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あの熱い革命が帰ってきた!グルーヴ感溢れる楽曲満載のフレンチ・ロック・ミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち-』観劇レビュー

ミュージカル「1789」小池徹平、神田沙也加 写真提供:東宝演劇部あの熱い革命が帰ってきた!グルーヴ感溢れる楽曲満載のフレンチ・ロック・ミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち-』観劇レビュー

2012年にフランス・ミュージカル界を揺るがすメガヒット作として誕生したミュージカル『1789-バスティーユの恋人たち-』が、新たなキャストを迎え2年ぶりに帝国劇場へ帰ってきました!
フランス革命に生きた若者たちの愛と激闘が、グルーブ感溢れるロックナンバーや美しいバラード、さらにダンス、アクロバットと盛りだくさんかつスピーディーな展開で描かれる本作。2016年の東宝版初演時は全公演完売となるほど熱狂的な支持を得たミュージカルです。

2018年バージョンは新たにロベスピエール役に三浦涼介さん、マリー・アントワネット役に龍真咲さん(龍さんは2015年に宝塚版で主役のロナンを好演。ロナン→アントワネットへの変貌ぶりも注目ポイントです!)が抜擢され、よりパワーアップした作品に。

ここでは、初日組のキャスト(ロナン:小池徹平 オランプ:神田沙也加 アントワネット:凰稀かなめ)で行われた公演の模様をお届けします。


ミュージカル「1789」凰稀かなめ 写真提供:東宝演劇部

1788年のフランス、ボース地方。農夫として生きる青年、ロナン・マズリエ(小池徹平)は、不作続きのため税金が払えなかった罪で逮捕され、土地没収のうえ投獄させられそうになる父親を助けようとするも、貴族将校のペイロール伯爵(岡幸二郎)により目の前で父親が銃殺されるという悲劇に見舞われます。父の仇を討つため、そして奪われた土地を取り返すためにロナンがパリへ行くところから物語は始まります。

単身パリに渡ったロナンは、街角で演説をする平民出身の代議士、ロベスピエール(三浦涼介)と、革命家でジャーナリストのデムーラン(渡辺大輔)に出会います。「今こそ革命を起こそう!フランスを立て直そう、自分たちの手で!」とシトワイヤン(市民)に呼びかける二人。身分差をなくし、“誰もが幸せになる権利”がある社会を目指す二人の思想に共鳴したロナンは、彼らの計らいで印刷所で働くことに。

「俺たちは兄弟だ、革命が産み落とした―」と、希望に満ちた顔で肩を組みながら理想の社会を想い描き歌う3人の姿は、その後の史実でのロベスピエールやダントン、デムーランの運命を知りながら観ると、より一層輝かしく、そして儚くも感じられました。


ミュージカル「1789」凰稀かなめ 写真提供:東宝演劇部

シトワイヤンが貧困にあえぐ一方で、フランスの王妃、マリー・アントワネットは夜な夜なヴェルサイユ宮殿で贅沢三昧、パーリーピーポーな日々。仮想パーティーの中でアントワネット(凰稀かなめ)がド派手に登場するシーンは一幕最大の見どころ!そのド派手な仕掛けにはわけもなく拍手をしたくなります(笑)。

まるで紅白歌合戦の小林幸子のステージングみたい、というのが初演時にも思った感想なのですが、衣装の生澤美子さんは、まさに紅白の小林幸子さんの衣装を担当されていたと知り、妙に納得してしまいました。アントワネットは当時のファッションリーダー的存在でもあるので、かわいらしさとエレガントさが同居した数々の豪華絢爛な衣装も必見です!


ミュージカル「1789」神田沙也加 写真提供:東宝演劇部

アントワネットに仕える侍女、オランプを演じるのは、先日菊田一夫演劇賞を受賞したばかりの神田沙也加さん。
パレ・ロワイヤルでアントワネットとその愛人であるフェルゼン伯爵(廣瀬友祐)との逢引きを手助けしたことで、ロナンと運命の出会いを果たします。(神田オランプのコミカルな演技がとってもいい場面!)

逢引き現場を目撃したロナンに、王妃の秘密を守るためにオランプはロナンに濡れ衣を着せ、取り調べを受けたロナンはバスティーユ監獄で拷問を受ける運命に…。
ロナンを助けるべく、オランプはバスティーユの地下火薬庫に勤めている父に頼みこみ、監視員のふりをしてロナンを助け出します。拷問シーンなのにアップテンポで軽快なナンバーが歌われるのがちょっとおもしろかったり、テンポのいいナンバーでスピーディーに展開していくのが気持ちいい場面。


ミュージカル「1789」小池徹平、岡幸二郎 写真提供:東宝演劇部

第一印象こそ最悪だったけど……というお決まりのパターンではありますが(笑)、次第に互いを意識し合うようになるロナンとオランプ。
オランプへの恋心を自覚し、決意を歌うロナンのソロナンバー「二度と消せない」、そしてオランプがロナンへの愛と苦しい胸の内を歌う「許されぬ愛」はどちらも美しくドラマティックなバラードで聞きごたえのある名曲です。王家に仕えるオランプと王政を憎むロナン、対立関係にある二人だけれど、互いの“不器用で真っすぐな”生き方に惹かれ合った恋の行く末はいかに……。

秘密警察の三人組が人形劇仕立てで【三部会】の様子を伝える場面は、劇中でもちょっと異色であり、それゆえに見入ってしまう場面でもあります。
人形劇のパペットからそのまま移行するように、俳優たちがマリオネットと化し操られる姿はまさに演劇ならではの魅力が詰まった演出と感じました。


ミュージカル「1789」小池徹平 写真提供:東宝演劇部

二幕冒頭の見どころは、なんといってもロベスピエールのソロナンバー、「誰のために踊らされているのか」。ビートの効いたロックナンバーに合わせ、民衆を率いて歌い踊る姿は「かっこいい!!」以外の感想が思い浮かびません(笑)。

今回新たにロベスピエール役に抜擢された三浦涼介さん、製作発表記者会見のときはその中性的なビジュアルが印象的でしたが、この役にぴったり!と思うくらい見事なハマり具合。力強い低音ボイスが、民衆を惹きつけ先導していくロベスピエールという役にとても説得力を持たせていました。(あと、ものすごい美脚です!!)


ミュージカル「1789」三浦涼介 写真提供:東宝演劇部

続けて行われる、民衆一丸となって踊るクランプ(ストンプ[足を踏み付ける]・チェストポップ[胸を突き出す]・アームスイング[腕を振り下ろす]の3つの動きが基本で、仲間との高め合いの為のバトルやセッションがメインとされるダンス表現)の迫力も圧巻。革命へ向かう熱量を存分に感じられるシーンになっています。


ミュージカル「1789」写真提供:東宝演劇部

激しいダンスで表現される革命の乱闘シーンは、臨場感と迫力があり、固唾を飲みながら見入ってしまう場面。初演時はペイロール伯爵がロベスピエールの胸を踏みつけるシーンが話題になりましたが、ペイロール伯爵の踏みつけは今年も健在!よかったー!(ただし、胸ではなく顔になっていました。顔のほうがヒドい気がする…!)

民衆の暴動も日に日に増し、革命の音が近づくにつれ危機感を抱いた貴族たちがヴェルサイユを去っていくなか、アントワネットはフランスの王妃として残ることを決意。王妃に最後まで仕えるようとするオランプに、「本当に愛するものを見極めなくてはだめよ」、と諭し、任務を解き抱擁するシーンでは、アントワネットの大きな愛情にほろりとさせられました。


ミュージカル「1789」加藤和樹、夢咲ねね 写真提供:東宝演劇部

とにもかくにも楽曲の魅力が素晴らしい『1789-バスティーユの恋人たち-』。
終盤、革命へ向かう空気の中で歌われる「サ・イラ・モナ・ムール」はピアノのイントロが流れた時点で「きたーーー!」と思わせる劇中の代表的なナンバー。キャッチーでノリのいい楽曲なので、思わず客席で体を揺らしたくなってしまうほど。革命を成功させ、愛する人と共に未来を生きることを願う若者たちの想いが詰まった熱いナンバーは聞きごたえたっぷりです!

バスティーユ襲撃の中で、悲劇的な展開でラストを迎える本作。革命の波間で一市民のたくさんの命が消えていき、歴史は塗り替えられてきたことを改めて感じさせられます。
ロベスピエールが「1789年8月26日、人権宣言を採択する!」と叫び、“人は生まれながらにして自由かつ平等の権利を有する”と、出演者が次々と人権宣言の条文を述べるラストシーンでは、個人的な感覚ではありますが、初演時とはまた違った響きを持って聞こえました。それは、この2年間で変わった世界情勢、国内の政治状況を思うと、自然なことでもあるような気がしました。

この激しくも美しい“愛と革命”の熱気を、ぜひ劇場で感じていただきたいと思います。

(文:古内かほ

公演情報

ミュージカル「1789 -バスティーユの恋人たち-」

【潤色・演出】小池修一郎

【出演】
ロナン:小池徹平、加藤和樹(Wキャスト)
オランプ:神田沙也加、夢咲ねね(Wキャスト)
マリー・アントワネット:凰稀かなめ、龍真咲(Wキャスト)

ロベスピエール:三浦涼介
ダントン:上原理生
デムーラン:渡辺大輔
ソレーヌ:ソニン

アルトワ:吉野圭吾
ラマール:坂元健児
フェルゼン:広瀬友祐
ペイロール:岡 幸二郎

ほか

2018年4月9日(月)~5月12日(日)/東京・帝国劇場
2018年6月2日(土)~6月25日(月)/大阪・新歌舞伎座
2018年7月3日(火)~7月30日(月)/福岡・博多座メインホール

公式サイト
ミュージカル「1789 -バスティーユの恋人たち-」

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