2024年1月6日(土)に新橋演舞場で開幕した初春歌舞伎公演『平家女護嶋 恩愛麻絲央源平 ―SANEMORI PARTII―』初日を前に、市川團十郎さん、市川ぼたんさん、市川新之助さんが記者会見に臨みました。
今作は父 市川團十郎さんと新之助さん10歳、ぼたんさん12歳の今だからこそ観れる親子3人の共演が話題になっています。團十郎さんは「2年前から(補綴・演出の)石川耕士さんに(親子共演作を)今のうちしか出来ないからぜひ一度、書いてもいいかというお話をいただいていました。しかし、コロナ禍などもありなかなかできる機会がなく、今ここしかないタイミングとなりました。これ以上大きくなるとできなくなってしまうので…子ども達とこの作品を演じるのは最初で最後になるかもしれません」と、この作品について仰っていました。
『平家女護嶋』写真提供/新橋演舞場
古典歌舞伎の名作『平家女護嶋』に新たな解釈や視点を加えた今作は、平家全盛の世に源氏再興を願った人々の熱い生き様に迫っています。團十郎さんが俊寛、実盛、常盤御前の3役を演じ、「いつの世も自らの運命は自ら切り拓く」「いつの世も親が子を想う気持ちは変わらない」という大きなテーマを掲げています。
平家、源氏の戦いは有名ですが、複雑な背景や登場人物について冒頭で関係図を用いながら説明があるので作品へ導入しやすい作りとなっています。
登場、團十郎さんの眼力はさすがの一言!島流しされた役でありながらも、生気を失わない存在感のある魅せる芝居は覇気がありました。また、実朝は見惚れるほどであり、常盤御前も姿や声色も変え、見事に演じ分けていらっしゃいました。
『平家女護嶋』写真提供/新橋演舞場
1枚目の写真はクライマックスのシーンで、幕が開いた瞬間息をのむほどに圧巻のシーンでした。馬に跨る新之助さんの勇ましさはスター性を感じ、最後は紙吹雪が舞い、それはそれは美しく、そのシーンだけでも生で観る価値がある程に素晴らしい場面でした。
記者会見で新之助さんは、お正月はゲーム三昧であったと答える姿に一般の子どもらしさも感じさせながら、台詞や立ち回りは「そんなに大変でなかった」と飄々と答える姿はなんとも10歳とは思えぬ落ち着き方でした。舞台上ではベテランの役者に囲まれながらも堂々とした姿を見せていました。
『平家女護嶋』写真提供/平家女護嶋
ぼたんさん演じるひな鶴は凛として美しく、舞台上で一際輝いていました。長い台詞も幼さが残りながら張りのある声でした。御本人も「最後に花道で一人で言う台詞が印象的です」と仰っており、心に残るシーンでした。
私は丁度、前日に市川家に密着した恒例のお正月番組を観ていたのもあり、素の親子の様子と舞台上での姿を見て、勝手にこれからも成長を見守りたくなりました。
演目と、実際の親子の姿とリンクする場面も多く、團十郎さんの子ども達への眼差しに温かさを感じました。
今だからこそ、観ることができる貴重な親子共演!是非、生の舞台でご覧下さい!
『平家女護嶋』写真提供/新橋演舞場
(文:あかね渉)
『平家女護嶋』
【作】近松門左衛門
【補綴・演出】石川耕士
【演出・振付】藤間勘十郎
【出演】
市川 團十郎 市川 ぼたん 市川 新之助
中村 児太郎 大谷 廣松 市川 男寅
市川 九團次 片岡 市蔵 市村 家橘
大谷 友右衛門 市川 男女蔵
市川 右團次 片岡 孝太郎
【日程】
2024年1月6日(土)~25日(木)劇場:新橋演舞場
昼の部 午前11時30分~ 夜の部 午後4時30分~
【休演】11日(木)、18日(木)
公式サイト
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/848