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過激に“マニアック”を貫き通した心意気に賞賛! 安田章大・古田新太・成海璃子らによる音楽劇『マニアック』観劇レビュー

音楽劇『マニアック』古田新太ほか安田章大・古田新太・成海璃子らによる音楽劇『マニアック』観劇レビュー

【マニアック】東京公演を観劇してきました~! いやぁ~、観終わった直後「やりおった…!」という言葉しか出てこない。すでに観劇した人には伝わる言葉だけど、まだ観てない人には『なんのこっちゃ?』ですよね。もうね、リミッター装置を破壊してモラルもへったくれもお構いなしに、好きなことやり切った感が半端ないんです! あそこまでぶっ飛んでくれたら清々しいし、忘れたくても忘れられないというのが感想です(笑)。

とはいえ、いや、だからこそ観る側も準備が必要です! お気を付けください。【マニアック】は随所に過激な表現があり、それを笑って観るようなブラックな感覚が必要です。古田先輩のことをよくご存じの方はわかると思いますが、古田先輩が“やりたい作品”をやるってことはだいたい日常から逸脱してるし、現実で起きたら笑えないブラックなものが多い。出演者が素敵な方ばかりだからといって、子供のようなピュアな心で劇場にいったら、トラックに踏まれたヒキガエルみたいになっちゃいますよ(笑)


音楽劇『マニアック』古田新太ほか

手始めに冒頭部分を紹介しておきましょう。切除した盲腸を手にした病院長の八猪不二男(古田新太)は盲腸を切除された患者・花旗一郎(浅野和之)に対して、「(盲腸を)食べますか?」という奇妙な会話から始まります。これだけでダメな人もいることでしょう? でも中には笑ってる人もいます。ダメな人からすると笑ってる人に違和感や嫌悪感を感じる人もいるみたいですが、あくまでも【舞台という虚構の世界】【日常では起こりえない作り物の世界】を楽しむ、と少し頭をチェンジしてみてはどうでしょう? 眼鏡を探してるお父さんのおでこに眼鏡が乗ってるのを見て『ないない!』と笑いながらツッコミを入れるぐらい余裕のある気持ちで(笑)。

物語はこういった始まりでジャブを打ってきますが、ずっと続くわけじゃないというか、個人的にはもっと過激なシーンが全編にあると思ってました…(意味深)。親切な作りだなと思うのは、この作品が冒頭からどういったジャンルなのかをわかりやすく提示してくれている点です。

このシーンも「グロいけどギャグですよ~。」だし、テーマソングとなってる曲【マニアック】も、派手なダンスかと思えば地味だけどジワるダンスで「チープ感を楽しんでね~。」とアピール。これらを成立させるには役者の力量が問われますが、手堅い布陣を揃えてて安心して観れました。この面子だからバカバカしさを感じるし、不快な気持ちにもさせてもらえる。


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個性的(変人)がたくさん出てくる中、一般人代表を演じるのは犬塚アキラを演じる安田章大さん。アキラが気持ちを伝えるために縦横無尽に舞台を動き回ってる姿にとても好感が持てました。中でもメイ(成海璃子)に一目惚れして、アコースティックギター片手に歌い出すシーンは、単純明快で自分好みでした! 全編を通して『笑ゥせぇるすまん』の世界観のような怪しげな雰囲気が漂ってますが、随所に80年代アイドルや有名バンドのパロディが盛り込まれていて、そのちぐはぐ感がより変な作品に仕上がってます。

作品ごとに印象が違って観える青木豪さんの作品ですが、一幕が終了して休憩に入って冷静に思い返すと、「展開がわりとオーソドックスだったなぁ。」と正直感じていました。そういう意味では“してやられた”って言うんでしょうね。二幕からが、このレビューの冒頭の感覚。二幕が始まってからの怒涛の展開ならぬ、怒涛の変態! まぁ、遠慮なくぶっこんできました! 「そんなことしていいの!?」「それ事務所的にOK!?」なんて心配までし始めて(笑)。 “マニアック”を貫き通した心意気に賞賛、はたまた真面目に作品を読み解こうとした自分の無意味さに湧き上がる笑い。女性の肩を叩いたらセクハラとか、上司が部下を飲みに誘ったらパワハラとかなりかねない平成も最後を迎える日本で、これを上演したのが小劇場ではなくパルコがプロデュースしてるのがロック!

そうそう、マニアックってニッチな印象で書かれてることが多いけど、最後にメイが発した言葉でアキラがマニアックになる可能性、強いては観客に対してそれを投げかけている点は、「さすが青木豪さん、ふざけても締め方が綺麗だな!」と思いました。
この作品、最後まで観ないと意味がないですよ!

当日券情報などの詳細は公式サイトで。

(文:かみざともりひと

公演情報

パルコ・プロデュース 2019 音楽劇『マニアック』

【作・演出】青木豪
【音楽】浅草ジンタ

【出演】安田章大 古田新太 成海璃子 堀内敬子 小松和重 山本カナコ 宮崎秋人 山崎静代 頼経明子 浅野和之 永沼伊久也 大村真佑 甲斐祐次 斎藤准一郎 中本雅俊 西田欧誼 森山晶之 伊藤彩夏 加藤梨里香 吉田彩美 永石千尋

2019年1月19日(土)~1月29日(火)/大阪・森ノ宮ピロティホール
2019年2月5日 (火)~2月27日 (水)/東京・新国立劇場 中劇場

公式サイト
パルコ・プロデュース 2019 音楽劇『マニアック』

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