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【観劇レビュー】あの『半神』が中屋敷演出で蘇った! 桜井玲香(乃木坂46)×藤間爽子! 大胆な新解釈と弾ける俳優のエネルギー!

舞台「半神」撮影:田中亜紀あの『半神』が中屋敷演出で蘇った! 桜井玲香(乃木坂46)×藤間爽子! 大胆な新解釈と、弾ける俳優のエネルギー!

野田秀樹の『半神』と言えば、思い入れの深い方も多くいるのではないだろうか。劇団夢の遊眠社の伝説的作品とも言える『半神』は、初演当時多くの観客を魅了し、今なお「自分の演劇人生を変えた一作」に数える人も少なくないはずだ。
かく言う私も高校生時代に、DVDにて夢の遊眠社が上演した『半神』に圧倒され、演劇にのめり込んだ人間の一人だ。そんな多くの人々の心に宿る作品『半神』が、中屋敷法仁の演出のもと天王洲銀河劇場で開幕した。観劇後の感想としては、「見どころが満載!」である。そんな満載の今作の見所をいくつかに分けて伝えたいと思う。

弾ける俳優のエネルギー!

舞台「半神」撮影:田中亜紀

W主演の双子、シュラを演じるのは乃木坂46のメンバーであり、キャプテンの桜井玲香。マリアを演じるのは阿佐ヶ谷スパイダースのメンバー、藤間爽子。二人の元にやってくる家庭教師の先生役は、2.5次元舞台を中心にミュージカルでも活躍する太田基裕が演じている。そして主役となる双子をベンゼンの国に誘惑する”化け物”達は、柿喰う客のメンバーが中心となっている。
名前を聞いただけでも若いエネルギーに満ちた面々であるが、期待に違わず、むき出しのパワーが劇場全体にひしめいていた。


舞台「半神」撮影:田中亜紀

若い俳優が、舞台を縦横無人に駆け回る中、本作の独特な劇世界を力強く牽引してくれるのが、老数学者・老ドクター役を演じる松村 武だ。
劇場の空気を操る技量には流石の一言。
作品の要所を締めたかと思えば、転がしたり、遊んだり、まさに自由自在だ。若い俳優に負けじと舞台を駆ける姿には、思わずグッとくる。松村氏の様な熟達した俳優が、どんじりに控えてくれることで、作品の焦点はハッキリと定る。
それと同時に、遊び心溢れる演技が安心感も与えてくれて、観客の心に大きな伸縮性をもたせる。この抜け目ない布陣、『半神』ファンは元より、初見の観客まで満足させてくれるだろう。

心臓破りの八百屋舞台!

舞台「半神」撮影:田中亜紀

劇場に入って目を引くのが、急傾斜の八百屋舞台だ。壁面にはいたる所に凸起した足場がある。
一目見ただけで、これから起こる大展開を期待させる舞台美術となっている。
期待通り、この凸起した足場に俳優が上ったり、降りたり、渡ったり、まるでサーカスの様に陣形を変えながら様々なシーンを繰り出してくる。
特に化けも達の活躍するシーンではフィジカルの強い俳優達が、目を疑う様な運動量でこの舞台装置を駆け巡り、変幻自在に世界観を体現する。

冒頭に引かれるトランプを巧みに使った演出は、シンプルながらも目に楽しい。俳優の身体を信頼することで、疾走感と共に作品を展開できる技術は、中屋敷氏演出ならでは。気がつけば、目まぐるしい物語のジェットコースターに我々観客も同乗していた。

多彩な身体表現!

舞台「半神」撮影:田中亜紀

中屋敷演出の今作は、多彩な身体表現も見どころのひとつであろう。
主人公の双子は、”体がくっついている”結合双生児だ。

双子の動きも、非常に緻密な動きで表現されており、”体がくっついている”という設定がなんら違和感なく入ってくる。物理的に身体の繋がりを見せないぶん、より生々しい精神的な鎖としての側面が浮き彫りになった様に感じた。この身体演出が、今作のテーマである「孤独」の意味を、観客にいっそう深く訴える肝となるだろう。

中屋敷氏は2014年に青山円形劇場にて、野田秀樹作『赤鬼』を上演した。
彼もまた野田ファンであり、『半神』ファンであることは間違いないだろう。
オリジナルに敬意を払い、かつ野心的な演出は、ぜひ劇場にて肉眼で確かめてもらいたい。

(文:山本タカ

公演情報

舞台「半神」

【原作・脚本】萩尾望都
【脚本】野田秀樹
【演出】中屋敷法仁

【出演】桜井玲香 藤間爽子/太田基裕/七味まゆ味 永島敬三 牧田哲也 加藤ひろたか 田中穂先 淺場万矢
とよだ恭兵 村松洸希 齋藤明里 エリザベス・マリー/福田転球 松村 武

2018年7月11日(水)~7月16日(月・祝)/東京・天王洲銀河劇場
※プレビュー公演 7月11日(水)

2018年7月19日(木)~22日(日)/大阪・松下IMPホール

公式サイト
舞台「半神」

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