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“妙ージカル”の世界へようこそ!シェイクスピアの喜劇がポップでエネルギッシュに描かれる音楽劇『Love’s Labour’s Lost』観劇レビュー

音楽劇『Love’s Labour’s Lost』石川由依、内藤大希 写真:中村彰“妙ージカル”の世界へようこそ!シェイクスピアの喜劇がポップでエネルギッシュに描かれる音楽劇『Love’s Labour’s Lost』観劇レビュー

「奇妙なミュージカル」=「妙ージカル」として演劇ファンから愛されている劇団、FUKAIPRODUCE羽衣の糸井幸之介さんが、シェイクスピアの『恋の骨折り損』を音楽劇として大胆に、そして鮮やかに甦らせた『Love’s Labour’s Lost』が11月17日、CBGKシブゲキ!!にて幕を開けました。

シェイクスピア×糸井幸之介×砂岡事務所プロデュース公演という魅力的なタッグで描かれる本作。ここでは、初日の公演の模様をお届けしたいと思います!


音楽劇『Love’s Labour’s Lost』 写真:中村彰

『Love’s Labour’s Lost』、通称『LLL』は、韻を踏んだ言葉遊びが満載の、シェイクスピア初期の喜劇作品です。

STORY

ナヴァール王国の若き王は、友人の貴族3人を集め、学問・芸術に打ち込むため3年間女性との交際を絶ちの禁欲生活をおくり学問に励むと誓い合う。
ところが、その直後フランス国王の使者として、フランスの美しき王女が3人の侍女を従えて、借金の返済を機に領土の返還を求めてやってくる。
4人の若者は4人の美女にそれぞれ恋心をいだくのだが・・・・

音楽劇『Love’s Labour’s Lost』内藤大希 写真:中村彰

ナヴァール王国の王を演じるのは、ミュージカル『レ・ミゼラブル』でのマリウス役の好演も記憶に新しい内藤大希さん。
彼は名声と国の発展を手にするため、友人貴族のビローン(土屋神葉)、ロンガヴィル(鐘ヶ江洸)、デュメイン(鈴木陽丈)の3人と共に、“学芸に打ち込むため3年間女人禁制の禁欲生活をおくる”と誓い合うシーンから物語は始まります。

シェイクスピアならではの詩的な長い台詞に加え、壮大なメロディーかつリフレインが印象的な楽曲を、内藤さんが力強い歌声で聞かせます。
冒頭からさっそく、独特に残る歌詞と中毒性のある“糸井ワールド”全開の楽曲、そして独創的な木皮成さん振付けに、妙ージカルの一ファンとしてワクワクせずにはいられませんでした!


音楽劇『Love’s Labour’s Lost』 写真:中村彰

この4人の男性陣の衣装、中世ヨーロッパの装いではなく、スタイリッシュなスーツ姿なのもおもしろい試み。現代の洋装だからこそ、身近にいそうな“等身大の”男性の姿が浮かび上がってきます。
物語のキーマンとなるビローンを演じる土屋神葉さんの身体能力の高さにもぜひ注目していただきたいところ!ちょっと笑ってしまうようなおもしろい振付けも、キレッキレな動きで魅せてくれます。


音楽劇『Love’s Labour’s Lost』石川由依 写真:中村彰

彼らを虜にする、フランスの王女(石川由依、國立幸のWキャスト)率いる女子チームも魅力的なキャスト陣が集結。
この日の王女役は石川由依さん。声優としてご活躍されているというだけあって、その澄んだ美しい声は王女としての気品に満ちています。
王女の侍女・ロザライン(田上真里奈)、アライア(和久井優)、キャサリン(吉田愛)の三人もそれぞれに個性が光るキャラクターを好演。テンポよく繰り広げる彼女たちの機智に富んだ会話は、ずっと聞いていたくなるほど魅惑的です!


音楽劇『Love’s Labour’s Lost』 写真:中村彰

男性陣のスーツに対して、女性陣はクラシカルなシルエットが印象的なワンピース姿。各々の個性をより引き立てた衣装のセレクションで、こちらもとっても素敵。
キャサリン役の吉田さんの、ダンサーならではの優美な踊りも作品に更なる彩りを与えています。

思わず応援したくなる!滑稽な姿は“恋”の副産物

音楽劇『Love’s Labour’s Lost』國立幸 写真:中村彰

本作の見どころは、なんといっても、「意中の女性を手に入れたい!」と恋に突っ走る男性陣のドタバタ・ラブコメディーな部分と、それに対する女性陣たちの何枚も上手に彼らを“かわして”いく、男女の対比が鮮やかに描かれているところ。

男性陣それぞれが、実は誓いを破って“恋している”ことが互いにバレ、全員で結託して求愛の戦略を練る様は、「バカだなあ(笑)」と思いつつも、その懸命な姿はおかしみと可愛らしさに溢れていて、思わず彼らの恋路を応援したくなってしまいます。


音楽劇『Love’s Labour’s Lost』 写真:中村彰

とりわけ、男性陣がロシア人に変装して女性陣を口説きに行くシーンは、目にも耳にもたのしい場面!
ジンギスカンの『めざせモスクワ』の軽快でスピーディーなメロディに載せ、怒涛の台詞劇で女性たちが巧みに男性陣を翻弄していく様は「あっぱれ!」としか言いようがありません。
“男女の愛と性”、そしてそこから浮き上がる“男と女の間にある分かち合えない溝”を自身の劇団で描き続けてきた糸井さんならではの手腕が光るシーンと感じました。

登場人物全員が愛おしい気持ちに

音楽劇『Love’s Labour’s Lost』 写真:中村彰

恋の物語を彩る周囲の登場人物たちも実に魅力的。
宮廷に出入りするスペイン人のアーマードーを演じる谷山知宏さん、彼の恋敵でもあるコスタード役の吉田翔吾さんは、物語を転がす役割として存在感を遺憾なく発揮。彼らに愛される村娘・ジャケネッタ演じる新部聖子さんと、王女の側近・ボイエットを演じる澤田慎司さんは、FUKAIPRODUCE羽衣のメンバーでもあり、舞台上で“糸井ワールド”をしっかり支える存在に。劇中劇ではアーマードー、コスタード、モス(藤田峻平)の活躍ぶりも見ものです。観終わったあとはきっと、すべての登場人物たちが愛おしく感じられるはず!

果たして、彼らの迸る恋心は女性陣のハートを射貫くことができたのか……。この恋路の結末は、ぜひ劇場で目撃していただきたいと思います。


音楽劇『Love’s Labour’s Lost』 写真:中村彰
ポップな音楽と遊び心のある詩的な歌詞、そしてフレッシュな役者陣たちの躍動感を存分に味わえる本作は、シェイクスピア好きはもちろん、ミュージカルがお好きな方にもぜひ観ていただきたい作品です。

公演は11月25日(日)まで、CBGKシブゲキ!!にて上演。
これを機に、ぜひ“妙ージカル”の世界を体験してみてはいかがでしょうか。

(文:古内かほ

公演情報

砂岡事務所プロデュース 音楽劇『Love’s Labour’s Lost』(恋の骨折り損)

【作】ウィリアム・シェイクスピア
【翻訳】松岡和子(ちくま文庫)
【演出・音楽】糸井幸之介

【出演】石川由依 國立幸 ※Wキャスト 内藤大希 鐘ヶ江洸 土屋神葉 吉田翔吾 鈴木陽丈 田上真里奈 和久井優 藤田峻平 吉田愛 新部聖子 澤田慎司 谷山知宏

2018年11月17日(土)~11月25日(日)/東京・CBGKシブゲキ!!

公式サイト
音楽劇『Love’s Labour’s Lost』

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