2014年からアーティスティック・スーパーバイザー、2016年からは芸術監督を務めている白井晃は、
『KAATは今年10周年を迎えます。KAATは開館当初から「作る劇場」を標榜しておりましたが、私はさらに強い発信力が必要だと思っていました。劇場こそ広場であるという言葉の通り、もっとたくさんの人に集まってもらえたらと思っていました。
そのために、東京ではやらないような挑戦的、先鋭的な作品をお届けすることを目指してやってきました。』と、この7年間を振り返った。
白井晃
また、『もっと、この劇場が刺激的でワクワクするにはどうしたらいいんだろうと思っていたところ、長塚圭史さんが作られた新ロイヤル大衆舎「王将」を見て、「こんな面白いことを企画できる人が必要だ」と思い、お声がけした。』と長塚との出会いを明かした。
そして、コロナ禍で多くのプログラムが中止になったことについて『非常に無念でしたが、中止になったいくつかのプログラムは2021年度のラインアップに組み込んで頂きました。』とコメント。
そして『芸術監督が変わるのは劇場にとって大きな変化ができるチャンスだと思います。
長塚さんが、より刺激的でワクワクする劇場にしていってくれることを期待しております。』と挨拶を締めくくった。
長塚圭史
2021年4月から新芸術劇場に就任する長塚圭史は、劇場のテーマとして『この劇場をより開いていく』ということを強調。
そのための以下の3つの柱を紹介した。
1)シーズン制の導入
2)ひらかれた劇場を目指して
3)豊かな創作環境作り・劇場の未来を考える
1)シーズン制の導入
『劇場に季節感やリズムを作りたい』という思いから、シーズン制を導入する。
具体的には、
4月〜6月 プレシーズンとして、実験的なものを実施。
7月・8月 夏にはキッズプログラム。
8月後半〜3月までがメインシーズン。
2021年度のメインシーズンのタイトルは「冒」。冒険の「冒」であり、飛び出す、はみ出す、突き進むといったイメージを持ったラインアップにするという。
『桜が咲く頃になると、劇場が開くね、とか。夏になってくると子供達がやってくるね、とか。秋になって今年のタイトルが出てきたね、というのを地域の人に感じてもらいたい』と展望を語った。
2)ひらかれた劇場を目指して
『劇場をさらに開いていくというテーマとつながるんですが、僕らが劇場からどんどん飛び出していくということです。』と紹介。『まだ演劇に出会ったことのない人たち、お芝居を観たことがない人たちに観て頂きたい。アトリウムに特設劇場を作って白井さんとの出会いのきっかけになった「王将」三部作をやってやろうと思っています。』とコメント。
また、状況が許せばだがと前置きした上で『出店が出たり、フードカーがあったり』と構想を披露した。
また『県民のみなさんと作品を作る』『神奈川県内を巡演する公演を作る』という計画も発表した。
3)豊かな創作環境作り・劇場の未来を考える
『創造する環境としてより良くなるために、マグマのようにグツグツとクリエイションが続いている劇場になりたい。』『アーティストがもっともっと練り上げるために、トライアルするために場所と時間を提供していく。』という思いから<カイハツ>と題した企画を立ち上げる。
また、戯曲についても『国内外の戯曲を読んで、お披露目できるようなものを発見したい。』と想いを語った。
最後に『白井さんたちが10年で作り上げたKAATの土台に立って、動的で、動きのある劇場にして行きたいと思っています。しっかり引き継いで、この劇場を新たな方向に舵を切っていけるように進めていけたらいいなと思っています。』と抱負を述べて、挨拶を締めくくった。
長塚圭史・白井晃
この後行われた2021年度のラインアップ発表でも、長塚圭史自身がそれぞれの作品への熱い想いをひとつひとつ語っていくのが印象的だった。詳しいラインアップはKAAT公式サイトで。
(文:エントレ編集部)
公式サイト
KAAT神奈川芸術劇場