ミュージカル「黒執事」古川雄大、内川蓮生

豪華客船の華やかさと物語の深層に迫る展開に息を呑む…!『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-』観劇レビュー

ミュージカル「黒執事」
ミュージカル「黒執事」古川雄大、内川蓮生

豪華客船の華やかさと物語の深層に迫る展開に息を呑む…!『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-』観劇レビュー

『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-』が2017年の大晦日、赤坂ACTシアターにて開幕されました。
本作は人気ダークファンタジー漫画「黒執事」をミュージカル化した作品。通称【生執事】と呼ばれ、原作同様舞台版も非常に人気の高い2.5次元(漫画やアニメ、ゲームなどを原作・原案とした舞台芸術)ミュージカルです。
2009年に初演、2014年まで主人公セバスチャン・ミカエリス役を松下優也さんが務め、2015年からは同役を古川雄大さんが演じています。

本作は原作でも屈指の人気を誇る“豪華客船編”の舞台化となります。
セバスチャンは品位・教養・武術・料理・容姿など、全てにおいて“完璧な執事”。でもその正体は“悪魔”―、というキャラクター。まさに“漫画から抜き出てきた”かのようなプロポーション、身のこなしで原作のキャラクターを古川さんが華麗に再現します。時折覗かせる“悪魔”の姿や、戦闘シーンで魅せる回し蹴りの美しさには現実離れした魅力が。

ミュージカル「黒執事」古川雄大
ミュージカル「黒執事」古川雄大

そしてもうひとりの主人公である、セバスチャンが仕えるファントムハイヴ伯爵家・現当主の少年、シエルを演じる内川蓮生さんは去年からの続投。まさにシエルと同世代(13歳)で、初々しさと危うさ、そしてシエルの持つ覚悟、信念をしっかりと体現する力強さが印象的で、この時期の少年ならではの魅力を感じさせてくれます。

ミュージカル「黒執事」内川蓮生
ミュージカル「黒執事」内川蓮生

ここでは初日の公演の模様をお届けしたいと思います。
(※ネタバレも含まれますので、まっさらな気持ちでご観劇されたい方はご注意ください!)

STORY

19世紀の英国。セバスチャン・ミカエリスは、名門貴族ファントムハイヴ家に仕える万能の執事。しかし、その正体は、13歳の当主シエル・ファントムハイヴと契約した“悪魔”だった。女王の密命を受け暗躍する“悪の貴族”シエルと共に、裏社会の事件を闇で片付けている。 契約が完了する最期の日まで――。
ある日、「死者蘇生」の噂を耳にしたシエルとセバスチャンは、その真相を探るうちに
「医学による人類の完全救済」を掲げる秘密結社・暁(アウローラ)学会の存在にたどり着く。
二人は調査のため、暁(アウローラ)学会の集会が開かれるという豪華客船『カンパニア号』に乗り込むが…。
華やかなはずの処女航海に隠された真実が、いま解き明かされる。

豪華客船編ならではの演出に注目!

【生執事】にかかせないキャラクター、ロンドン警視庁警部のアバーライン(髙木俊)と新人刑事ハンクス(寺山武志)の二人、通称“アバハン”が客席から登場。二人のさながら芸人さんのコントのような軽快なやり取りが客席をあたため、続いて今作の主要キャラクターであるミッドフォード一家、そしてセバスチャンとシエルが登場し、豪華客船“カンパニア号”へ乗り込むところからスタート。オープニングは豪華客船に相応しい、華やかな衣装を纏ったキャスト、そして優雅な手振り付きのナンバーと共に観客を物語の世界にいざないます。
(ここでは大掛かりで鮮やかな舞台転換も見もの。ぜひ注目してご覧ください!)

ミュージカル「黒執事」
ミュージカル「黒執事」

「原作読んでないし、ついていけないかも…」と思われている方も大丈夫。
セバスチャンがちゃんと物語のナビゲート役もしてくれますのでご安心を。できる執事です!

今作では、シエルの婚約者であるエリザベス(通称リジー)が登場。一見、シエルを振り回すきゃぴきゃぴした女の子、という印象の彼女でしたが、“蘇った死者”たちにシエルが襲われる場面では一転、婚約者を守る“闘う女の子”に豹変。二刀流を使い敵をなぎ倒していく姿は、「かっこいい……!」の一言に尽きます。リジーがどんな想いでシエルを守るために、「闘う女の子」になると決意したのか、その背景が語られるナンバーも必見です。他の女の子とは違う、という運命を受け入れ、“今の私は何でできている?”と自身に問いかける姿に、リジーの覚悟と愛情に胸を打たれます。

ミュージカル「黒執事」岡崎百々子
ミュージカル「黒執事」岡崎百々子

このリジーを魅力的に演じる岡崎百々子さん、若干14歳とは思えないほど板の上に立つ姿も堂に入っており、今後の舞台でのご活躍が楽しみになりました!

シリーズではおなじみのキャラクター、ドルイット子爵(佐々木喜英)と死神のグレル(植原卓也)が登場するシーンでは、「待ってました…!」っと言わんばかりに客席からも拍手が。かなり、“濃いい”キャラクターの両者ですが、二人が登場するたびに舞台はより一層華やかに。

ドルイット子爵が高らかに歌い、それに合わせてキャスト一同が踊るシーンは本作のお楽しみポイントのひとつ。自然と客席から手拍子も湧き、ダンスの振り付けも思わず真似したくなってしまう楽しさが。

ミュージカル「黒執事」佐々木喜英 ほか
ミュージカル「黒執事」佐々木喜英 ほか

赤髪でオネエのエキセントリックな死神・グレルを演じる植原さんはコミカルな口調や仕草で笑わせてくれるかと思いきや、戦闘シーンでは鮮やかに身体能力の高さを見せつけてくれます。(そのギャップがたまらないDEATH☆)

ミュージカル「黒執事」味方良介、植原卓也
ミュージカル「黒執事」味方良介、植原卓也

豪華客船が氷山にぶつかる…と言えば、某映画が連想されますが、グレルとロナルド(味方良介)によるパロディシーンは音楽も相まって(これはミュージカルだからこそ体感できた場面!)、笑いに包まれる場面に。重たいテーマが根底にありつつも、コミカルなシーンで楽しませてくれるのも【生執事】の魅力のひとつです。

そして今作では、アンサンブルさんたちも大活躍!以前よりも層が厚くなり、群舞のシーンの見応えはもちろん、劇中でセットの移動なども行うなど、マルチな活躍ぶりにもぜひご注目ください!

物語の深層に迫る二幕はどのシーンも必見!

二幕ではこれまで語られることのなかった、登場人物たちの“真の姿”や“過去”が描かれ、物語の深層に迫った内容に。

葬儀屋として、これまでの【生執事】全作品に出演してきたアンダーテイカー(和泉宗兵)が謎に包まれたベールを脱ぎ、いよいよ本領発揮!

ミュージカル「黒執事」和泉宗兵
ミュージカル「黒執事」和泉宗兵

そしてこれまで語られてこなかった、セバスチャンの過去――シエルと出会ってから、どのように“悪魔”からファントムハイヴ家の“完璧な執事”に成長したのか、また、シエルもどのようにファントムハイヴ家の伯爵の名にふさわしく成長していったのか、二人が互いに切磋琢磨しながら本物の執事と伯爵になっていく様がプロジェクションマッピングと役者の動きを融合させながらテンポよく描かれ、その巧みな演出方法に目を奪われました。そして気が付けば心の中で二人を応援している自分に気付かされることに…!

とくに二幕では古川セバスチャンの力強い歌声に圧倒され、その歌声には強さの中に弦楽器のような艶やかさもあり、♪嗚呼~嗚呼~~嗚呼嗚呼嗚呼~と歌う印象的なメロディーが耳に残ります。高音で歌い上げることろは聞き応えたっぷり。

ミュージカル「黒執事」古川雄大
ミュージカル「黒執事」古川雄大

セバスチャンのソロナンバーは毎回とてもドラマティックな旋律で、歌詞もセバスチャンとシエルの“関係性”を改めて観客に喚起させる作用が。各キャラクターのナンバーも軽快でキャッチ―な楽曲が多く、いつか「生執事コンサート」を開催してほしい!と感じるほどに楽曲の魅力が光っていました。

作品を重ねるごとにスケールが大きくなり、“2.5次元”というジャンルに括るのが躊躇われるほどに、ミュージカルとして多方面の魅力を備えた作品に進化し続ける【生執事】。

東京公演はすでに終了していますが、これから神戸、愛知、金沢、福岡と公演が続き、福岡公演の大千秋楽では全国の映画館でもライブビューイングが開催されるほか、動画配信サービスでLIVE配信もされるのだとか。
劇場へ足を運ぶのが難しい方、「生執事ってどんな作品なの?」と気になっている方は、ライブビューイングやネット配信サービスでその魅力を体験してみてはいかがでしょうか。

ミュージカル「黒執事」
ミュージカル「黒執事」

公演情報

『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania-』

原作:枢やな(掲載「月刊Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
演出:児玉明子
脚本:Two hats Ltd.

出演:古川雄大 内川蓮生
植原卓也 味方良介 原嶋元久 岡崎百々子 高木俊 寺山武志
内海啓貴 秋園美緒 那須幸蔵 河合龍之介 和泉宗兵 佐々木喜英 ほか

【東京公演】2017年12月31日(日)~2018年1月14日(日) TBS赤坂ACTシアター
【兵庫公演】2018年1月19日(金)~1月22日(月) 神戸国際会館こくさいホール
【愛知公演】2018年1月26日(金)~1月28日(日) 江南市民文化会館
【石川公演】2018年2月3 日(土)・2月4日(日) 本多の森ホール
【福岡公演】2018年2月10日(土)~2月12日(月・休) 久留米シティプラザ

公式サイト
ミュージカル「黒執事」

関連記事一覧