演出家・大澤遊と翻訳家・小田島創志と本多劇場グループがタッグを組み、海外戯曲の作品をお届け。
本多劇場グループ×海外戯曲シリーズ第3弾のDavid Irelandの「ULSTER AMERICAN」が、4月17日から下北沢「劇」小劇場にて、まもなく開幕する。
第2弾「BIRTHDAY」(2021年9月新宿シアタートップス/リーディング公演)に続き、今回も、戯曲翻訳の若き旗手として存在感を発揮する小田島創志の本邦初訳の脚本を、真摯な創作姿勢と戯曲を深く読み込む演出に定評のある大澤遊が挑む。 出演者に池田努、椙山さと美、前田一世というキャリア豊富な実力派の3人を迎え、濃密な会話劇を展開する。
開幕目前!本番に向けて、準備が進む稽古場からレポートが到着。
3月中旬、演出家や俳優に、翻訳家である小田島創志氏も交え、稽古がはじまった。
本作はアイルランドにルーツをもつアメリカ人のオスカー俳優、イギリス人の演出家、北アイルランド出身の女性劇作家の3人芝居だ。
言葉を紐解く作業はその人物の生き様を理解することに通じているのだと感じた。それぞれの役の持つアイデンティティや思想に寄り添い、台本解釈をより深めていく。
3人芝居の会話劇と聞くと静かでコンパクトな印象を受ける。だが、本作は俳優が舞台上を縦横無尽に行き来し、会話の応酬が繰り広げられる。上演時間は80分とのことだが、観るものを惹きつけ飽きさせることはないだろう。
印象的だったのは、対話の多い創作過程だ。
トライ&エラーを繰り返し、ディスカッションを行い、作品を創りあげていく。演出の大澤氏の「遊んでみましょう」「試してみましょう」という言葉がすごく耳に残った。
作品を読み込み、役を理解している大澤氏だからこそ、より俳優の良さを見つけることができるのだろう。
また、それに応える俳優の繊細かつ大胆な演技にも注目してほしい。
俳優の目線や表情、息遣いを感じるほど至近距離で観劇できるのは、小劇場でみる演劇の醍醐味ではないか。一瞬一瞬、鮮明に記憶に刻んでいただきたい。
本作は社会風刺や倫理的タブーな言葉が、オブラートに包むことなく展開される。言葉の応酬やジョークの滑稽さについ笑ってしまう。まさにブラック・コメディといえるだろう。
イギリス留学経験のある大澤氏が現地で見つけた作品を、小田島氏が翻訳し、集まった実力派キャストたち。そして舞台芸術の発展に注力する本多劇場グループ。 この作品への意気込みがうかがえる。観客の度肝を抜くには十分なはずだ。是非、一部始終を劇場で目撃してほしい。問題作として拍手喝采がうなずける公演となるだろう。
なお小田島氏と大澤氏の再タッグ「BIRTHDAY」は、本公演として本年7月24日より新宿シアタートップスで上演される。そちらも注目である。
野心や虚栄心を抱き、自分こそが正しいと信じている者たちが集い、公演の課題や挑戦、成功について話し合いをするうち に議論は白熱。激しい応酬はやがて・・・。
権力の濫用、アイデンティティに対する偏見や女性蔑視
―ハラスメントの本質的な問題を訴えかける2018年イギリス初演のブラック・コメディ。
本作は4月17日から東京・下北沢「劇」小劇場で上演される。
詳細は公式サイトで。
https://www.honda-geki.com/ulsteramerican
(文:二ツ森恵美 監修:エントレ編集部)
本多劇場グループ×海外戯曲シリーズ第3弾 『ULSTER AMERICAN』
【翻訳】小田島創志
【演出】大澤遊
【出演】池田努(舘プロ)、椙山さと美(スターダストプロモーション)、前田一世(青年座映画放送)
公式サイト
https://www.honda-geki.com/ulsteramerican/