先日、日本舞踊や歌舞伎の公演で活躍されている若手の邦楽囃子演奏家の方々に取材をする機会があったのですが、伝統芸能に携わる方々の、「伝統を継承しつつ、もっとお客様に気軽に楽しんでいただきたい」という熱い想いから、様々な創意・工夫をされ、積極的に活動されている姿がとても頼もしく感じられたことを思い出しました。

「日本舞踊の知識も教養もないし、ちょっと敷居が高いかも…」
と感じている方にこそ、色とりどりの魅力を兼ね備えた澄十郎さんのプロデュース公演は一見の価値あり!
演劇やミュージカル観賞がお好きな方にとっても、新しい扉を開く歓びに満ちた観劇体験となることを、ここに保証いたします。

(文:古内かほ

公演情報

藤川澄十郎 プロデュース公演『ゆう~一本の木が見た千年の夢物語』

【出演】
藤川澄十郎
藤川桜子 藤川百合華 藤川織絵 藤川翔竜 藤川瑠璃 藤川皐月 藤川幸貴乃 藤川新之輔 井上優佳 小出健太 酒井緑 佐竹晶子 仲澤大樹 濱田理奈 藤崎栄 村松建志朗 若松純子

【ゲスト出演】
大沢健

2018年10月16日 (火)/東京・浅草公会堂 大ホール ※公演終了

公式サイト
日本舞踊 藤川流

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