2017.5.10

儚さ・脆さ・危なっかしさを体感する 舞台『春のめざめ』観劇レビュー


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舞台「春のめざめ」舞台写真
舞台「春のめざめ」志尊淳 舞台写真 撮影:二石友希
 

儚さ・脆さ・危なっかしさを体感する舞台『春のめざめ』観劇レビュー

 
『春のめざめ』は19世紀末のドイツの舞台とした作品で、学校・家庭・生活の抑圧の中で葛藤する少年少女の姿を描いた戯曲で1891年出版、1906年に初演された作品です。この戯曲をもとにしたミュージカル版は2006年にブロードウェイで開幕し、第61回トニー賞でミュージカル作品賞を含む8部門受賞。劇団四季が2009年に日本初演したのを覚えている人も多いのではないでしょうか。

舞台「春のめざめ」舞台写真
舞台「春のめざめ」大野いと 舞台写真 撮影:二石友希

200席弱の大スタジオでの公演ということで、舞台としての密度はかなり高め。役者との距離が近い!

客席に一歩入って目に入るのはまず客席。そしてほぼ素のままの舞台面。
緞帳なし袖幕なし、最前列と舞台面との段差なし。スタジオの間口とギャラリーをめいっぱい舞台面として使っています。そして物理的に幕は上がらないけれど、舞台の幕が上がってからもう目玉が足りません。自分の目玉が広角レンズじゃないことを恨みます。それぐらい舞台面で少年少女役の役者たちは動き回ってるのです。袖幕なし、すなわち、舞台面からハケることほぼなし。

舞台「春のめざめ」舞台写真
舞台「春のめざめ」舞台写真 撮影:二石友希

ストーリーこそ志尊淳演じるメルヒオール、大野いと演じるヴェントラ、栗原類演じるモーリッツそれぞれにフォーカスされているシーンはありますが「群像劇」である今作品。
他の友人たちもハケることなくその場にいるのです。

しかもミュージカル版では舞台上にも客席があり、舞台上の客席にも出演者が座るという演出がなされていましたが、今回のストレートプレイ版でも客席やステージフロアから役者が登場。この近さが観客にも群衆の一人という感覚を味わわせようとしているとしたら憎い演出です。

舞台「春のめざめ」舞台写真
舞台「春のめざめ」栗原類・中別府葵 舞台写真 撮影:二石友希

いわゆる舞台美術として存在しているのは下手袖から舞台奥、上手奥までぐるっと、ギャラリーに腰高ぐらいまで届く高さの囲んでいる透明な壁。壁の中と外、ギャラリーの上と下の舞台面。同じ世界に生きているはずなのにそこには見えないけれど明確にある壁と差。破れない壁、超えられない高さ、それが大人の世界と子供の世界。壁というのがいかにも初演がベルリンなだけあってドイツ的な表現なのかしら、と思いつつもその壁にぶち当たり、壁の中でもがき苦しむ子供たちの姿。そしてそれを高みの見物と決め込む大人の姿。

透明な箱庭で守ることが正しいのか、飼い殺すことが正義なのか。作中で取り扱われているテーマー性の目覚めや自殺、十代の妊娠などーについて大人が悪で子供が正しいなどと勧善懲悪や白黒つけることがや理解するとかそういうのは目的ではなく、脆さとか儚さとかもどかしさとかを一緒になって体感するための芝居かなと思いました。

舞台「春のめざめ」舞台写真
舞台「春のめざめ」栗原類・中別府葵 舞台写真 撮影:二石友希

出演者は作中の狂言回し役とも言えるイルゼ役の中別府葵の存在感が最高に素晴らしくて、すっと舞台面を横切るその瞬間目を惹きます。「子供の世界」の中で「子供」でも「大人」でもな異質な存在を好演していました。

 
本作は現在KAATで上演中。
その後、京都、北九州、兵庫で上演されます。

 
このレビューを書いたのは

藤田侑加
兵庫県神戸市出身。武蔵野美術大学で舞台美術を専攻後、卒業後演劇の制作として活動を開始。現在はフリーで演劇の企画・広報・制作から海外の演劇祭などにも参画中。
ホームページ

 

公演情報

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『春のめざめ』

【原作】フランク・ヴェデキント  
【翻訳】酒寄進一
【構成・演出】白井晃(KAAT神奈川芸術劇場 芸術監督)

【出演】志尊淳 大野いと 栗原類
小川ゲン 中別府葵 北浦愛
あめくみちこ 河内大和 那須佐代子 大鷹明良 ほか

2017年5月5日(金・祝)~23日(火)/KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
2017年5月27日(土)・28日(日)/ロームシアター京都 サウスホール
2017年6月4日(日) /北九州芸術劇場 中劇場
2017年6月10日(土)・11日(日)/兵庫県立芸術文化センター

公式サイト
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『春のめざめ』

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