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井上芳雄ら豪華ミュージカルスターとレジェンドキャストが集結!ミュージカル『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』観劇レビュー

ミュージカル『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』井上芳雄、咲妃みゆ

ミュージカル『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』が、東京・シアタークリエでの上演を終え、2月7日(金)から福岡市民会館、2月12日(水)からは大阪の新歌舞伎座にて上演されます。

本作は1988年に音楽座の旗揚げ作品として初演され、その後も再演を繰り返し、日本のオリジナルミュージカルの名作として愛されてきた作品です。
と書きつつも、恥ずかしながら、私自身はこれまでこの作品を観劇したことがありませんでした。東宝製作での上演が決まったニュースで初めて本作のことを知り、この作品に多大な影響を受けたミュージカル俳優さんが多くいらっしゃるということを聞き、ぜひとも一度拝見したい!と、今回の上演をたのしみに待っていた観客の一人です。
主演を務める井上芳雄さんは、小学生の頃に本作のビデオを何度も繰り返し見ていたくらい、思い入れのある作品であると語っています。音楽座、そして作品にゆかりのある豪華キャスト陣が集結しての上演ということもあり、今年上演されるミュージカルの中でも、非常に注目度の高い作品です。

人生に迷う男女が惹かれ合い、強い絆が結ばれるまでを丁寧に描いた物語

遊園地で初デートをする、一組のカップル。どこか自信なさげに見える青年・悠介(井上芳雄)と、いかにも“バブル時代の女子”といった風情の里美(仙名彩世)が、アトラクションの迷路の中でスリの被害に遭う。そのスリを働くのは、身寄りのない少女・佳代(咲妃みゆ)。悠介と佳代が運命的な再会を果たすことで、物語は思いもよらない展開を見せていきます。

井上さんが演じるのは、作曲家を目指す青年・悠介。一見冴えない印象を受けるものの、内に秘めた情熱を持ち、真っすぐに夢を語る姿からは、彼の前向きで純真な人柄がうかがえます。

宝塚歌劇の音楽を書くことが決まり、その未来への希望を描いた華やかなショー場面では、井上さんの卓越した歌唱力と軽やかな身のこなし、輝くスターオーラに、思わず「何組のトップスターですか!?」と聞きたくなってしまったほど。宝塚退団後、初の舞台出演となり、キレのいいのダンスで客席を魅了する仙名彩世さんとのコンビネーションも抜群で、お向かいにある東京宝塚劇場に来たのかと錯覚してしまうところでした!

また、シャイで頼りなさげな悠介が、佳代と出会い、一人の人間として愛する人を守る強さを見せる場面では、その勇敢な姿と説得力のある歌声に、観ているこちら側も救われたような気持ちに。“浄化力”のようなものを感じずにはいられませんでした。

幼少期から虐待を受け、過酷な環境で育ち、スリを生業として生きてきた少女・佳代を演じるのは咲妃みゆさん。宝塚時代からその演技力には定評がありましたが、本作ではまさに「役を生きるとは、こういうことか」と思わせられるほど、佳代という一人の女性の人生に訪れる悲喜こもごもを全身全霊で表現する姿に圧倒されました。

弾けるような笑顔に満ちた幸福感と、生きる気力を失くしてしまうほどの絶望感、佳代の感情の起伏が伝わるたびにぎゅっと胸が締め付けられ、涙が止まらない状態に…。
「彼女には絶対に幸せになってほしい」と願わずにはいられない、健気さと清廉な真っすぐさが印象深い咲妃さんの“お佳代”に、きっと多くの観客が心を震わせたのではないでしょうか。

悠介と佳代が心を通わせ、夫婦になっていく過程が丁寧に描かれるなか、ふっと心が和むコミカルな場面も。「もうええわい!」と思わずツッコミを入れたくなるくらいの新婚のラブラブっぷり、二人のバカップルぶりはかわいらしく、思わず笑みがこぼれてしまいます。

また、二人を取り巻く周囲の大人たちも、一癖も二癖もあるチャーミングな人ばかり。
悠介がアルバイトをする喫茶店・ケンタウルスのマスター夫妻を演じるのは、吉野圭吾さん(福井晶一さんとWキャスト)と濱田めぐみさん。明るくハイテンションな二人のやり取りには終始笑わせられるのですが、なんやかんやと言いながらも悠介と佳代を見守る姿からは人情味が伝わってきます。

悠介の恩師・早瀬を演じる上原理生さんの役柄も、見た目も含めてとっても個性的。作品が作られた80年代を感じさせる衣装や髪型、ちょっとなつかしいようなサウンドも、今の時代には新鮮に感じられます。

また、劇中では皆さん様々な役を演じられるのですが、濱田さんが演じるもうひとつのキャラクター、“ウメお婆ちゃん”が強烈なインパクトで素晴らしかったことも(なんという役の振り幅…!)特筆しておきたいと思います。

地球人と宇宙人の美しき“友愛”

タイトルに“宇宙までとんだ”とあるように、この作品は地球と“宇宙”が交差する、壮大な愛の物語でもあります。
宇宙人を演じるのは、初演で佳代を演じ、この作品の“レジェンド”と言っても過言ではない、土居裕子さん、そして同じく初演時にご出演され、本作がデビュー作でもある畠中洋さん、そして近年ミュージカルでの活躍が目覚ましい、内藤大希さんです。(それにしても、宇宙人が登場するミュージカルって斬新だな!といま書いていて改めて思いました)
彼らは地球に訪れるたびに、友愛の気持ちを示す“ブレンドポーズ”をするのですが、そのちょっと抜けたおかしさも含め、親しみを感じる魅力的なキャラクター像に描かれています。

彼らはなぜ宇宙からやってきたのか。佳代と宇宙人たちとの関係とは―。時空を超えた“愛”の物語の核心に迫る部分なので、ここからの展開はぜひとも劇中で驚きをもって体感していただきたいところ…!

カーテンコールでは、作品の往年のファンの方にはたまらない一幕も。(ここの場面で、井上さんが様々な想いを噛み締めるような表情をされていたのが印象的でした。)
観劇できる機会は残り限られていますが、チャンスのある方はぜひ、福岡、大阪公演に足を運んでいただきたいと思います。
(※福岡、大阪公演では濱田めぐみさんに代わり月影瞳さんが出演。そして吉野圭吾さんがシングルキャストで演じます。)

これからもずっと再演し続けてほしい、そして日本のオリジナルミュージカルをもっと観てみたいと思わされる、忘れがたい観劇体験となりました。いちミュージカルファンとして、この作品に出会えたことに感謝したいです。

(撮影・文:古内かほ

公演情報

ミュージカル『シャボン玉とんだ 宇宙までとんだ』

【原作】筒井広志「アルファ・ケンタウリからの客」
【演出】小林 香
【振付】原田 薫、麻咲梨乃

【出演】井上芳雄、咲妃みゆ
畠中洋、吉野圭吾、濱田めぐみ、上原理生、仙名彩世、内藤大希、北川理恵、大月さゆ、川口大地、横田剛基、松田未莉亜、早川一矢、松野乃知、相川忍、井上一馬、藤咲みどり、照井裕隆、福井晶一
土居裕子

2020年1月7日(火)~2月2日(日)/東京・日比谷シアタークリエ
2020年2月7日(金)~9日(日)/福岡・福岡市民会館
2020年2月12日(水)~15日(土)/大阪・新歌舞伎座

公式サイト
ミュージカル『シャボン玉とんだ 宇宙までとんだ』

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