
そこにあるものと観客の想像力で世界を広げていく劇中劇が魅力 ミュージカル『秘密の花園』観劇レビュー

そこにあるものと観客の想像力で世界を広げていく劇中劇が魅力 ミュージカル『秘密の花園』観劇レビュー
ゲネプロ公演を観劇してきたので、その様子をお届けします!
あらすじを見たとき、正直「自分にはどうかな?」と思った作品でした。というのも、「孤児院の子どもたちの物語」という設定に暗そうな印象があったことと、主人公たちが子どもたちということで、おっさんの自分には、いわゆる青春ものはちょっと違うかな、と。ところが概要を読み進めてみると、「韓国で大ヒット」「熱狂的なファンを生み出した」「見事な構造」「韓国ミュージカルアワーズ主要4部門ノミネート」「観客評点9.7」……そんなに凄いんですか? そこまで言われたら、やっぱり気になる。ということで、半信半疑で行ってみました(笑)。

ミュージカル『秘密の花園』 奥田いろは 撮影:岩田えり
ミュージカルというと、大人数のキャスト、大掛かりなセット、アンサンブル……というイメージがありますが、本作の出演者はなんと4人! 劇場に入ってからも、「思っていたよりずっと小さいぞ。本当に4人だけでミュージカルやるの?」と少し驚きつつ、同時に舞台から漂う上品な雰囲気に期待も高まる。そして開演と同時に4人が登場した瞬間、「この作品、すでにセンスを感じる!」と第六感が告げました(笑)。

ミュージカル『秘密の花園』 島太星 撮影:岩田えり
4人だからこそ、一人ひとりのキャラクターがものすごく分かりやすい。エイミー、チャーリー、ビーグル、デボラ、それぞれの個性と役割がきれいに違う。そして歌唱力も抜群な4人の歌をたっぷり聴けるというのは、推しがいる人にはより嬉しいポイントかも(笑)。ミュージカルとしての物足りなさがないどころか、むしろ一人ひとりへの没入感がハンパない。こんなスタイルのミュージカルもあるのか、と新鮮でした。余計なものがないからこそ、この4人が暮らしている孤児院という世界がちゃんと見えてくるのも面白い。

ミュージカル『秘密の花園』 彩みちる 撮影:岩田えり
この作品の見どころは、やはり劇中劇! 子どもたちが『秘密の花園』を演じるのですが、現実と劇中劇を大きく切り替えるわけではない。そこにあるものを別のものに見立てて物語を進めていく。たとえば洗濯ばさみを「鍵」として扱うような演出も、シンプルだからこそ、役者の「これは鍵なんだ」という本気の思い込みが観客にも自然と伝わってくる。照明もいい! 劇中劇の場面に合わせて怖さやポップさを色とりどりに切り替え、気持ちが盛り上がる。音楽も相まってスピード感が増していく。セットを増やすのではなく、そこにあるものと観客の想像力で世界を広げていく。この「ちゃんと演劇している感じ」が、個人的にはかなり好きでした!

ミュージカル『秘密の花園』 雷太 撮影:岩田えり

ミュージカル『秘密の花園』 磯野大 撮影:岩田えり
キャストの4人もそれぞれが良かった。エイミー役の奥田いろはさんは、子どもっぽさがあり、ちゃきちゃきしていて、いるだけで場が明るくなる。チャーリー役の島太星さんは、個人的にかなり共感できました。不器用で、素直になれなくて、ちょっと距離を取ってしまう感じがすごくリアル。デボラ役の彩みちるさんは、4人の中でしっかり「お姉さん」という感じで、落ち着いて見ていられました。
そしてビーグル役の磯野大さん。ムードメーカーとしてしっかり場を明るくしていて、今回、一番気になった役者さんでした。特にラスト、みんながバラバラになっていく場面で、笑っているのに切ない顔をしている瞬間があって。あれは刺さりました。思わず涙が……

ミュージカル『秘密の花園』 左から彩、島、奥田、磯野 撮影:岩田えり
観る前は、「孤児院」「子ども」「青春もの」という要素に少し身構えていましたが、そんな先入観はきれいにひっくり返された!これはたしかに沼る人もいるなと思いつつ、自分自身はそれ以上に、「演劇って面白いな」ということを改めて感じさせてくれる作品でした!

ミュージカル『秘密の花園』初日前会見より 撮影:岩田えり
(文:かみざともりひと)
ミュージカル『秘密の花園』
【脚本】キム・ソルジ
【作曲】ブランドン・リー/カン・ハニム
【演出】桑原裕子
【翻訳・訳詞】吉田衣里
【キャスト】
エイミー&メアリー役:奥田いろは(乃木坂46)
チャーリー&コリン役:島太星(NORD)
デボラ&マーサ役:彩みちる
ビーグル&ディコン役(Wキャスト):雷太
ビーグル&ディコン役(Wキャスト):磯野大
2026年10月17日(土)-11月1日(日)/東京・よみうり大手町ホール

