8月26日(土)、27日(日)の2日間、大阪・道頓堀ZAZA HOUSEにて「関西演劇祭 ネクストジェネレーション」が行われました。
この公演は今年で5年目を迎える「関西演劇祭」のプロデュース公演として、おうさか学生演劇祭とタッグを組み、関西を中心に活動している20代を中心とした若手劇団にスポットを当て、これからの演劇界を盛り上げていく若者たちの才能発掘と活躍の場を作ることを目的に、この度初開催されました。
今回は「劇団カチコミ」「黄色団」「劇団竜人世界」「虹色りきゅーる」の4劇団が参加。
各劇団45分程の作品を公演。2劇団の作品を1公演として行い、間には“ティーチイン”を行うという関西演劇祭本公演と同じ構成にて行われました。
“ティーチイン”とは、公演を終えたばかりの劇団員に対して、観客やティーチインゲストが感想や脚本・演出の意図、演技に対する質問などを直接伝えて意見交換することができる企画で関西演劇祭の名物ともなっています。
板尾創路(関西演劇祭フェスティバルディレクター)、三船美佳(関西演劇祭ネクストジェネレーションアンバサダー)
今回はティーチインゲストとして、関西演劇祭フェスティバル・ディレクターの板尾創路さん、関西演劇祭ネクストジェネレーションアンバサダーの三船美佳さん、来年3月にオープンするSkyシアターMBS支配人でもある毎日放送の村田元さんが参加し、各公演を見守りました。
劇団カチコミ「賽」
26日トップバッターを飾ったのは 劇団カチコミ「賽」
5700年。AIの発達、人体の機械化…というSF世界が舞台。台本を作らず、話し合いながら作品を作り上げていくという劇団カチコミは、笑いとシリアスが融合したストーリーとスピーディーな展開の作品を公演。1人で5役の役作りと早着替えなど目まぐるしく展開が変わる、出演者が3人とは思えない見ごたえのある公演で観客を魅了していました。
劇団竜人世界「ヨワい文、そよ風よりも」
劇団竜人世界「ヨワい文、そよ風よりも」
森見登美彦の小説「恋文の技術」をモチーフに役者個々の実体験も交えてエチュードで作り上げたという脚本は、男子と女子の会話が2倍速のネットドラマを見ているようで、そこに若さとパワーを感じる作品。学生たちの恋愛模様が可愛らしく描かれていました。
ティーチインでは、実際の友人から「普段の恋愛観と役柄が真逆すぎてどうやって役作りをしたのか気になった」という若者らしい意見も登場し、会場全体があたたかな雰囲気に包まれていました。
虹色りきゅーる「純情❤HAPPY ENCOUNT!」
虹色りきゅーる「純情❤HAPPY ENCOUNT!」
2022年に旗揚げをした女性4名による劇団。ネット社会に依存するZ世代の恋愛事情をリアルに表現。ネットの世界を使いながら各キャラクターが抱える闇や課題を表現し「人は簡単には変わらない。結局最後は自分自身が道を見つけるしかない」というメッセージが込められた作品。
ティーチインの際には、急きょ脚本・演出を別のメンバーでやることになり7月に入ってから一から脚本を作成したという驚きの話も発覚。
黄色団「パープルタウン」
黄色団「パープルタウン」
今回唯一の一人芝居を公演。作・演出・出演の近藤輝一が自身の境遇や思いを詰めた脚本を書き下ろし、ナレーションまですべて自身で担当。自ら演じることで自問自答を成立させ、軽快な展開の中に本人の決意を感じることができる作品に。
今公演のアンバサダー三船美佳さんも、作品に対する想いを聞いた上で改めて公演の内容を振り返り、自身の境遇とも重ね合わせて涙を浮かばせながら思いを伝えている姿が印象的でした。
板尾創路(関西演劇祭フェスティバルディレクター)
それぞれ個性がある中でも全公演を通して、20代の若い世代ならではの感性やパワーが溢れており、
観客の皆さんからも「観ていて元気をもらった」「これからを応援したくなった」といった感想が出ていました。
板尾創路(関西演劇祭フェスティバル・ディレクター)
今回の劇団はとても個性的で、それぞれやりたいことがすごくはっきりしていて、
それは若さでもあり、至らないところもそれぞれあるんですけども、各劇団の可能性を
すごく感じました。これからもいろんな作品に挑戦して、長く続けてほしいなと思いました。
そしていつか関西演劇祭の方にも参加していただけたら嬉しいです。
やっぱり(今回のネクストジェネレーションは)まだまだ未完成なところがあえて良いというか、
綺麗に見せられてもなっていうところがあったので、収まった感じで行儀よくやるよりも、やりたい
ことを全部こちらにぶつけてくれたところが全体的の評価としてはすごく良かったです。
今後も若い劇団や若い人たちのお芝居をどんどん見られたらいいなと思いましたので、
本当にこういう場を作っていただいて感謝しています。
また来年も開催されることを願っておりますので、関西演劇祭の方にもぜひ来てください。
よろしくお願いいたします。
三船美佳(関西演劇祭ネクストジェネレーション アンバサダー)
私は演劇という舞台を見に行くのもまだ数えるほどしか行ったことない初心者代表として参加させてもらったんですけど、もうハマりました!
一劇団、一劇団やはりメッセージ性がとても強くて、その表現力もそれぞれの個性が炸裂していて
余韻が本当にすごいですね。1日目の公演を終えてからもずっと頭の中で思い出していて
「あそここうだったな、ああだったな」と思いながら、道行く人を見ながら「この人たちにも一人一人そういう人生があるんだろうな。」みたいな、自分のライフスタイルすらも変えるぐらいの衝撃を受けました。
そして何よりも今回のネクストジェネレーションは若さ!私の子が今大学生になるので、同じ位の世代の方たちが輝いて、頑張って切磋琢磨している姿に親目線でも感動しました。
また一ファンとして皆さんのことを応援したいですし、まだあまり観劇経験のない方にもぜひこれか
ら興味を持って見てもらえたらなと思います。
藤原治基(おうさか学生演劇祭主宰・演劇プロデューサー)
Z世代中心の4劇団がそれぞれのカラーを存分に出せた演劇祭になったと思います。
全劇団、この日のための新作を準備し、45分の作品を作り上げていただきました。
スタッフの皆さんのご協力により、短いリハーサル時間で準備し、この関西演劇祭方式(45分+ティーチイン)に挑んでいただきました。
初めてご覧いただいた三船美佳さんや関西演劇祭フェスティバル・ディレクターの板尾創路さんからの全劇団に対する温かいお言葉は一番の励みとなったと思います。
この4劇団はコロナ禍でも劇団活動を続け、公演中止を経験した面々です。
今回劇団員が急きょ参加できなくなったり、身内に不幸があったりと直前まで苦しんだ劇団もある中、全4劇団がこうして無事公演を終えたことを嬉しく思います。
「若手劇団も元気です!」
今後もこういった試みを続けることでまだまだ素質ある作家・演出家・役者を輩出していきたいと思います。
関西演劇祭ではこれからも若手演劇界の発展、新たな人材発掘などを目指し、様々なクリエイターたちが“つながる”演劇祭を行っていきます。
今年度の本公演は、11月11日(土)から開催!全国から集まった選りすぐりの10劇団による公演が行われます。ぜひその目で未来の演劇界を担う劇団・クリエイターたちをご覧ください。
(文:小島志穂里(吉本興業) 監修:エントレ編集部)
2023年11月11日(土)~11月19日(日)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA SSホール
参加劇団:Artist Unit イカスケ/演劇組織KIMYO/餓鬼の断食/劇団イン・ノート/劇団FAX/バイク劇団バイク/PandA/MousePiece-ree/無名劇団/ヨルノサンポ団
公式サイト
https://kansai-engekisai.com/