「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸

新たにフレッシュなメンバーが集結!実在した宝塚男子部を描く切なくも愛おしい青春群像劇『宝塚BOYS』観劇レビュー

「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸
舞台「宝塚BOYS」team SKY 撮影:桜井隆幸

新たにフレッシュなメンバーが集結!実在した宝塚男子部を描く切なくも愛おしい青春群像劇『宝塚BOYS』観劇レビュー

「女性だけの宝塚歌劇団にかつて男子部が存在した」という実話を下敷きとして描かれた『宝塚BOYS』は、2007年に初演、今回で5度目の上演となり、作品自体のファンも多い人気作。
今回の再演の注目ポイントは、初の2チーム制で上演されること!
前半はこれまでに『宝塚BOYS』に出演した経験のある実力派俳優陣が中心となったTeam SEA、後半は2.5次元舞台などで活躍するフレッシュな若手俳優が集結したTeam SKYでの上演となり、それぞれのチームならではの魅力が味わえる構成になっている。

ここでは、Team SEAのお兄さんチームからバトンを受け取った、弟チーム・Team SKYの公演の模様をお届けします!

「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸
舞台「宝塚BOYS」team SKY 撮影:桜井隆幸

舞台は昭和20年秋、第二次世界大戦が終わったばかりの激動の時代。
冒頭、なんとも言い難い恐怖が身体に迫ってくるような爆撃音と空襲警報のサイレンが鳴り響く中、一人の青年が戦争で体験した景色を、表情とアクションだけで観客にその壮絶さや絶望を想起させる、という印象的なシーンから幕を開ける。

その青年、上原金蔵(永田崇人)は幼い頃から宝塚の舞台に憧れていた人物。戦争で失った青春と希望を取り戻すべく、宝塚歌劇団創始者・小林一三に宝塚歌劇団への男性登用を訴える手紙を送る。
折よく小林一三も、いずれは男子も含めた本格的な“国民劇”を画策していたこともあり、宝塚男子部が設立。宝塚歌劇男子部第一期生として、上原をはじめとする個性豊かなメンバー7人が集められた。

「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸
舞台「宝塚BOYS」team SKY 撮影:桜井隆幸

永田崇人演じる上原金蔵は、実直さ、そして仔犬のような可愛らしさもあり、みんなが支えたくなるようなリーダー像。きっと誰もが彼を応援したくなるだろう。
電気屋の竹内重雄は歌を得意とし、同役を演じる溝口琢也はその伸びやかな歌声が印象的で、清廉さがBOYSの中でも際立つ。宝塚のオーケストラメンバーだった太田川剛は“お笑い担当”。出てくるだけで明るさとおかしみをもたらすキャラクターを塩田康平が好演している。旅芸人の息子・長谷川好弥を演じる富田健太郎のTHE・男子な愛すべき軽やかなおバカっぷりも魅力的だ。
闇市の愚連隊だった山田浩二役の山口大地は強面の裏に隠された繊細さをコミカルに、そして熱く演じる。その山田の秘密を握っている、竹田幹夫を演じる川原一馬の安定感が舞台を締める。
そして現役のダンサー・星野丈治を演じる中塚皓平は華麗でキレのあるダンスで観客を魅了し、BOYSたちを技術面で引っ張っていく。

「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸
舞台「宝塚BOYS」team SKY 撮影:桜井隆幸

“宝塚大劇場に立つ”という夢のもと、声楽やバレエと慣れないレッスンに奮闘するBOYSたち。
報われぬ稽古の日々が一年近く続いた中、やっと与えられた役は、顔も見えない「馬の足」。
この馬の足を健気に練習するシーンは、本作の見どころの一つと言ってもよいだろう。実際に段々と「馬の足」らしく見えていく動きにはちょっと感動するし、着ぐるみならではのユーモアに溢れたシーンで、思わず笑みがこぼれてしまう。

やり切れない想いをかかえながらも、相変わらず日々のレッスンに励む彼らの元に、宝塚男女合同公演の計画が持ち上がる。
憧れだった、自身の名前と役名が書かれた台本を初めて手にし、一気に盛り上がるBOYSたち。物語はパリを舞台にしたラブストーリーだ。
台本を読みながら、「ちょっとそれ無理あるかも!いや、見えないこともないッ!」とBOYSたちが案を出し合い稽古場にある道具で“パリの情景”を作り上げ、劇中劇を演じる場面では、BOYSの「やっと芝居ができる!」という歓びと高揚感が押し寄せ、観ているこちら側も一気に気持ちが高まっていく。
そしてこの劇中劇で“本物の女性”役として急遽駆り出される寮母・君原佳江を演じる愛華みれが、元宝ジェンヌの煌きを発揮し、見どころのシーンにもなっている。

「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸
舞台「宝塚BOYS」team SKY 撮影:桜井隆幸

BOYSたちを見守る大人たちも魅力的。
劇団内、観客などの大半が男子部に反対する中、彼らの担当者であり男子部を発足した池田和也(山西惇)は、消えては立ち上がる企画に一喜一憂するBOYSたちを鼓舞し、励まし続ける。
寮母の君原(愛華みれ)も、毎日彼らのまかないを用意しながら母のような眼差しで優しく見守り続ける。
そんな二人にもかつてはそれぞれに“宝塚大劇場”という場所に憧れた過去があり、叶えられなかった自分たちの夢があったからこそ、BOYSたちの夢を懸命に支え続けたいという想いがあったのかもしれない。

男子部は9年間、日の目を浴びることなく“解散”の運命を辿る。
彼らは自らに言い聞かせる、「俺たちは闘う場所を間違えたんだ。だってここは、“宝塚”なんだから」――。

「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸
舞台「宝塚BOYS」team SKY 撮影:桜井隆幸

「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸
舞台「宝塚BOYS」team SKY 撮影:桜井隆幸

ラストにBOYSたちが繰り広げる“幻のレヴュー”には万感の想いが込みあげる。
大階段ならぬ小階段が登場し、黒燕尾姿のBOYSたちが魅せる歌とダンスは、これまでのBOYSたちの奮闘と挫折を共に見守ってきた観客にとっても特別な時間となるだろう。もしかしたら、“ありえたかもしれない”彼らの人生を、こんな形で観ることができるなんて…!
演劇という魔法の醍醐味を大いに実感できること請け合いだ。

「宝塚BOYS team SKY」舞台写真 撮影:桜井隆幸
舞台「宝塚BOYS」team SKY 撮影:桜井隆幸

奇しくも、現在東京宝塚劇場で上演されている雪組公演のショー、『Gato Bonito!!』では、ダンサーの星野を演じる中塚皓平が振付を手掛けている。
筆者はTeam SKYのゲネプロを拝見した翌々日にこの雪組公演を観る機会に恵まれたが、これまでにない、様々な想いがよぎる宝塚観劇となった。

『宝塚BOYS』は8月19日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスにて上演。
その後、名古屋、久留米、大阪と公演は続く。

舞台芸術を愛する全ての人に見てほしい作品だ。

(文:古内かほ

公演情報

舞台「宝塚BOYS」

原案:辻 則彦 <「男たちの宝塚」(神戸新聞総合出版センター刊)>
脚本:中島淳彦 演出:鈴木裕美
協力:宝塚歌劇団 企画・製作:キューブ

出演:
☆team SEA
良知真次、藤岡正明、上山竜治、木内健人、百名ヒロキ、石井一彰、東山義久
愛華みれ、山西 惇

☆team SKY
永田崇人、溝口琢矢、塩田康平、富田健太郎、山口大地、川原一馬、中塚皓平
愛華みれ、山西 惇

東京公演 2018年8月4日(土)~19日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス

※各地公演はteamSKYのみ
名古屋公演 2018年8月22日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
久留米公演 2018年8月25日(土)~26日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
大阪公演 2018年8月31日(金)~9月2日(日) サンケイホールブリーゼ

チケット一斉発売:2018年6月23日(土)

公式サイト
舞台「宝塚BOYS」

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