“幸せの秘密は目の前にある” ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』観劇レビュー
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』 写真提供/東宝演劇部“幸せの秘密は目の前にある” ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』観劇レビュー
「ダディ・ロング・レッグズ」は、ジーン・ウェブスターの小説を原作にしたミュージカル。(脚本・演出:ジョン・ケアード/翻訳・訳詞:今井麻緒子) 知的で紳士、けれど一風変わった若き慈善家・ジャーヴィス(井上芳雄)と孤児でありながら溌剌として聡明なジルーシャ(上白石萌音)との心温まる恋の物語です。
手紙でやりとりされる交わらない2人の生活
物語はジルーシャが書いたジャーヴィス宛の手紙を重ねることにより展開していきます。井上さんと上白石さんの二人芝居形式。上白石さんはその日の出来事を手紙で臨場感たっぷりに読み上げます。姿を知らないジャーヴィスに対し、ウィットを効かせてつけた呼び名は”ダディ・ロング・レッグズ”
「ねぇ、ダディ」と手紙の中で呼びかける姿がとても印象的でした。ジャーヴィス はジルーシャの興味深い手紙に驚かされながらも徐々に惹かれていき…
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』 写真提供/東宝演劇部
音楽・作詞はポール・ゴードン氏が手がけており、季節を感じるほどに鮮やかで美しい演奏。ピアノの伴奏に心が躍り、かき鳴らすギターの音に走り出したくなるような衝動を覚えました。なんといっても素敵なのはナンバーのメロディーライン。思い返しただけで感情が込み上げそうなほど、人物の胸の高鳴りや揺らぎが丸ごとメロディーに乗ってるような展開。音程の高低差がある楽曲が多いのではと感じましたが、そこはさすがのお二人。井上さんも上白石さんも音の高低を自由自在に行き来し、その上で登場人物の心情を余すことなく表現しています。
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』 写真提供/東宝演劇部
上白石さんのジルーシャは真っ直ぐで、突拍子もない行動力と等身大の少女のチャーミングさを持ち、その”お転婆さ”でジャービスを翻弄。手紙の中の独特な日記風の語り口調がとても可愛らしく、観劇後私自身も大いに影響を受けました。(ジルーシャを真似て心の中でジルーシャ口調で誰かに語りかけそうになるほどには虜に笑)
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』 写真提供/東宝演劇部
井上さん演じるジャーヴィスは包容力と思慮深さがあり、書斎の椅子に深々と座り足を組む姿が絵になります。ダディは出かける際ハットと杖を身に着けますがその所作も品があり素敵。まさに(隠し切れない)紳士さと大人の余裕。一方でジルーシャに翻弄されたり素直になれずムキになるかわいい姿もあり、井上さんと重なるお茶目な部分も見えました。(歌声、立ち姿からジャーヴィスそのもので、個人的には井上さんの包容力を感じる発音が好きです)
幸せの秘密は―
孤児でありながら毎日を逞しく生きていこうとするジルーシャ。自分と周囲の身の上の違いに直面しながらも悔やまず、嘆かない、未来を恐れないと力強く歌い”幸せの秘密”を見出していきます。「 瞬く間に過ぎ去る”今”を生きることよ 」という言葉は私たちに投げかけられているメッセージにも感じました。
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』 写真提供/東宝演劇部
手紙でやりとりされる交わらない2人の生活。
舞台上に2人しかいないとは思えないほど、舞台から広がっていく世界や情景がとても豊かに感じられます。
心の揺らぎが近づいたり遠のいたりしながら、互いが作用していく様子を美しい音楽と歌声と共にお楽しみください。
8月31日の千穐楽にはライブ配信も行われる予定。
是非劇場やライブ配信で堪能してください。
ライブ配信の詳細はこちら。
https://www.tohostage.com/ashinaga/stream.html
公演の詳細はこちら。
https://www.tohostage.com/ashinaga/
(文:真来こはる)
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』
【音楽・編曲・作曲】ポール・ゴードン
【編曲】ブラッド・ハーク
【翻訳・訳詞】今井麻緒子
【脚本・演出】ジョン・ケアード
【キャスト】
ジャーヴィス・ペンドルトン:井上芳雄
ジルーシャ・アボット:上白石萌音
2022年8月14日(日)~17日(水)/東京・シアター1010
2022年8月19日(金)~22日(月)/大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
2022年8月24日(水)~31日(水)/東京・シアタークリエ
公式サイト
https://www.tohostage.com/ashinaga/
チケットを探す