月波兎 第2回公演『ラスト・サパー』
現代社会を生きる親子の愛憎と生き様を描く現代香港演劇『ラスト・サパー』が月波兎の第二回公演として上演される。出演の佐藤銀平、奥山美代子、翻訳・演出のインディー・チャンにインタビュー取材をした。
月波兎とはどのような団体ですか
奥山:私が55歳を超えてこれからやっていくにあたって、やっぱり役者とプロデュースを一緒にやれるのってあと何年あるかなって考えたら、すごく長くはないなと思ったんですね。それで、もうできること、好きなこと、好きな作家や演出家を集めてやりたいなと思って設立しました。
本作を上演しようと思ったきっかけを教えてください
奥山:最初に(翻訳・演出の)インディーから話があって。インディーとは全然違う公演で出会って、私は役者で、インディーは小道具係だったんですね。日本語もたどたどしいし、かわいい子供みたいな感じで思っていて。それほど話していなかったんですけど、そうしたらある日、(インディーに)「この台本読んでくれませんか」って、「このお母さんどうですか」って言われて、ちょっと読んだら、これ面白いな、素敵な本だなと思いまして、やってみたいと思いました。
翻訳する際に留意した事などありますか
インディー:日本語はキャラクターによって第一人称とか語尾とか、それもキャラクターと場所と相手役が変わると全てが変わるので、何をチョイスするかはすごく重要で。私は(日本語の)ネイティブじゃないので、脚本の原文(広東語)のニュアンスとかリズムとかはすごく大事にしたいと思っています。自分の母語でもありますし、逆にお客さんがそこに違和感を感じると、作品としてちょっともったいないなって、もう毎日戦って選んでいくんです。 今回この3人の間でしか作れないものにしたくって。お客さんもそれを感じてほしいなって思っています。
描かれる香港の親子関係について
奥山:確かに日本人だったらここまではっきり言わないよね。
佐藤:いや、でも僕は結構母親とこういう感じでした。
奥山:じゃあもう人それぞれだね。
佐藤:そうですね。家庭それぞれというか、父親もこんな感じでしたし。なので、僕の第一印象は、割とどこの国も一緒なんだな、っていう。人間性というか、へこまない、諦めない、でもそれが面白いなと思いました。
奥山:ある種悪意はさほどないんだよね。
インディー:自分も脚本を読んだ時、普通の親子の会話だって思ってたんです。多分日本でも、昔はこれぐらいの家族の関係性はあったと思うんですけど、今は多分、核家族になっちゃって、家族の間の距離感が昔よりは遠いんですよね。でも、違いはあるけれども、感じる部分はあると思います。
実際に稽古してみていかがでしたか
奥山:自分なんかはやっぱりそんなに強く人に言う方じゃないんで、やってみたらできるかもしれないみたいな感じはしましたね。
佐藤:「なんで生きなきゃいけないのか」みたいなことも考えなきゃいけないぐらい(親子は)悲惨な状況なんで、それをああいうエネルギッシュにやると見てると面白いですよね。
奥山:とはいえ、この戯曲自体は暗さには別にフォーカスはしてないっていうか。憎しみも含めてだけど、親子の愛情が1番フォーカスされていて。
佐藤:でもこれぐらい人と人がぶつかり合う2人芝居っていうのはいいですよね。すごく演劇というフォーマットに合ってる素材だなっていう。そういうことがあった方が絶対面白いので。
お客様にむけて見どころなど教えてください
インディー:最後はやっぱり見所ですね。色々悩んだ結果、やっぱこれやらないと全てが収まらない気もして。なのでネタバレしちゃいけないんですけど、ぜひ見に来てもらって、一緒に感想を聞きたい。どう思いますか。って。
佐藤:めちゃくちゃ美味しい料理をインディが作ってくれていて。本当に消え物全部、実際に食べながらやるんで、それもこんだけ頑張って稽古したら見ていただきたいですよね。
奥山:(佐藤の)実際のお父様の佐藤B作さんが声の出演をやってくださっていて。本当ならば登場する父親の役なんですけども、私たちのこの座組では登場しないで声だけでやってみようって。それがどうなるのかっていうのも見所です。
息子は幼少期に、⽗に虐待され保護施設で育つ
中学を卒業後は、職を転々としていた
この日、久しぶりに母と食事をすることになる
恋⼈の話、仕事の話、家族の話…
食事をしながら会話を楽しもうとする母と浮かない息子
⼆⼈の会話はとことん噛み合わない
やがて浮き彫りになる二人の秘密とは…
現代社会を生きる親子の愛憎と生き様を切実に
時に滑稽に描く現代香港演劇の衝撃作!
本作は2024年12月11日(水)~15日(日)まで東京・雑遊で上演される。
詳しくは公式サイトで。
https://tsukinamiusagi.blog.jp/archives/2941486.html
(文:エントレ編集部)
月波兎 第2回公演『ラスト・サパー』
月波兎 第二回公演『ラスト・サパー』
【翻訳・演出】インディー・チャン
【出演】
佐藤銀平 奥山美代子 佐藤B作(声の出演)