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声優界のレジェンドとSnow Man佐久間大助が繰り広げる 度肝抜かれる迫力の朗読劇!!ノサカラボ Reading Echoes『Fiend/Friend in 20faces』観劇レビュー

原作は少年少女向けに書かれたエンターテイメントで日本の推理小説の祖といわれる江戸川乱歩の作品、「少年探偵団シリーズ」の「怪人二十面相」を基に、日本三大名探偵の1人と言われる明智小五郎と、その弟子の小林芳雄、二人と対峙する大怪盗の怪人二十面相にオリジナルキャラクターを加えたノサカラボ初のオリジナルの朗読劇です。演出・構成は、ミステリー専門に舞台制作をするノサカラボ代表であり、『アガサ・クリスティ作品』や『神津恭介シリーズ』など重厚な作品や緻密な伏線を敷いたシチュエーションコメディで手腕を発揮する演出家、野坂実さん。脚本は、演劇ユニット「Mo’xtra」の主宰で、活躍中の須貝英さんが務めます。

稀代の大泥棒で変装の名人、「怪人二十面相」の遠藤平吉役に山寺宏一さんと山口勝平さん、名探偵の明智小五郎役に井上和彦さんと大塚明夫さんがWキャストで参加され、明智の優秀な助手の小林芳雄役に梶裕貴さんが出演されます。さらに、お人好しで涙もろく、情に厚い警官 燕谷麟太郎という今作のキーパーソンとなるオリジナルキャラクターをSnowManで活躍する佐久間大介さんが演じます。

私はこれまで「朗読劇」自体あまり好きな演出方法ではありませんでした。なぜなら、キャストが台本を読みながら演じている姿が作品を表現する上ですごく中途半端に見えてしまい、舞台に集中できなかったからです。以前観劇した作品がそうだっただけかものかもしれませんが…「全身で」演技や表現をしたいけれど、あくまで「朗読劇」なのでそれができないキャストの様子が伝わってきて、それなら台本を捨てて普通の舞台にすればいいのになぁ…と思えてしまい「朗読劇にする意味」がわかりませんでした。しかし、今作は声を生業とする声優陣の良さが最大限活かされており「朗読劇だからこそ」の面白さを知ることができました!私の中の朗読劇の概念を覆してくれた今作の観劇レビューと囲み取材の様子をお届けしますので是非ご覧下さい!(観劇時のWキャストは山寺宏一さん、井上和彦さん回でした。)

劇の冒頭、妖しく美しい光の演出と音楽にわくわくゾクゾクし、今からどんな朗読劇が始まるのだろう!と期待が高まりました。物語で、二十面相は盗みを予告し、お宝を取りに行きますが、それを捕まえようとする警察との攻防、差し迫る時間の演出や緊張感がほぼ声と音で表わされ、展開していく様子にドキドキしました。朗読劇であるため、基本的にキャストは舞台上で激しく動き回ることはありません。しかしながら、声のプロである声優さん、その中でもトップオブトップであり、レジェンド級のキャスト陣と佐久間さんが織りなす「声」の表現力と魅力が素晴らしく、リアルな音の演出に想像力が駆り立てられどんどん物語に引き込まれました。また、過去の悲しい事件が現代に起こる犯罪と絡み、騙し合いや緊迫したシーンの連続で予想のつかない展開に息つく暇もありません。どんどん新しい登場人物が出てきますが、限られた声優陣で一人何役もこなされているので、もしかすると観客は混乱するかもしれません。もちろん「声」が違うので異なる人物とはわかりますが、目の前の人に捕らわれず、想像し、理解しながら、頭の中を整理しつつ観ていかないとすっかり騙されてしまいます。また、解き明かされていく役柄同士の関係性を知っていくと声の印象、実際の声優さんの見た目、実年齢、役柄の設定年齢とギャップが大きすぎて困惑する場面もあります(笑)しかし、そこはあくまで朗読劇ということで「声」に集中して楽しみました(笑)気づくと「あっ」と驚かされますので色々な仕掛けをお楽しみください!

山寺宏一さん演じる平八は表向きは人情味溢れ愛想の良いサーカス団の一員ですが、実は色々な人に変身し巧みに騙す二十面相という役で、これまで様々なキャラクターを演じてきた山寺さんだからこそ成り立つ役だと感じました。「声」で魅せる演技は流石でした。

また、明智小五郎役の井上和彦さんの存在感たるや…第一声から理知的で落ち着いたスマートな明智小五郎像がイメージでき、正に「イケボ」という言葉がぴったりで「声に惚れ惚れする」「声に落ちる」とはこう言うことか!と感じました。

梶裕貴さんは12才前後の小林少年を演じています。40才とは思えない若々しさと声の張りがあり、違和感がなくて、声優としての役柄の広さを感じました。

そして、そんな声優陣が本領発揮する中、負けず、喰われず、飲まれずに存在感を放つ佐久間さんの声優としての実力は目を見張るものがありました。レジェンド達に囲まれ、萎縮してもおかしくない状況で堂々と真ん中に立つ佐久間さんは「SnowManのアイドルさっくん」ではなく、「声優 佐久間大助」でした!もちろん、舞台に立つ姿は彼本来の人を惹きつける輝きがあり目を引きましたが、あくまで声で勝負し、声で表現されている姿が印象的でした。佐久間さん演じる麟太郎は物語のカギを握る存在で、彼の過去や生い立ちを紐解きながら物語は進んでいきます。後半の過去の記憶を辿るシーンはあまりに佐久間さんの声や表情が切なく苦しくて麟太郎の繊細で複雑な心情が伝わり、胸にくるものがありました…大切な人を失った悲しみ、喪失感、信じていた人に裏切られた絶望感などが音楽と光・照明の演出も重なり、危機迫る情景も思い浮かび心震わされ涙しました。普段の明るい佐久間さんからは想像もつかない一面が垣間見えました。

佐久間さんと梶さんは舞台は初共演とのことでしたが、プライベートでも仲が良いとのことで、会話のキャッチボールが自然で二人の息がぴったりでした。最初、小林少年は明智先生の助手のポジションを麟太郎に奪われるのでは?と思い込みつっかかっていましたが、誠実な麟太郎に徐々に心を開いていきます。焼きもちを焼く姿が子どもらしく、やり取りが微笑ましかったです。また、麟太郎が小林少年を子ども扱いせず、対等なバディとして扱いながらも、いざという時は大人として少年を守る姿には好感が持てました。
また、今作には探偵道具や仕掛け、活躍する相棒などが登場するので名探偵コナンや推理小説好きの私は出てくる度にわくわくしました!

手に汗握る展開で、究極の選択に迫られ、予想がつかないクライマックス…想像を越えるラストでした!最後、「一つの正義」では割り切れなかった結末に「正しさとは?」「許しとは?」「裁きとは?」と考えさせられました。オリジナル脚本の面白さ、ベテラン声優陣の匠の技が光り、声の世界にのめり込み感情のジェットコースターを楽しめました!

囲み取材では、開口一番、元気な声で挨拶して入られる佐久間さんの笑顔と、キャストそれぞれの役柄に合わせたお衣装が雰囲気抜群で似合っていました。
「好きこそものの上手なれ」とは佐久間さんを見ていて感じます。「大好きだからこそ」声優という職業に対するリスペクトが常にあり、囲み取材の間も、今作に関われることが「嬉しくて仕方ない!」「楽しくて仕方ない!」というような佐久間さんのキラキラした目が印象的でした。自分も共に作品に携われる嬉しさや喜びが爆発していて、憧れの方たちからどんどん吸収して自分を高めていこう!と作品や役柄に真摯に向き合い、努力する姿、今作に対する並々ならぬ強い思いを感じました!

実は、佐久間さんは声優のオーディションを沢山受けているが落ちているそうで、その話を聞き、声優界のレジェンド山寺さんが「誰だ落としてる奴は⁈」と返す場面があったり、ベテランの井上さんも「すっかり馴染んでいて、前から居たみたい。悔しいけど新人じゃないみたい」「佐久間君の声にはエネルギーがあってすごく刺さってくる!将来が楽しみ」と仰っていました。佐久間さんは終始「いやいやいや…」と謙遜されていましたが、声優界のレジェンドも嫉妬を感じるほどのポテンシャルの高さや愛されている様子が伺えました。

演出の野坂さんとは佐久間さんはデビュー前に野坂さん演出で知り合い、そこからまた仕事がしたいと思いながら6年経ってやっと今回実ったとのことでした。野坂さんは佐久間さんについて、最初に台本読みした時点であまり直すところがなく、佐久間さんに「もっと稽古をつけて欲しいです」と言われたけれど「大丈夫じゃない?」と答えたとのことでした。それくらい「声」に素質があり、すでに完成された、声優としての力があるとのことでした。また、声優としての頑張りやポテンシャルの高さに加え、休憩中にスタッフと共に掃除をする姿は「6年前の初めて会った時から変わらない」と野坂さんが仰っていたように、飛ぶ鳥を落とす勢いとなった今でも驕らず、目の前の人やお仕事に実直に向き合う人間性も含め、佐久間さんが選ばれた理由だと感じました。明るく裏表のない佐久間さんの良さは信頼感に繋がり、今カンパニーの和やかな雰囲気を作り上げているように思いました。それぞれのキャストは忙しすぎるあまり、全員で集まっての稽古が難しかったそうですがそれを感じさせないくらいチームワークが取れたカンパニーでした。今のSnowMan人気に胡座をかいて仕事を得ているのではなく、「自分の実力」で声優の仕事を得て、真正面から挑戦する佐久間さんの姿は素敵でした!これから声優としての活躍も楽しみです。

声優界のレジェンドと佐久間さんのパワーが爆発的な化学反応を起こし、朗読劇の傑作を観れたようでとても感動しました!短期間での上演だったので再演も期待し、多くの方に観て頂きたい作品でした。

(文:あかね渉

公演情報

朗読劇ノサカラボ Reading Echoes『Fiend/Friend in 20faces』

演出・構成:野坂実 
脚本:須貝英

出演:
山寺宏一/山口勝平(Wキャスト)
井上和彦/大塚明夫(Wキャスト)
梶裕貴 佐久間大介 他

【東京公演】
2025年1月30日(木)〜2月2日(日)
会場:シアターミラノ座

【⼤阪公演】
2025年2⽉6⽇(⽊)〜2⽉9⽇(⽇)
会場:クールジャパンパーク WW ホール

公式サイト
https://nosakalabo.jp/

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