2017.4.17 

なんだか不思議な感覚になる! 内野聖陽「ハムレット」観劇レビュー



舞台「ハムレット」撮影:引地信彦
舞台「ハムレット」内野聖陽と貫地谷しほり 撮影:引地信彦
 

なんだか不思議な感覚になる! 内野聖陽「ハムレット」観劇レビュー

 
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」「尼寺へ行け!!!」
など、ハムレットといえば・・・と台詞が浮かんでくる方も多いのではないでしょうか?
日本人にとって、とても馴染みの深いシェイクスピアの四大悲劇の1つであるハムレット。
ところが、今回のハムレット・・・なんだか印象が違う!!なんか違う!!という、新しい不思議な感覚を味わいました。

そんな、東京芸術劇場で上演中のジョン・ケアード版「ハムレット」の観劇レビューを、青年座On7の尾身美詞がお届けします。

 
舞台「ハムレット」内野聖陽と浅野ゆう子 撮影:引地信彦
舞台「ハムレット」内野聖陽と浅野ゆう子 撮影:引地信彦

 
ジョン・ケアード氏といえば、日本では「レ・ミゼラブル」の演出でおなじみですね。
そんなジョンはイギリスでは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで名誉アソシエイトディレクターを務められ様々なシェイクスピア作品で伝説を作り上げられてきた、シェイクスピアを知り尽くした演出家なのです!
2000年には英国ナショナルシアターで名優サイモン・ラッセル・ビールの主演により演出した自身の代表作だそうで、今回は日本のための斬新な解釈で挑む!とのこと。

また、ハムレット役の内野聖陽さんとジョン・ケアード氏はこれまで4作品でタッグを組んでいます。
「ベガーズ・オペラ」を鑑賞したとき・・・内野さんのあまりの魅力的な姿に悶絶したことを思い出し・・・、一度はハムレットを演じるべきだ!とジョンが強く勧め実現したと聞けば、期待せずにはいられません。

では・・・なんか違う!って何が違うの?ということで、私個人が感じた新感覚ポイントをお伝えしましょう。

 

サイドシートに座ると、正面に出番を待っている俳優陣が

まず劇場に入ると、舞台エリア中央にシンプルな木目調のやおや舞台があり、その舞台を挟むように両サイドにも客席が。
片側は観客が座り、片側は演奏者がいるだけでガランとした客席なのですが…なんと、自分のシーンが終わるとキャスト陣がその片側に座っているではありませんか!
ハムレットは狂気を演じるという<演じること>についての芝居でもあり、「実生活」と「舞台上で演じられる生」を巡る物語であるとジョン・ケアード氏は語られています。舞台でただ荘厳なシェイクスピア劇が上演される、という形ではないのも見所のひとつ。
ステージサイドシートに座ると、正面には出番を待っている俳優陣が居て、より近くで俳優の芝居を体感でき、また違った楽しみ方が出来るんだろうな!と思います。

舞台「ハムレット」加藤和樹 撮影:引地信彦
舞台「ハムレット」加藤和樹 撮影:引地信彦

次に、ハムレットは通常かなり多くの役者が出演しますが、今回のハムレットは14人という少数のキャストで演じられます。
ほとんどの役者は複数の役を演じられますが、そのダブリングの意味を考えながら観るのも楽しみの一つです。
ハムレットの内野さんでさえ、他の役を演じられるのです。どの役とどの役が対なんだろう?などと予想しながら観に行くなんてことも楽しめるかもしれませんね。
そんな中、ホレイショー役の北村有起哉さんのみ、ホレイショーの一役だけを演じられるのですが…これが効果満点でラスト、ゾクッとしました。

舞台「ハムレット」北村有起哉 撮影:引地信彦
舞台「ハムレット」北村有起哉 撮影:引地信彦

また日本版ということで、音楽には尺八の藤原道山氏の生演奏が入り、衣裳も和服を思わせる美しい衣裳で、和の雰囲気が漂います。國村隼さんは敵役のクローディアスと亡き父王の亡霊の2役を演じられるのですが、父王の亡霊は「能」を思わせるような重工な静々とした動きで、随所に和のテイストが感じられます。

照明音響などもさすが!のスタッフワークで独特の世界観が創り上げられていますが、中でもイデビアン・クルーの井手茂太さんのムーブメントが織り交ぜられることにより、さらに不思議な効果が!何もない空間から、たった14人の俳優たちにより、壮大なハムレットの世界が広がっていく…ということを感じさせるオープニングムーブメントは秀逸でした。

 

キャラが人間臭いっ!

そして、なんといっても、俳優陣が演じるキャラクターがとてもとても人間臭いっ!
どのキャラクターも心の襞を繊細に丁寧に演じられていました。
例えば、通常悪役とされているクローディアス(國村隼)や王妃ガートルード(浅野ゆう子)も、王や王妃としての威厳や懐の深さ、優しい人柄、罪悪感や苦悩など色々な面が見え、とても人間としての造形が深かったり、
ハムレットがオフィーリア(貫地谷しほり)へ「尼僧院へ行け!」と言い放つシーンも、オフィーリアへの愛情や葛藤や色々な感情が繊細に描かれていたり…様々なシーンで目から鱗、のような新しい感覚を覚えました。

舞台「ハムレット」内野聖陽と國村隼 撮影:引地信彦
舞台「ハムレット」内野聖陽と國村隼 撮影:引地信彦

豪華キャスト陣が演じるキャラクターが人間味溢れているからこそ、これまでのハムレットとは一味違うように感じ、そして、それぞれのキャラクターの感情や心の流れに共感出来るからこそ、ああ、だから悲劇なんだな。とラストに深く感覚的に納得しました!
なんだか感覚、感覚とばかり書いていますが…やはり演出家が日本人でないために、セリフや頭で理解させるのではなく、感覚的に理解出来る作品になっているんだな~なんてことも実感しました。

 

ハムレットが初めての方もきっと楽しめる!

私自身、そんなにハムレットをよくよく知っていたり勉強したりなんてしていないのに…なんとなく「ハムレット」という固定概念みたいなものがあったんだな~とも感じ、そんな発見も面白かったです。

知ってる方が面白いのかな~ハムレット見たことがないのにな!というハムレットが初めての方も、勿論何の気兼ねもなく楽しめますし、シェークスピアの悲劇なんて仰々しそうで難しそう~なんて思っている方も、より分かり易く親近感を持ち楽しめると思います!

斬新な解釈で挑んだ、東京芸術劇場渾身の「ハムレット」
ぜひ観劇された方々と語り合いたいなと思う作品です。4月28日まで東京芸術劇場にて!

 
このレビューを書いたのは

尾身美詞
おみ みのり|女優。青年座所属、新劇女優7人ユニットOn7(オンナナ)メンバー。趣味は銭湯めぐり。観劇。うたうこと。
次回公演⇒二兎社特別企画 ドラマリーディング『走り去る人たち』2月3日東京芸術劇場シアターウエスト

Twitter @minoringo_go

 

公演情報

舞台「ハムレット」

作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳 松岡和子
上演台本 ジョン・ケアード、今井麻緒子

演出:ジョン・ケアード

音楽・演奏:藤原道山
※4/16(日)13:00、4/22(土)13:00・19:00、4/23(日)13:00を除く

出演:
内野聖陽
貫地谷しほり
北村有起哉
加藤和樹
山口馬木也
今 拓哉
大重わたる・村岡哲至・内堀律子・深見由真
壤 晴彦
村井國夫
浅野ゆう子
國村 隼

2017年4月9日(日)~4月28日(金) ※4月7日(金)・8日(土) プレビュー公演
東京芸術劇場プレイハウス

公式サイト
舞台「ハムレット」

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