声、表情、ピアノ、そして想像力――黒柳徹子×岩﨑大昇『ハロルドとモード』観劇レビュー


©濱谷幸江

1971年にアメリカで公開された映画を原作に、2020年から黒柳徹子さんのライフワークとして上演されている朗読劇『ハロルドとモード』が、9月29日、EX THEATER ROPPONGIで開幕しました。

7度目となる2026年公演では、黒柳徹子さんが今年もモード役を演じ、19歳の青年・ハロルド役にはKEY TO LITの岩﨑大昇さんが出演。
武田玲奈さん、笠原秀幸さん、田中要次さん、井川遥さんが共演し、上演台本・演出をG2さん、音楽・演奏を荻野清子さんが担当されています。

初日に先駆けて開催されたゲネプロと取材会に参加してきましたので、レビューと取材会の様子を温度感そのままにお届けします。
まずは、取材会のレポートから。

またこの季節がやってきましたが、1年に1回この作品をやるのは楽しみでしょうか?

黒柳:
すごく楽しみです。毎年全部の方たちが違うので、その度に面白いなぁ~と思って、とても楽しくやらせてもらっています。

写真撮影の時にお二人のラブラブぶりが伝わってきましたが、今回の岩﨑さんはいかがでしょうか?

黒柳:
とっても良いですよね。
歌うまいし、ハンサムだし、言うことないですよね。
良い作品だと思います。

岩﨑:
言うことはあった方が嬉しいかもしれないです。

黒柳:
どんなこと? 例えば。

岩﨑:
単純なので、褒められたらうれしいです。

黒柳:
今褒めたじゃない。顔はいいし、姿はいいし、歌はうまいし……。

岩﨑:
ありがとうございます。

黒柳:
あと、なんて言えばよいの。

岩﨑:
ちょっと欲張りすぎちゃったかもしれないです。

黒柳:
この役にぴったりだから良いと思います。

岩﨑さんはいかがですか? 徹子さんとのラブストーリー

岩﨑:
めちゃくちゃ楽しませていただいています。
徹子さんの引っ張る力、牽引力がすごくて、僕はそこに身を委ねて乗っかっている。そうしている中で、自然といろんな感情とか気持ちが生まれていくのが感じられています。
モードという役は、日本中どこを探しても徹子さん以外考えられないです。

黒柳:
上手でしょ!

岩﨑:
本当に思ってます。

代々事務所の先輩がこの役をやっていらっしゃいますが、プレッシャーや先輩からのアドバイスはありましたか?

岩﨑:
プレッシャー……は、あまり感じていなかったかもしれないですね。
最初お話をいただいた時は、デビュー組の方が演られていた作品をジュニアの状態で任せていただけるというのは、すごい光栄なことだなぁ~というのはありました。
稽古に入って、現場に入って、こうやって読み合わせていくうちに、プレッシャーよりも楽しいなぁとか、そういった感情が強くなっていきました。
あと、先輩の松島君に会ったんですよ。松島君に会ったときに、「チームがものすごく優しいですし、とても温かいカンパニーだから、みんなに身を委ねたら大丈夫だよ!」と優しく言っていただきました。

今年はデビューも決まりましたし、今回も徹子さんの相手役ということで、最近はどうですか? ご自身の中で

岩﨑:
最近? どうですか……?(苦笑)
本当にありがたいです。感謝感謝、感謝としか言いようがないですね。

今年、この24歳の年は、

黒柳:
24? 若いねぇ~。

岩﨑:
24なんです。まだ若いんです。
今年、24の年はすごく、思い出に残るというか、記念すべきことが多かったなぁ~と感じていますね。
でも、本当、今までの皆さんのおかげと、本当にこういうご縁という、でっかな、おっきな感謝という気持ちしか湧いてきません。

徹子さんへの差し入れを考えていらっしゃったようですが、決まりましたか?

岩﨑:
どんなものを食べられるのだろう? 何がお好みかな? と考えていたのですが、徹子さん、意外にも何でも食べるし、たくさん食べる。

一度お食事にも行かせていただいたんですけど、途中どこか「負けちゃいけない」と思って食べていた自分がいたくらい、すごく食べてくださるので、僕が一番好きなエッグタルトを差し入れさせていただきました。

徹子さんは、KEY TO LITというグループはご存じでしたか?

黒柳:
知っていました。

岩﨑:
本当ですか?

黒柳:
だって、見てましたもん!
なんか、いっぱい出てくるし、面白い名前だなぁ~と思って、KEY TO LITというのは相当奇天烈なんだろうなぁ~と思って。

岩﨑:
わぁ~嬉しい!

インタビュアー:
どんなイメージでしたか?

黒柳:
KEY TO LITという割にはとても良い感じでした。めちゃくちゃじゃなかった。
KEY TO LITって言うけど、そんなに変に奇天烈ではなかった。ちゃんとしてた。

岩﨑:
他のメンバー、もっと奇天烈な人たちもいるので、その時はよろしくお願いします。

岩﨑さんから見て、イメージしていた徹子さんと、共演してみた徹子さんは何かイメージが変わりましたか?

岩﨑:
僕らの世代だと、徹子さんは司会者のイメージが強く、『ハロルドとモード』を現場で見ることもなかったので、実際にお芝居を見て、「わぁ~、なんて素敵な女優さんなんだ!」と。
今日とかもちょっと緊張するなぁ~と思いながら演っていたんですけど、そこをお芝居でぐっと引っ張ってくれるところが、本当にすごい役者さんなんだなぁ~というのは、僕は結構ギャップでしたね。

黒柳:
ありがとうございます。

お二人が歌っているところがすごく印象的で、とっても素敵だなぁ~と思ったんですけど、お二人の歌のシーンはいかがでしたか?

黒柳:
あそこ山場だもんね。

岩﨑:
そうですね。楽しい。

黒柳:
楽しい! 二人で歌っている時は嬉しい。

徹子さんの相手の年がどんどん若くなっているような気がしますが……

黒柳:
そうですね。一番この方が19歳という役に一番近いと思います。

インタビュアー:
どんな『ハロルドとモード』になりそうですか?

岩﨑:
どんな……?(苦笑)
作品自体がそうなんですけど、とにかくピュアだなぁって感じますね。
その場で生まれていくものが楽しみで、溜まっていって、それが大きなものになってくるという感じで、フレッシュな『ハロルドとモード』かもしれないです。

岩﨑さんは、役との共通点はありますか?

岩﨑:
役との共通点は、僕はあんまり自分では言いたくないんですが、うちのメンバーの井上瑞稀がこの作品を初演から劇場で観ていて、その瑞稀いわく、「ひねくれているところが似ている」と言っていました。

インタビュアー:
メンバーの方から、徹子さんと共演することについて、羨ましがられることはありましたか?

岩﨑:
羨ましいを超えて、恐れおののいていました。
「徹子さんと!? すごい、大丈夫!?」
僕の普段の感じからすると、失礼を犯さないか。ものすごく期待もしてくれたし、驚いてもくれたと同時に、少しの心配も垣間見えるような感じでした。

100歳までこの作品をやりたいと公言されていらっしゃいますけど、あっという間に来てしまいそうですよね

黒柳:
まだ、そんなに早くは来ない。まだ少しあります。
でも、だんだん近づいては来ますよね。とても楽しみです。
だって、100歳の時にできたら面白いじゃない。100歳の時に80歳の役を演るということでね、20も若い役演るんだから、楽しみだと思います。

岩﨑:
絶対観に行きます。

黒柳:
観に来て。

最後に楽しみにしているお客様に一言ずつお願いします。

岩﨑:
本当にものすごく素敵な、繊細で、そしてピュアで、なおかつ強い作品で。
僕が感じるのは、この9月、この季節にすごく合う。夏の終わりと季節の変わり目を感じながら、どこか心が洗われるような作品です。

朗読が初めての方とか、いろんな方がいらっしゃると思いますけど、すごいスッとした気持ちで帰って、家に帰ったら「いいなぁ~」みたいな、どこか優しい気持ちになれる作品で、歳に関係なく楽しんでいただけるかなぁと思いますので、気張らずにフラッと来るような感覚で来ていただけたらいいなぁ~と感じています。

黒柳:
今おっしゃっていただいたこと全部がその通りでございます。
それでいいです。全部おっしゃってくれました。
気持ちがいい芝居ですので、ぜひいらっしゃってください。お待ちしています。


©濱谷幸江

司会者ではない、舞台の上の黒柳徹子さんを観てみたくて

黒柳徹子さんの舞台ということで、岩﨑さんも囲み取材でおっしゃっていましたが、私もそういえば司会者としての徹子さんしか拝見したことがないなぁ~と気になり、一度拝見してみたかった!というのが、観劇のきっかけです。

朗読劇自体も今回が初めてで、どのようにストーリーが展開していくのか、正直あまりイメージを持てていなかったのですが、とても素敵な時間になりました。

朗読劇なので、動きは最小限です。
舞台上には机があり、キャストの皆さんは基本的にそこに座りながら台詞を話し、お芝居をつないでいきます。
多少の動きはあるものの、通常の舞台のように舞台全体を使って動いたり、大きな舞台転換があったりするわけではありません。
しかし、不思議なくらい冒頭からストーリーに入り込むことができ、とても新鮮な体験になりました。

朗読なのに、耳だけではなく「目」でも楽しんでいる

観終わったあとに強く残ったのは、耳だけで聴いているのではなく、やはり目でも楽しんでいる、という感覚でした。

朗読だからこそ、キャストの皆さんの表情と声から、たくさんのことが伝わってきます。
過去に舞台作品のCDを聴いたことがありますが、音だけの情報と、そこに視覚情報が加わることの違いを強く感じました。

声だけでも物語は伝わる。
でも、そこに俳優の表情や視線、姿が加わることで、ぐっと舞台に近い感覚になりました。

そして朗読劇だからこそ、舞台上ですべてが具体的に表現されるわけではなく、一部は自分の想像の中で映像が組み立てられていきます。
そこも、とても魅力的に感じました。

同じ作品を観ても、通常の舞台以上に、一人ひとりが受け取っている景色は違うのかもしれません。
だからこそ、違うメンバーと徹子さんで作られる『ハロルドとモード』が毎年公演されているんだろうなぁ~とも感じました。
今回が初めての観劇となりましたが、他のキャストさんとの組み合わせも拝見してみたいです。

そして観劇後、上演台本・演出を手がけるG2さんが公式サイトで、この作品について毎年お客様から「これはもはや朗読劇ではない!」と言ってもらえることが嬉しい、と書かれているのを読み、「ああ、まさに私が感じたことだ」と納得してしまいました。

私は他の朗読劇を観たことがないので、「一般的な朗読劇とはここが違う」と比較することはできません。
でも今回観た『ハロルドとモード』は、私が観る前に想像していた「朗読劇」という言葉だけでは収まらない感覚がありました。

声を聴くだけではなく、表情を見て、音楽を聴いて、舞台上の空気を感じて、足りない景色は自分の中で想像する。

私にとっては「朗読劇」というジャンル以上に、“黒柳徹子さんの『ハロルドとモード』という舞台スタイル”。
そんなふうに感じた作品でした。

80歳と19歳。この二人が不思議なくらい自然に見える

このストーリーは、80歳を迎えようとするモードと19歳のハロルドの恋の物語。
年齢だけで考えれば、いわゆる祖母と孫ほど離れた二人です。
普通だったら、なんだか違和感を感じてしまうかもしれません。
それが、不思議と何の違和感もなく、すっと入ってくる。
これはやはり、徹子さんの魅力であり、不思議さであり、可愛らしさだからこそ作られる世界観なんだろうなぁ~と感じます。

囲み取材で岩﨑さんが、「モードという役は、日本中どこを探しても徹子さん以外考えられない」
と話していましたが、舞台を観ると、その言葉にも納得しました。

そして、やはり組み合わせも大事なのだと思います。
ハロルド役をSTARTO ENTERTAINMENTの方が代々演じているというのも、とても納得する感じがしました。
カッコよさがありながら、可愛らしさと危うさも秘めている。
そんな雰囲気がハロルド役と違和感なく重なり、徹子さんとの関係もとてもナチュラルに感じられる理由の一つなのかもしれません。

今回ハロルドを演じた岩﨑さんは、物語の序盤ではかなりひねくれた青年で
「この青年、大丈夫なのか……?」
と感じたほどでした。

ところが、物語が進み、モードへの思いを表現する頃になると、そこに見えてくるものが大きく変わります。
モードを思う気持ちが、とても純粋でまっすぐ。

最初に感じたひねくれた危うさと、後半に見せる素直さ。
そのギャップも、岩﨑さん演じるハロルドの魅力だと感じました。

だからこそ、二人の関係が少しずつ変わっていく様子にも自然と入り込むことができたのだと思います。
囲み取材で岩﨑さん自身がこの作品を、
「とにかくピュア」
と表現していたのも印象的でした。

二人で歌うシーンについて、黒柳さんは「あそこ山場だもんね」「二人で歌っている時は嬉しい」と話していましたが、その言葉通り、二人が一緒にいることそのものの楽しさが伝わってくる場面でもありました。

シンプルな舞台だからこそ、気になるもの

舞台はとてもシンプルでありながら、少しずつ変化があります。
個人的に気になったのは、タイトルの看板。

場面によって上下に移動するんです。
「あれは何を意味していたんだろう……?」
ついつい気になってしまいました。

残念ながら、1回の観劇ではそこまで理解するには至らず。
でも、そんなことに気を取られるよりも、目の前の舞台に集中したいと感じる作品でもありました。

何度か観ることができたら、きっと「あ!」ってなる瞬間が来るのかもしれません。
そんなところも、もう一度観てみたいと思う理由の一つです。

そして、どうしても伝えたいピアノの存在

そして、私がどうしても伝えたいのは、ピアノの存在です。
舞台上で生演奏されている荻野清子さんのピアノの音色が物語に動きをつけ、とても魅力的に響いていました。

私の席からは、ちょうど演奏している荻野さんの様子が見えたのですが、荻野さんが楽しそうに演奏している姿もまた本当に素敵でした。
「あ、このピアノの演奏好きだなぁ~」
「素敵な曲だなぁ~」
と思って確認したら、演奏されていたのが荻野さん。

荻野さんは『新宿発8時15分』の際に初めて拝見して、その時から好きな演奏者さんだったので、今回また舞台上で演奏を聴けたことも、とても嬉しく感じました。
最近気づきましたが、私は舞台上で演奏している姿が見える舞台が好きなようです(笑)。

舞台上のキャストだけでなく、演奏者や、その舞台に関わっている方々の存在を感じながら観ることができる。
私はそれをとても素敵だなぁ~と感じます。
そして、そこも映像作品とは違う舞台の魅力の一つなのだと感じています。

初めての朗読劇で見つけた、新しい舞台の楽しみ方

朗読劇というものをほとんど知らずに劇場へ行った今回。
観る前は、もっと「声を聴く」ことが中心の舞台なのかな、と思っていました。
でも実際には、声だけではなく、表情や視線、音楽、照明、そして自分自身の想像まで使いながら楽しむ舞台でした。

そして、毎年キャストを変えながら上演されている理由も、少し分かったような気がします。
同じモードでも、隣にいるハロルドが変われば、二人の間に生まれる空気もきっと変わる。

今回観た黒柳徹子さんと岩﨑大昇さんの『ハロルドとモード』を入り口に、
「他のハロルドだったら、どんなふうに見えるんだろう?」
と思うようになりました。

黒柳さんは囲み取材で、100歳までこの作品を続けたいという話題に、
「100歳の時に80歳の役を演ったということでね、20も若い役を演るんだから、楽しみだと思います」
と話していました。

それに対して岩﨑さんが「絶対観に行きます」と答え、黒柳さんが「観に来て」と返していたのも、とても微笑ましいやり取りでした。

東京公演はまもなく終わってしまいます。
「もう終わっちゃうんだ……」
と少し残念に思っていたのですが、まだ大阪公演がありました!

大阪公演は10月15日から18日まで、森ノ宮ピロティホールで上演されます。
朗読劇ってどんな感じなんだろう?と思っている方にも、ぜひ一度体験してみてほしい作品です。

声だけではなく、表情や音楽、そして自分自身の想像の中にも物語が広がっていく『ハロルドとモード』の世界。
ぜひ大阪で、この世界を感じてみてください。

そしてまた来年、今度はどんなハロルドとモードが生まれるのか。
今回初めてこの作品に出会った私も、すでに次の『ハロルドとモード』が楽しみになっています。

(文:松坂柚希)

公演情報

朗読劇『ハロルドとモード』

原作 1971年アメリカ映画『ハロルドとモード』
作 コリン・ヒギンズ

□キャスト
モード 黒柳徹子
ハロルド 岩﨑大昇(KEY TO LIT)
武田玲奈
笠原秀幸
田中要次
井川 遥

□スタッフ

上演台本・演出 G2
音楽・演奏 荻野清子
演出補 平田純哉
演出助手 守屋由貴
舞台監督 有馬則純
企画・製作 テレビ朝日、サンライズプロモーション

□公演日程
【東京公演】
公演日程:2026年9月29日(火)~10月8日(木)
会場:EX THEATER ROPPONGI
主催:テレビ朝日、サンライズプロモーション

【大阪公演】
公演日程:2026年10月15日(木)~10月18日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
主催:サンライズプロモーション大阪

□公式サイト
https://haroldandmaude.jp/

関連記事一覧