井上ひさしが生涯追い求めたユートピアの原点がここに!/舞台「十一ぴきのネコ」観劇レビュー
井上ひさしが生涯追い求めたユートピアの原点がここに!
馬場のぼるの絵本「11ぴきのねこ」をもとに、井上ひさしと作曲家宇野誠一郎のコンビで書き上げたのが本作「十一ぴきのネコ」。
テアトル・エコーで初演(71年/第6回斎田喬戯曲賞受賞)、その後井上ひさし自身が改定し、こまつ座で上演(89年)された。
本作は初演版の戯曲での再々演となる(2012年に再演)。
いつもお腹をすかせていた野良猫たちが、
ユートピアを求めて大冒険の旅に出る。
お腹をいっぱいにする目的を果たしたその後は・・・?
40年以上も前に書かれた作品でありながら、いつの時代にも通じる普遍的なテーマが描かれる。現代の日本人に痛烈な警鐘を鳴らしているのだが、登場人物が「ネコ」で、痛烈なメッセージも「言葉遊び」と「音楽に乗せて」語られることで、俯瞰的に楽しめるのが本作の魅力だろう。
味のあるキャストに、楽しい音楽!
キャストは、演出の長塚圭史が「野良猫にピッタリで、ある種の“くすみ”をもった人たち」(公式パンフレットより)と語る通り、味のある俳優陣が集結!客席に降りてくるので、間近で芝居を楽しめるのは嬉しい演出だ。ただし、ミュージカルと称する通り、かなり音楽(歌)が占める割合が多いので、頑張って歌っていると感じるのはご愛嬌か。
そして、なんといっても生演奏がイイ!舞台下手で、ピアノを演奏する荻野清子(楽曲のアレンジも担当)は、「大根を抜く音」など様々な効果音も担当。
舞台上の役者さんと呼吸を合わせ、緩急自在に奏でる音楽・効果音が楽しい!ライブであることの良さを実感させてくれる。
子ども料金が破格の1,100円!
副題に、「子どもとその付添いのためのミュージカル」謳っているが、驚くのは子供料金の価格だ。なんと破格の1,100円!(3歳以上~小学生)
プロ集団の演劇公演では、なかなか目にしないその価格に、「子ども」に向ける本気の姿勢が伺える。
ぜひ多くの「子どもとその付添い」の方に観てほしいものだ。
(文:山谷真紀子/エントレ 観劇日:2015年10月8日 昼公演)
公演情報
舞台「十一ぴきのネコ」
【作】井上ひさし
【演出】長塚圭史
【出演】北村有起哉 中村まこと 市川しんぺー 菅原永二 金子岳憲 福田転球 大堀こういち 木村靖司 辰巳智秋 田鍋謙一郎 山内圭哉 勝部演之 / 荻野清子(ピアノ演奏)
2015年10月 1(木)~10月17日(土)/東京・紀伊國屋サザンシアター
2015年10月24(土)~10月25日(日)/大阪・シアターBRAVA!
2015年11月 7(土)~11月 8日(日)/福岡・北九州芸術劇場 中劇場