舞台『ChangeTheWorld』

松岡充主演!舞台「Change the World」で現代社会の在り方を問う!

舞台『ChangeTheWorld』©秦建日子 ©2024 舞台 Change the World 製作委員会舞台「Change the World」で現代社会の在り方を問う!

渋谷ハチ公前広場の爆弾テロ事件の2年後に起きた、小学校の女性教師殺害事件。刑事・世田志乃夫は、捜査を進めるうちに「この殺害事件は、テロ事件と関係があるのでは?」と疑い始めます。捜査を続けた彼が見つけた「真実」とはなんだったのか?

次々と不可思議な事件が起こり、観る者をその世界に引きずり込むミステリー作品「Change the World」が、松岡充さんを中心とした豪華キャストで、2024年6月8日(土)より東京・サンシャイン劇場にて開幕しました!

脚本を担当したのは、「HERO」、「アンフェア」 など、幅広い作品で人々の心を掴んできた、小説家、劇作家、演出家、脚本家、映画監督の秦 建日子さん。本作の原作は、彼の小説『And so this is Xmas』(映画版タイトル『サイレント・トーキョー』)の続編です。

本記事では、ゲネプロの様子を記者会見での出演者のコメントも交えてご紹介します。

出演者の熱量が光る、ミステリー作品!

『Change the World』舞台写真

 
冒頭、赤いワンピースの女性(福圓美里さん)が感情のない声で、各地で起きた戦争や事件について語り始めます。戦争への怒りなのか、悲しみなのか、それとも訴えなのか…彼女の声ではその意図を判断することはできません。しかし事件の数々、被害者の多さを語る彼女の言葉に胸が締め付けられます。


『Change the World』舞台写真
 
そんな中で登場するのは、松岡充さん演じる刑事・世田志乃夫。けだるそうな佇まいの中に色気を感じるのは、松岡さんの魅力でしょうか?劇中では、真実を突き止めるために奔走する姿を、格好良さを失わず、しかし地に足の着いた刑事としてリアルに演じます。

そんな彼に電話をかける形で登場するのは、剛力彩芽さん演じる天羽史。世田の新しい相棒刑事です。強烈なインパクトがあるピンク髪の彼女は、常に飛び跳ねているような歩き方で、大きな声で笑い、はっきりとした物言いをするので、溌溂とした印象を与えます。つかみどころのない個性的なキャラクターを巧みに演じていました。


『Change the World』舞台写真
 
頭の回転が早い役なので、セリフ量は膨大ですが、スラスラと言葉を発する剛力さん。ゲネプロ後の記者会見で、松岡さんが「剛力さんは、ブリーチを2回もして地毛をピンク髪にしたんです。気合いを感じました」と語っていたことからも、彼女の舞台への熱量が伺えます。

小学校の女性教師・秋山玲子殺人事件の現場に直行する世田と天羽。そこで登場するのが、金子 昇さん演じる鑑識官の指原譲です。茶色いコートがトレードマークの彼。世田と昔馴染みである様子が、力の抜けた芝居から伝わってきます。指原譲と行動を共にしている、新宿署の刑事・栗尾を演じるのは、日向野 祥さん。現場慣れした刑事を好演しつつ、指原譲と共に真実を突き止めようと熱い芝居を繰り広げます。

殺人事件現場の調査が終わると、シートに覆われていた秋山玲子が起き上がり、彼女が殺害された日の回想シーンへと変わっていきます。場面転換すらもショーの一場面のように見せる演出が面白く、息つく間もありません。

回想シーンの直後、テーマソングである「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」が流れて、世田が登場。松岡さんの歌声を劇中歌として堪能できます。ライブ会場に来たような感覚になりますが、歌っているのはあくまでも“世田”であるところが松岡さんのお芝居の素晴らしさでしょう。


『Change the World』舞台写真

 
秋山玲子が勤めていた学校を訪ねると、大林素子さん演じる校長が登場。丁寧で的確な物言い、品のある立ち居振る舞いが、校長らしさに繋がっていました。さらに秋山玲子の担当生徒だった相沢愛音を演じる宮岡大愛くんも登場。本を読んでいるときの影の薄さや、両親に囲まれているのに幸せそうでない表情で、彼の不気味さを繊細に表現します。

世田の元相棒で、渋谷ハチ公前広場の爆弾テロ事件で心に傷を負っている泉大輝を演じるのは、辰巳雄大さん。彼は誠実で真っ直ぐな印象。事件のトラウマが原因で粗相をしてしまった後は、彼の苦し気な泣き声が劇場中に響きます。記者会見で「事件のトラウマを抱えている方のインタビューなどを漁って、心境を理解する努力をした」と語っていた辰巳さんらしいリアルな芝居でした。

そんな泉を助けてくれるのが、渡辺みり愛さん演じる高橋真奈美で、後の泉の恋人です。爆弾テロ事件の立役者である彼女も実際に事件を目撃していたので、泉の気持ちを理解してくれます。出会いの場面は短いですが、2人の関係性が後々変化していくであろう様を的確に表現していました。

舞台『ChangeTheWorld』
『Change the World』舞台写真

今回の事件のキーパーソンとなるアイコを演じるのは福圓美里。赤いワンピースに身を包み、感情を殺して不気味なほど綺麗な声で話す彼女は、現実世界とは一線を画しています。冒頭から声のインパクトが強く、何度出てきても恐ろしさを感じるのは、声優である福圓美里の実力の高さゆえでしょう。

世田の家を訪ねてくるのは、岩崎楓士くん演じる元義妹の息子・遠谷未来。達観していて子どもらしくない少年役を、身振り手振りをつけて好演していました。大人のような口調で話すうえにセリフの量も多い役ですが、彼のキャラクターを的確に表現しています。また世田が自分を可愛がる様子を、どこか客観的に見ているところも印象的です。

暗転の少ない、テンポ感抜群の舞台

ストーリーはもちろんのこと、舞台演出も印象的だった本作。シンプルな舞台セットですが、映像や音、小道具を駆使して、各場面をリアルに再現していました。また暗転がほとんどなく、テンポよく話が進んでいくので、「彼はどうなった?」「あの事件は何が原因だ?」と、思わず体を乗り出しそうになるほどのめり込むことができます。

客席降りが多く、観客もこの物語の当事者になったような気持ちで、物語に没頭できるところが本作の魅力。ところどころにコメディー要素が含まれていたり、個性的なキャラクターがいたりすることで、頭を必死で回転させながら観ていた観客の肩の力をスッと抜いてくれるところも、最後まで見入ることができるポイントでしょう。

「おめでとう。君が、世界を変えるんだ」の言葉の意味とは…?

そしてこの物語の鍵となるのが、AR爆破シミュレーション 「アイコ」 というスマホ用アプリケーションの存在です。戦争やテロ事件で多くの人が亡くなり、泉のように事件のトラウマを抱えている人が大勢いるにも関わらず、仮想空間で爆破できるアプリが作り出されてしまう現代社会…皮肉なものです。

そして劇中でたびたび出てくる「おめでとう。君が、世界を変えるんだ」の言葉の意味とは…?

AI技術の発展や承認欲求など、現代社会特有のテーマを大きく取り上げた本作。話の展開は衝撃的ですが、彼らが訴える言葉に耳が痛くなるのは、私自身にも思い当たる節があるからでしょう。ご覧になるあなたにも刺さる言葉かもしれません。一人一人が被害者であり加害者である…観劇後、今の世の中の歪みやアイコの存在に思いを馳せてみると、より物語を理解できるのではないかと思います。

本作は6月16日(日)まで東京・サンシャイン劇場で上演されます。
詳細は公式サイトで。
http://askcoltd.com/ctw-stage/

(文:山本萌絵

公演情報

舞台『Change the World』

【原作・脚本】秦 建日子 「Change the World」(河出書房新社 刊)
【演出】橋本昭博
【主催・製作】2024舞台 Change the World 製作委員会
【制作】Ask
【テーマ曲】SOPHIA 「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」(TOY’S FACTORY)

【出演】松岡充 辰巳雄大(ふぉ~ゆ~) 剛力彩芽
福圓美里 田中尚輝 塚本凌生 平山佳延 杉江優篤 渡辺みり愛 長谷川里桃 高橋明日香 岩崎楓士 宮岡大愛 林千浪 甲斐千尋 塩出純子 石井真司 塩見奈映
槙尾ユウスケ (かもめんたる) 亀岡孝洋 ぎたろー 吉田晃太郎
藤原習作 築山万有美  大林素子 金子昇 ほか

 

2024年6月8日(土)~16日(日)/東京・サンシャイン劇場

 
公式サイト
http://askcoltd.com/ctw-stage/

チケットを探す
ローソンチケット
e+(イープラス)

関連記事一覧