2019.2.18  72

あなたもきっと、大切な人を思い出して涙する。劇団銅鑼公演No.52『花火鳴らそか ひらひら振ろか』観劇レビュー



劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」
劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」
 

あなたもきっと、大切な人を思い出して涙する。劇団銅鑼公演No.52『花火鳴らそか ひらひら振ろか』観劇レビュー

 

劇団銅鑼は、1972年の創立から「平和」と「人間愛」を求め、「本当に人間らしく生きることとは何か」をテーマに創造活動を続ける劇団です。
今回は、No.52『花火鳴らそか ひらひら振ろか』の観劇レビューをお届けいたします!

劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」
劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」

本作の舞台となるのは、8月のお盆。亡き祖父の形見であるヒノキの盆栽に日々語りかけながら過ごす少女(早坂聡美)が、ある日の夜、花火のもらい火からおきたボヤで焼け出されてしまい、その修理の間、とある家族の元で過ごすことになります。
しかし、その家の主人(佐藤文雄)は認知症。お手伝いさん(竹内奈緒子)の名前、馴染みの植木屋の青年(山形敏之)のこと、自分の息子(館野元彦)さえも、わからない。この認知症の主人の言動に振り回される人々の賑やかなやりとりが、テンポ良く展開されて行きます。

 
劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」
劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」

まず、タイトルの『花火鳴らそか ひらひら振ろか』には、どういう意味合いが込められているのだろうかと思っていたのですが、長崎県でお盆に行われているイベントから来ているようです。長崎県のお盆のイベントと言えば、日本最大級の精霊流しのイメージでしたが、その他にも、墓前で爆竹や花火を放ち、亡くなった人の魂を見送るという風習があるのだそうです。
私はこの風習を今回初めて知ったので、とても面白いなぁと思い、長崎県以外にも様々な都道府県のお盆に行われる風習を調べてみたくなりました。(劇場ロビーでも、少し紹介の展示がありましたので、足を運んだ際はぜひ覗いてみてください!)

お盆は、先祖や亡くなった人の魂が帰ってくる時期と言われています。
本作でも、盆栽を大切にする少女の祖父(宮田将英)、認知症の主人の妻(長谷川由里)と可愛がっていた愛犬(向暁子)が、帰ってきます。

この、帰ってきた魂の姿が見えてしまう人と見えない人の言動のすれ違いや、見えない人々に気が付いてもらおうとする魂達の必死さがコミカルで面白くて、クスクスと劇場から笑いが聞こえてくる場面がいくつもありました。

しかし、見える人は、見えない人達から「からかうな」と言われ、「認知症の主人に合わせているだけだ」とも言われてしまう。実際、自分が見える側と見えない側、どちらかの立場に立ったら・・・と考えながら観ていたのですが、体験したことの無いくせに、きっと彼らと同じことを言って、同じ事をするだろうなと各登場人物達に共感してしまうのがとても不思議な感覚でした。

 
劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」
劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」

そして、今回のお話に感情移入しやすい理由としては、舞台上に建てられた木造のセットが、どこか昔懐かしく、ぬくもりを感じるからというのも関係しているように思います。木造のセットに机とイスくらいしか登場しないのですが、心なしか他の家具も見えるような、きっと庭には大きな木があって、亡くなった愛犬の犬小屋はまだあるのだろうな、とかそんなことを想像してしまいました。(観劇された皆様に、どんな家が見えたか聞いて回りたいくらいです・・・笑)

「お盆は楽しい。一人じゃないって気がする」

劇中で、植木屋の青年が言う台詞です。凄く、素敵な言葉だなと思いました。
目には見えないけれど、自分の側でそっと寄り添って見守ってくれている誰かがきっといる。その存在を感じようとすることを、もっと大切にしたい。そう、思わされました。
加えて、絶対自分のせいなのに、テストの点数が悪くて仏壇に向かって怒っていた過去の自分を思い出して、後悔しました。ご先祖の皆様、この場を借りて本当にごめんなさい。(私情を挟みました、失礼いたしました。)

とにかく、今年のお盆はもっと、帰ってきてくださっているであろう魂達の存在を感じて、直接言葉は交わせなくても、感謝の気持ちを持ってお迎えしたいなと強く思わせてくれる、温かいお話でした。

 
劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」
劇団銅鑼公演No.52「花火鳴らそか ひらひら振ろか」

「あなたがお盆に帰ってきて欲しい大切な人は、誰ですか・・・?」
その人はきっと、今日もあなたを空から見守っていて、今年もまた、お盆の日に会いに来るための準備をしているかもしれません。

上演時間1時間40分。短いようで、とても濃密な時間でした。
ラストシーン、ここまで多くの物語を観てきたからこそ、じわじわ、うるうると感動すること間違いなしです。

まだまだ寒い今の季節に、心の中からポカポカと温まるような作品に出会わせていただきました。帰り道、マフラーを首に巻いていないことを、途中まで気がつかなかったくらい。(これ、ホントです)

本公演は、東京・あうるすぽっとにて、今月21日(木)まで上演されます。
詳細は公式サイトで。

 
(文:越前葵)
 
このレビューを書いたのは

越前葵
えちぜん あおい|舞台・演劇は酸素。生きるために必要な要素のひとつ。趣味は、観劇・お城巡り・御朱印集め。劇団☆新感線の「髑髏城の七人」に影響されて、絶賛殺陣を習い中。

 


 

 

公演情報

劇団銅鑼「花火鳴らそか ひらひら振ろか」

【原案】小川未玲
【台本・演出】松本祐子
【美術】長田佳代子

【出演】佐藤文雄、長谷川由里、館野元彦、竹内奈緒子、向暁子、山形敏之、早坂聡美、宮田将英

2019年2月15日(金)~2月21日(木)/東京・あうるすぽっと

 
公式サイト
花火鳴らそか ひらひら振ろか

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こりっち

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